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私のおすすめ映画『ガガーリン、世界を変えた108分』

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私の手元に知人からロシア土産に貰った珍妙なマトリョーシカがある。3体の人形からなる割と大雑把なマトリョーシカなのだが、それはロシア宇宙開発の栄光を打ち立てた3人の人形なのである。一番外側がミスターチーフデザイナー、セルゲイ・パーヴロヴィチ・コロリョフ。次に世界初の宇宙飛行士となったユーリ・ガガーリン。一番小さいのが、コンスタンチン・ツィオルコフスキー。多段式ロケットの基礎的な理論を打ち立てた人物だ。ロシア宇宙開発は、この3人のどれが欠けても栄光を打ち立てられなかっただろう。そのうちの一人、ユーリ・ガガーリンの人生、人物像に焦点を当てたのが本作『ガガーリン、世界を変えた108分』だ。

無重力状態で人間が生きていられるのか、すら分かっていなかった時代に空軍のパイロットから転身した世界初の宇宙飛行士は、ずば抜けたリーダーシップと冷静な判断力の持ち主だった。貧しい寒村で生まれた点も、共産主義を標榜する当時のソビエト社会主義共和国連邦にとっては格好の存在だったに違いない。宇宙船の小型化もあったので、彼のそんなに高くない身長も宇宙飛行士に選ばれる要因の一つだっただろう。

最初の宇宙飛行士という名誉は、それと同じくらいの重圧と隣合わせだ。数十名の宇宙飛行士候補生の中から厳しすぎるくらい過酷な訓練をくぐり抜ける。そして最終候補の2名、ゲルマン・チトフ(世界で二番目に軌道飛行を成し遂げた)とユーリ・ガガーリンになっても厳しい審査は続いていた。

本作は、終始重苦しい空気感の中で時間が流れていく。当時のソ連の状況を余す所なく描き切っているといえるだろう。幼い頃の厳しい暮らし、実家を後にして大人になっていくプロセス、そして生涯の伴侶との出会いなどなど。寒空の大地で厳しい暮らしを続けてきた一人の青年は立派な空軍パイロット、そして宇宙飛行士となっていく。

打ち上げは成功しても、それだけではまだ不十分だ。史実でも予定の高度よりも100kmほど上空を飛んでいた。逆噴射ロケットが作動せず宇宙船の速度を落とせなかったら一ヶ月も軌道上を彷徨うことになってしまう。果たして装置は作動してユーリ・ガガーリンは無事に地球に帰還する。それからのソ連市民達の賞賛と歓喜の姿が、それまでの重厚で陰鬱な描写とは正反対となる。彼はソ連人民の希望の星となったのだ。しかし、変わらない彼らの生まれ故郷の人々。息子が世界初の栄誉を手にしたのに、それを素直に喜べない両親の姿。なんとなく自分の両親と重ね合わされる気がしてグッとくるシーンである。

また、宇宙空間を漂う宇宙船は静かにゆっくり飛んでいるイメージがあるが、第一宇宙速度である秒速7.9 km以上で飛んでいるので、実はものスゴく速い。そんな描写があるのもこの映画の特徴である。