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ホリエモンWITH 「養殖魚の価値を高めたい!」養殖魚ビジネスの現実と未来とは?近畿大学水産研究所 後編

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宮下盛(Shigeru Miyashita)
1943年10月生まれ。神奈川県出身。近畿大学農学部水産学科卒業。1966年より海水魚類養殖の父・故原田輝雄博士に師事。1968年近畿大学水産研究所白浜実験場副手。助手、講師、助教授を経て、2001年教授。1971年から水産養殖種苗センター白浜事業場(兼務)。2008年から水産養殖種苗センター長、2011年から水産研究所長(兼務)。著書「クロマグロ完全養殖(共編著:成山堂書店)」
「海産魚の養殖(共著:湊文社)」「水産増養殖システム 海水魚(共著:恒星社厚生閣)」など

「自分たちで金を稼いで研究しなさい」という近大初代総長のコトバ

堀江貴文(以下、堀江) マグロとかクエとか、新しくやろうとするのはニーズがあるからみたいな感じなんですか?

宮下盛(以下、宮下) ニーズもそうですけど、水産の養殖業界でどんな役に立てるのかということなんです。クエに関していえば、白浜は温泉が売りの町なんですけど、食材があまりない。たとえば、山陰のほうだったらカニがあったりしますよね。

堀江 たしかに、カニを食べに福井県に行ったりしますよね。

宮下 フグだったら福井県の若狭とか、そういうのがあるんですけど、白浜にはそれがなかったので、クエで町おこしに貢献しようと。

堀江 コスト的にはあってます?

宮下 クエだけのコストは計算していないですけど、おそらくかなり厳しいです。

堀江 クエだけの採算性とかは見たりしないんですか?

宮下 そこまではやってないですね。

堀江 株式会社アーマリン近大と水産研究所は、どういう関係なんですか?

宮下 近畿大学水産養殖種苗センターは、実際に魚を養殖する事業をやっています。そこで、できた魚を『アーマリン近大』に渡して、外部への出荷業務をやってもらっています。

堀江 アーマリン近大は、販売会社という感じですか? 種苗センターで生産して、アーマリンで販売して、お金がバックされてくる?

宮下 水産研究所というのは、戦後まもなくの昭和23年にできているんです。これは近畿大学創立の1年前なんです。

堀江 ほう。

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宮下 それは、初代総長の世耕弘一が、日本の復興にはまず食料が大事だということで、「海を耕せ」と言って、実験場を作ったんです。そして、独立採算性で、自分たちで金を稼ぎながら研究しなさいと。

堀江 そうなんですね(笑)。

宮下 だから、私たちが若い頃は、「大学が金儲けしているのか!? そんなのは研究者じゃない」と学会で言われたこともあります。でも、文科省では20〜30年くらい前から「近畿大学のように、自分たちでお金を稼いで研究をしていいよ」という流れになってきています。

堀江 本当に画期的ですよね。アメリカでは大学の教授って、ベンチャービジネスを立ち上げて、そこで得たキャピタルゲインを大学の研究に当てるということをよくやっているんですけど、それを日本で実践されているわけですからね。

宮下 そうなんです。開校当初からベンチャー企業でした(笑)。

堀江 養殖ってブリが最初でしたっけ?

宮下 ブリの養殖は、昭和2年に香川県の安戸池というところでスタートしているんです。当時は「築堤式」といって、入り江を仕切って、そこで魚を飼うというものだったんです。しかし、この方式だと立地条件も限られるし、堤防を作るにもお金がかかる。そのため、なかなか普及しませんでした。そこで、水産研究所の2代目所長・原田輝雄が「網いけす養殖法」を開発したんです。

堀江 世界中でやっていますよね。

堀江 世界中でやっていますよね。

宮下 はい。いわゆる、いけすの養殖のイメージは、近大生まれなんです。

堀江 養殖のいけすは、ここで開発されたんですか?

宮下 そうです。もちろん今とは網の材質が全然違います。今はポリエチレンとか、どんどん良くなっていますけど、昔はナイロンとか日光に弱かったので大変だったと思います。

堀江 日光で分解されちゃうんですね。

宮下 そうです。それで網の材質の向上とともに、ブリ養殖ができるようになって、全国から漁業組合の方が見学にこられて、一気に養殖のブリが普及したんです。それからマダイ、マグロと行くんですが……。

堀江 海外でこうした養殖をやっているところはないんですか?

