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集束超音波で触れる空間を作り出す。 篠田裕之の考える触覚フィードバックの未来とは 前編1/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 篠田裕之

篠田裕之(Hiroyuki Shinoda) 東京大学大学院新領域創成科学研究科教授。情報理工学系研究科兼担。1988年東京大学工学部物理工学科卒業。1990年同工学系研究科計数工学専攻修士課程修了。その後、同大学助手、東京農工大学助教授、米UCバークレイ客員研究員、東大助教授などを経て、2012年より東京大学教授。

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人間の触覚は体に答えを教えてくれる先生

堀江貴文(以下、堀江) よろしくお願いします。

篠田裕之(以下、篠田) こちらこそよろしくお願いします。わざわざ来て頂いてどうもありがとうございます。

堀江 いえいえ、もともと触覚の研究をやられていたんですか?

篠田 私が興味を持っているのは基本的に触感なんですね。人間の触覚。もともと物理だったり現象のモデル化が得意なんですけど、対象を何に向けるかというところで、私の修士論文のテーマがロボットの触覚センサーを作るというものだったんです。私の指導教員がセンサーの権威の先生で、その当時の新分野として人間自身のセンサーにも興味をお持ちの方でした。そういうのもあって触覚の研究、人間の触覚をこれからどれだけ活用できるかっていうところでやっています。

堀江 もう触覚一筋なんですか。

篠田 他にもいろいろやってるんですけど、ずっと興味を持ってやってるのはやはり触覚ですね。ITで視覚と聴覚はすぐ共有できますよね。でも人の触覚、人間がどう動いて、これを触ったときにどういう感覚だったよという体験は、今のメディアでは伝えようがない。例えば動きのコツだとかも、ある程度は言葉で伝えたり、映像で見せる事はできるんだけど、それをもうちょっとダイレクトにできないか。当たった感覚だったりタイミングとかを直接伝えることができないかとかが興味のあるところです。あるいはスキンシップといったものをITの世界で扱えるのかどうかといったところを。

堀江 その辺を1回じゃあデータ化してそれを伝えてっていう。

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篠田 そうですね。今のITの技術っていうのは基本的に大人向けのものなんですね。つまり、ちゃんと理性の基盤があって、自分で考え判断できる人が便利に使うものであって。実はどうやったらそういうふうに健全な理性が育まれるかが重要なテーマなんですね。そういうところで情報技術が役に立つことがあるんだろうかっていうのに非常に興味があるところで。例えば、不安で泣いてる子供がいるとします。大人だったら、「君だったらできるよ」「あの時の経験を思い出せ」って言葉で励ますことができます。だけど、何にも経験したことがない人に、あるいは言葉の意味すらよくわからないような子供に「君ならできる、自信持て」と言っても意味がない。その時に大人ができる唯一のことはぎゅっと抱きしめてあげるとか、なでてあげるとか。そうするとやっぱり安心するんですね。そういうふうに自分の気持ちをコントロールがまだできないときの子供の情緒のコントロールに触覚はすごく重要な役割を持っていると思うんです。

堀江 はいはい。

篠田 あとは例えば人間ってどうやって自分の動きを覚えていくかっていうと、ひたすら日々学習して覚えるわけですね。転んだら痛い。痛いから転びたくない。次転ばなかったとしたら、そっちが正しいんだと思って、歩き方なりやり方を覚えるわけです。ということは、実は人間の触覚というのは体が物を覚えていくときの先生なんですね。知能ができていく中で、どういうふうに触覚でサポートすれば、精神的にも上手く発達できるか。そういうのが興味としては非常に強いです。ただし、一足飛びに行けるわけではないので、ひとつひとつ今やれることを出して行って、少しずつ触覚の技術を広めていきたいというのが基本的な考え方ですね。

堀江 けっこう分野が広いかなっていうか、やることっていっぱいあるし。

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篠田 そうですね。20世紀の中盤以降、理系で1番花形だったのが半導体産業とかですね。あの時っていうのは歴史的にも特殊な時期で、量子力学とかができて、それを勉強して適応していくと、今までこんなに大きかった計測器が小さな1粒のセンサーになって、コンピュータもこんなに小さくなって。どんどん世の中を変えていくことができるっていうので、ひたすらそれを極めましょうってやってきたわけです。仕事が広がっていって本当に役に立つものができた。これからどうしていこうっていう時に、人間の特性っていうのは変わらないので、そういう理数系が得意な人っていうのは今でもたくさんいるわけです。その力をどこに使っていくかが重要だと思うんですよね。何か1つの物質を作ったら世の中、人間が幸せになるかっていうと、それはとても想像しにくくて。それを作った会社が儲かるとかっていう想像はできるけども、ただちに先進国の問題が解決するわけじゃない。むしろ、システムをどう作るかっていうところがとても重要だと思うんです。

堀江 それはそうですね。例えばスマートフォンなんかはそうですよね。ひとつのシステムとして。

篠田 そうですね、それが1番わかりやすいですね。

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