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ホリエモンWITH 「遺伝子組み換えでクモ糸をシルクに混ぜ、強度を増した」 生物研が目指す、養蚕業の未来とは?後編2/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 生物研

カイコのお腹の中身を見てみると……

小島 絹糸腺見てみます?

堀江 いいんですか?

桑名 はい。これは、もう繭になる直前のカイコですね。

小島 カイコは絹糸腺が40%で、ほぼ50%が消化管なんです。なので、ふだんは食べたものを消化するためにお腹の中にエサが入っているんですけれど、今は繭を作るためにお腹の中のエサを全部出しちゃってる状態なんです。

堀江 出しちゃうって、どういうふうに出すんですか?

小島 下痢みたいに、お腹の中のものを全部だしちゃうんです。

堀江 へー。

小島 そうじゃないと、サナギになった時にお腹の中でエサが腐っちゃいますし、繭の中で出せば汚れますから。

堀江 そうなんだ。

小島 繭がきれいなのは、お腹の中のエサを全部出しちゃってるからなんです。だから、繭になる直前の今は、お腹の中が絹糸腺で占められている状態ですね。

堀江 へー。

小島 じゃあ、ちょっと切ってみます。これ、人間が見ると痛がっているように見えるんですけど、痛がっているわけじゃなくて、嫌がっているだけです。昆虫は痛みを感じませんから。

堀江 痛点みたいのがないんですか?

小島 痛覚がないと言われているんです。ですから、「俺に触るんじゃねー」と言ってるだけなので、お気になさらず……。ここをチョンと切ります。

ホリエモンWITH 堀江貴文 生物研

堀江 ここは何ですか?

小島 ここは胸部ですね。顔のように見えているところが胸で、その上の直径3mmくらいの茶色っぽいのが頭です。で、この胸のところから中身を出すと、これが絹糸腺です。

堀江 さすが手際がいいですね。

小島 年中、こんなことばかりやってますからね。手袋をしているのは、消化液が強アルカリ性なので手が荒れてしまうからなんです。

堀江 酸性じゃないんですか?

小島 はい。蝶とか蛾の仲間はアルカリ性なんです。

桑名 それで、この絹糸腺をピーッと伸ばすと、釣りで使うテグス糸になるんです。

堀江 へー、知らなかった。今は違いますよね。

桑名 今はナイロンとかが多いんじゃないですか。それで、この体の後ろのほうにあるニョロニョロとしたところが後部絹糸腺。それから、急に太くなっているところが中部絹糸腺。そして、この細いところを通って口から糸が出るんですが、この細いところが前部絹糸腺です。

堀江 各部位で役割が違うんですか?

桑名 違います。ニョロニョロした後部絹糸腺は、フィブロインというシルクのタンパク質が作られるところです。

堀江 後部で作られるんですか。

桑名 はい。後部で作られたものが押し出されていって中部に貯まるんですが、中部ではセシリンというタンパク質が出てきて、フィブロインを覆います。そして細い前部に入っていって、口のところから糸として吐き出される前に3カ所くらい圧力がかかる場所があって、繊維化するというメカニズムらしいです。

堀江 すごいな。

小島 今、糸をどうやって作っているかわからないと言いましたが、そのひとつの理由に絹糸腺の中のフィブロインが水溶液だということがあるんです。絹糸腺の中には30%ぐらいの濃度のフィブロインのタンパク質が入っているんですが、30%の濃度のタンパク質を我々が作るとほぼ固まってしまうんです。水溶液にはならないんです。

桑名 寒天みたいな感じになっちゃいますね。

小島 今出てきているのが水溶液です。

堀江 ふーん、匂いはしないなあ。

小島 だんだん固まってきます。

堀江 あ、なんか固まってきた。なんかゼリーっぽい。接着剤ともまた違うな。なんか不思議な物質ですね。

ホリエモンWITH 堀江貴文 生物研

クモ糸シルクだけじゃない、カイコの可能性

小島 ちなみに幼虫が繭の中でちょっと時間が経つとこんな感じ(サナギ)になります。

堀江 サナギの状態って、中身はドロドロじゃないですか。

小島 ドロドロですね。幼虫の時の体の組織と成虫の時の体の組織は、まったく別物なんです。幼虫の時の体の組織が1回分解されて、ドロドロになって新しく成虫の組織が作られるんです。人間で言ったら、一度、皮をかぶって、他の中身が骨まで全部溶けて新しくできあがる感じです。

瀬筒 神経の一部だけ残って、脳の形も変わります。たとえば、幼虫の時は単眼で明暗ぐらいしかわからないのが、成虫になるとレンズがいっぱいの複眼になります。ですから、成虫になると目につながる神経が太く大きくなるんです。

堀江 ああ、脳の視神経がね。

瀬筒 それから幼虫の時はエサを食べるので、食道の神経節が大きく独立しているんです。

堀江 え、成虫になったら食べないんですか?

桑名 食べないです。成虫のカイコは口がないんです。

堀江 どうしてるんですか?

小島 蓄えだけです。

桑名 水も飲まないです。

小島 だいたい朝に羽化して成虫になって、午前中に交尾して卵を産み始めます。

ホリエモンWITH 堀江貴文 生物研

堀江 へー。

小島 飛ぶこともないので……。

堀江 何千年もそんな感じなんだ。

桑名 基本的に養蚕農家で飼育している場合は成虫にならないんですよね。繭の時に出荷して、糸を取るために繭の状態で茹でてしまうので成虫になることはないんです。ですから、種(卵)を取る業者さんのところでしか成虫にはならないんです。それで、そういう業者さんのところでは産卵台紙っていう専用の紙があって、その上で卵を産ませています。

堀江 すごいなあ。

瀬筒 今、養蚕農家は日本にどのくらいあると思いますか?

堀江 全然、わかんないです。

瀬筒 昭和初期は220万戸あったのが、昨年は486戸です。繭も40万トンくらいあったのが、昨年は168トンくらい。それくらい衰退しているんです。

小島 でも、シルクは素材としてはとても優れていますし、日本の養蚕技術は世界的にも非常に高いんです。たとえば、同じ繭でも育て方がちょっと違うだけで、大きさも糸の品質も全然、違ってきますから。

堀江 あれ、この繭の糸って、全部1本の糸なんですか?

桑名 そうです。ですから、ほぐしていけば1500メートルくらいの1本の糸になります。

瀬筒 最初の糸口を見つければ……

堀江 “糸口”って、もしかして、ここからできた言葉とか?

瀬筒 そうです。

堀江 それも知らなかった。

瀬筒 糸口を探すのに一番いいのは稲の穂です。

堀江 へー。

桑名 繭をお湯の中につけて、稲の穂を10本くらい束ねてかき回すんです。そうすると最初は稲穂の周りに糸がわーっとくっついてくるんですけど、それをほどいていくうちに1本になるんです。

ホリエモンWITH 堀江貴文 生物研

堀江 本当に糸口っていうのがあるんですね。

瀬筒 それから、“割愛”っていうのも養蚕業でよく使う言葉からきています。

堀江 「割愛する」の割愛ですか?

 

 

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桑名芳彦(Yoshihiko Kuwana)
農業生物資源研究所遺伝子組換え研究センター
新機能素材研究開発ユニット主任研究員。

小島桂(Katsura Kojima)
農業生物資源研究所遺伝子組換え研究センター
新機能素材研究開発ユニット主任研究員。

瀬筒秀樹(Hideki Sezutsu)
農業生物資源研究所遺伝子組換え研究センター
遺伝子組換えカイコ研究開発ユニット ユニット長。

 

 

Photograph=柚木大介 Text/Edit=村上隆保