宮下 ありますよ。ヨーロッパが多いですね。アメリカは海を汚すからということで、あんまりやっていませんけど。

堀江 環境の規制が厳しいってことですね。

宮下 そうですね。陸上の養殖はやっているんですけど、海面の養殖はあんまりやっていません。やっているのはヨーロッパやオーストラリアですね。

堀江 じゃあ、そうした国と戦っているわけですか?

宮下 戦っているってほどでもないですけど、やっぱり今は地中海のマグロにしても漁獲規制がだんだん厳しくなってきているので、人工孵化をやらなければいけないというムードはあります。スペインなんかは種苗生産を始めましたね。

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堀江 そうなんですね。

宮下 スペイン、イタリアなどは、近大の技術でマグロを人工孵化したいというのもありますけど、なかなか難しいですね。

堀江 難しいというのは?

宮下 他の魚だと、わりと技術移転というのは簡単なんですが、マグロの場合は、飼育技術と経験者のノウハウがものを言うんです。だから、本に書いてあるマニュアル通りにやってもなかなかうまくいくものではありません。それに、水産庁もマグロの技術移転をあまり望まないというか……。ブーメラン効果というのがあって、昔、ヒラメの養殖技術をお隣さんに教えたことがあるんです。

堀江 中国ですか?

宮下 韓国です。それで、韓国で一気に生産量が増えたんです。向こうはコストが安いので、それで日本に輸出してきて、日本のヒラメ養殖がほとんど壊滅したということがありました。だから、海外への技術移転は慎重にやれということになっています。

堀江 ウナギとかやってるんですか?

宮下 以前は淡水の実験場でやっていたんですけど、あんまり儲からないので(笑)。

堀江 稚魚からの完全養殖ですか?

宮下 昔から、ウナギをやりたいというやつは出てくるんです。でも、ウナギは稚魚を作るのに半年もかかるので、今の単価が高いとはいっても、収支を考えたら割にあいません。最近はアナゴの完全養殖に取り組んでいますけど。

堀江 アナゴは完全養殖ですか?

宮下 まだ技術的には達成していません。「ノレソレ」と言って、レプトケファルス(葉形仔魚)からやっています。

堀江 アナゴって、そんなに不作なわけじゃないですよね。

宮下 でも、漁獲量はものすごく減っています。以前に比べると、今は10分の1くらいじゃないですか?

堀江 そうなんですか。じゃあ、ノレソレ食っちゃダメですね。

宮下 ただ、そのアナゴもノレソレを専門にとる漁業者っていないんですよ。もともとはイカナゴ(コウナゴ・シンコ)を捕るための漁をしていて、たまたまノレソレが入ってくるという感じです。

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「近大マグロナイトをぜひやりたいですね!」ホリエモンからの提案

堀江 養殖って、結構、大変なんですね。

宮下 そうですね。それに養殖魚って、どうしても天然魚より下に見られてしまって、実際に市場でも5〜7割の値段になってしまうんです。たしかに30年くらい前は、養殖魚って悪いイメージがあったんですよ。養殖ハマチを売れば儲かるということで、ハマチの養殖がどんどん普及していた時です。エサにイワシばっかり与えていたらイワシの臭いがするとか、欲張っていっぱい飼うから病気になる。そして、病気にならないように薬を与えていたら薬漬けになる。それで、薬漬けになるから、養殖魚は美味しくないというイメージができてしまったんです。でも、今は薬なんか使っていませんから。

堀江 そうなんですね。

宮下 それに消費者の皆さんも安全性を求められるので……。また、今はエサのほうも開発されて配合飼料になりました。だから、身も美味しくなっているんですよ。

堀江 配合飼料は、たとえばどんなものが入っているんですか?

宮下 メインは魚粉です。

堀江 まあ、魚は魚を食いますからね。

宮下 はい。でも、植物性タンパク質の大豆カスも使ったりしています。中国も今、養殖がどんどん発展していて、そうなると中国が使う魚粉が大変な量になるんです。そのため、ペルーやチリの魚粉が高騰しているんですよ。だから、これからはエサの開発というのもキーポイントになるかなと思います。

堀江 僕、近大マグロって、大きなブランドになる可能性がすごくあると思うんですよ。「ミガキイチゴ」っていう「食べる宝石」と呼ばれている1個1000円もするイチゴがあるんですよ。宮城県の山元町というところで作っているんですけど、それは水耕栽培でハウスで全部ITで管理しているんです。

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Photograph=柚木大介  Text/Edit/Transcription=村上隆保