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ホリエモンWITH 技術も教育も真っ直ぐで!ミリ波を操り世界最速のデータ通信を実現、「デジタルのためのアナログ」を熟知する男 東京工業大学教授・松澤 昭 後編

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ホリエモンも「へぇ!」を連発、デジタルのためのアナログの世界。

堀江 スマートフォンってこれ中身ほとんど電池じゃないですか。僕が一つ考えているのは、電池とかエネルギー密度では物理的に限界があるわけじゃないですか。

松澤 エネルギーを閉じ込めてるわけですから。

堀江 要は密度が高くなればなるほど危険で。爆弾をここに持ってるようなものですよね。よくこんな危ないことをしてるなって。たまに事故もあるし。だから無線みたいな他の充電技術にもちょっと注目をしているんですよ。

松澤 無線充電は5年ぐらい前から盛んになってますよね。

堀江 電磁誘導を使った「置いたら充電」みたいなやつや、「ICカード」とか、そういうのは昔からありますけど、この部屋の中で充電できるとか、そういう技術もこれから期待している分野なんです。

松澤 僕ね、実は修士論文のテーマがそれだったんですよ。宇宙空間に太陽電池を打ち上げた時に「マイクロ波の電波をどうやって効率的に普通のDC電源に変えるか」っていう研究で。なかなか実用化はされないんだけど、構想だけはまだあるんだよね。

堀江 実際のところ、実験室レベルではできるわけですよね。

松澤 ある程度できますよ。

堀江 実際に電波っていうのは電力を送ってるようなもんですよね。あれをもっと効率的に送ったりっていうことは原理的にできるんですか?

松澤 できますよ。あとは、どのくらい効率よくDCから高周波の電力に変換できるかなんですが、一番それの効率がいいのが実は電子レンジ。あれって要するに普通の電源を高周波のエネルギーに変えているんですよ。

堀江 マイクロ波?

松澤 マイクロ波。お湯沸かしたりしてるわけですよね。あれが効率で言うと70%から80%とか電波効率がそのぐらいじゃなかったかな。

堀江 そんなにあるんですか?

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松澤 僕は学生の頃の研究室が真空管の研究室だったんですよ。日本で最後の真空管の研究室って言われてた。今誰も真空管なんてやってないんですよ。ほとんど使わないから。それで、たいてい真空管はみんなトランジスタになっちゃって、半導体になっちゃったわけだけど、唯一残ってるのが電子レンジなんですよ。

堀江 えっ?電子レンジってまだ真空管使ってるんですか!?

松澤 今でも真空管ですよ、あれ。それで僕も会社に入った頃に、それを半導体でやろうとしたんですよ。いくらなんでも真空管の時代じゃないだろうと思って。

堀江 へぇ。ちなみにレーダーの研究からでてきたんですよね、マイクロウェーブって。

松澤 そう。戦時中に日本中の優秀な学者を集めて開発したんですよ。もともとは岡部金次郎という東北大や阪大で教授をやった先生が世界で初めてマイクロ波の発生に成功した真空管がマグネトロンで、この発明は日本では忘れられていたのに欧米の方がレーダー用に先に実用化しちゃたんです。そこであわてて戦時中に、後にノーベル賞を受賞した朝永振一郎とか、物理で非常に有名な先生方を動員して理論解析とかやったんです。僕の先生が言っていたのは「実はマグネトロンってすごい効率がいいんだけど、分かんない現象があるんだよな」って。でも、あまりにも効率がいいから、なんかこれで十分みたいな製品になっちゃったと(笑)。

堀江 電子レンジ(笑)。なんで真空管じゃないと駄目なんですか?

松澤 真空管って、あの場合はすごく効率がいいんですよ。

堀江 スイッチングに使ってるわけじゃないんですよね。真空管を素で使っているというか、真空管の特性みたいなものを素で使ってる感じですか?

松澤 そうそう。真空中の2つの電極間に電圧をかけて電子を入れると電子は高速で直進運動をしますよね。そこで磁界をかけると電子はローレンツ力を感じて、空間中を周回する回転運動になるのですよ。その運動エネルギーがマイクロ波の電波のエネルギー変換されるんです。それが一番電波への変換効率が良くて。半導体でできないかって試行錯誤もしたんですけれど、効率やコストが全然かなわなくって結局今でも半導体使われてないんですよ。

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堀江 へぇ。何か実際に電力給電をやってるんですよね。それはどういうところで?

松澤 例えば、蛍光灯なんかに電波を出す装置をつけて、スマホにある程度電力を送るっていうのはやってます。あとはセンサーネットワーク。センサーはつけられるけど、どうやって電力を供給するんだっていう。その時に、いわゆるWi-Fi端末みたいな感じで、そこに送るというようなこともやってます。

堀江 電力で送るのか、何かMRみたいな仕組みを使うのか。

松澤 そうですね。電波ももう少し利用の仕方があるんですよ。

堀江 さっきのマイクロウェーブの話ですけど、屋外に電波塔を置いて、そこから電力給電してデジタルサイネージ(いわゆる電光掲示板)を動かすとかありですかね?今はUTLとか電力消費の少ないものってあるので、それでパネルを作って太陽電池パネルとマイクロ波給電でどこにでも設置できたらって思うんですよ。

松澤 だから、目指してるのはユビキタスというか、無線でコミュニケーションして、いろんなもの同士が繋がっていくっていう世界なんですね。その時に問題になるのが、バッテリーやエネルギーの供給ですよね。だから、電力の電送と電池って、永遠の課題というか、ものすごい重要な技術なんですよ。

堀江 すごいマーケットになりますよね。もっと言うと、自分がそれを使いたいっていう…ここに置いてたら勝手に充電してほしい(笑)。

松澤 ニーズはありますよね。

堀江 最近Wi-Fi対応の飛行機が出来たじゃないですか。実際、ネットバブルの時にやったけど、ネットに接続してる人が全然少なくて商売にならかったんです。でも、今みんなスマートフォン使ってるから、機内で使えるようになったんですね。だから、スマホになって初めて、無線で電力を供給してほしいっていうニーズが出てくるっていうか。

松澤 深刻な要求ね。

堀江 例えば、クアルコムみたいな会社が成長したのも、省電力のチップがこれから必要とされるっていう時流に乗ったわけですよね。逆に言うと、そこにインテルは乗れなかった。

松澤 インテルね。正直言って、あれだけの技術を持ちながら、なんてビジネス下手なんだろうって思うんですけど。あの会社、プロセッサー以外うまくいかない。

堀江 プロセッサー以外うまくいかないって面白いですね。

松澤 面白いですよね。もちろん優秀なんですよ。技術も優秀だし。例えばインテルのトランジスタ、集積回路って断トツに性能いい。僕ら設計者だし、インテルのプロセスっていうか、半導体使わせてもらえたらもっといいもの作れるのになって思いますから。

堀江 もったいないですね。

松澤 それでインテルは2000年ぐらいに携帯電話に参入しようとしたんですよね。だけど、インテルはプロセッサーのメンツがあるから、他社のライセンスを導入するっていうことはあんまり良しとしなかった。オープンアーキテクチャの企業文化が無かったのではないかと思います…。

堀江 あそこで完全に新興のサムスンやクアルコム、メディアテックとかあの辺がバーッと伸びてきたわけじゃないですか。

松澤 だから今、インテル大後悔ですよね。あんなもん、どうってことないマーケットだからって言ってちゃんと対応しなかったと思います。最近でしょ、インテルがスマホ系で対応したいって…。

堀江 時すでに遅しですよね。

松澤 そのところをサムスンとかアップルとかクアルコムとかがバーッと伸びて、「マーケットこんなに大きいの?」みたいになっちゃった。

堀江 台数がそれだけ出ますからね。

松澤 もう一つは、インテルは成功してる会社だし、今でもCPUのマーケットって大きいでしょ。グローバルに。

堀江 だけど、PCはもうこれから使われなくなって行くんじゃないですか。スマホやタブレットは辞書がクラウド化して進化して最近の言葉なんかもすぐ出てくるし、予測変換もあって文章書くのも速いんですよ。あと、音声認識とかもかなり精度が良くなってるんで、声で入力してもいいし、もっともっと入力方式って進化する余地がある。

松澤 だから、マイクロソフトやインテルっていうのは、もうビジネスの危機でしょうね。

堀江 今はVRとか、アナログセンサーの小型化や、デジタルの融合みたいな部分の方がすごく必要とされているんですよね。僕らロケットの開発でずっと取り組んでいるテーマっていうのは「コストダウン」ですから。今まさにスマホに入っているような汎用品のアナログセンサーを使って、補正をしたりとか予測をしたりとか、そういうことを試しているわけです。

松澤 そうですね。アナログってずっと大事なんですよね。僕がラッキーだったなって思うのは、パナソニックに入ってからの初めての仕事がAD変換器というアナログ信号をデジタルに変換する回路だったことです。デジタルのためのアナログで純粋アナログのVHSとかVTRみたいなものだったら先はなかった。

堀江 アナログ信号を磁気テープとかに記録していくだけですもんね。

松澤 結局デジタルで勝ったのはGoogleとか、それを使う人なんですよ。ハードであればアームとかの一種のプラットフォームで。でも、僕の場合デジタルのためのアナログだったので、今もって新しい仕事がある。例えばセンサーだとか、無線だとか。

堀江 今いちばん重要ですよね。

松澤 僕が思うのは、アナログ回路の設計って「囲碁・将棋と同じ」じゃないのかなって。技術的にも高度だけど、もう一つセンスみたいなのもあったりする。

堀江 ルールはシンプルなんだけど、自由度は高いからやれることは逆に広いと。

松澤 よく似てるのは、直感と経験っていうか、積み重ねが必要なんですよ。アナログ回路って上手い人と下手な人で全然違うんです。だから、アナログって開発してて面白いっていうか、人によって差がついたりするんです。

堀江 なるほど。アナログってクリエティビティが要求される分野なんですね。