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集束超音波で触れる空間を作り出す。 篠田裕之の考える触覚フィードバックの未来とは 前編2/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 篠田裕之

飽和したことで生まれる新しい可能性

堀江 スマートフォンに使われてる技術自体はわりと古いというか、以前から使われてたものがほとんどなんですけど、こういうシステムになった事が大きいですよね。研究がスマートフォンのおかげで変わった部分っていうのはあるんじゃないですか? 例えばセンサーが安く手に入るようになったとか。

篠田 それはもう変わりましたね。たぶん1番変わったのは頭の中ですね。研究してる人の頭の中。

堀江 ああー。

篠田 それはスマホが、というよりはコンピュータが、ということになるかもしれないけど、物の作り方とかも全然違いますね。私が学生だった頃に奨励されたのはとにかく手を動かして作ってみましょう。それは今でも奨励されてるんですけど、ある程度の段階にいくと、今はほとんど全部コンピュータの中で作るわけですよね。物にするのって最後の最後。その方がはるかに効率よくできるわけです。ほとんどのものはコンピュータの中でできる時代だし、そういうものの共同作業ってスマホでできてしまう。作る方としては相当変わりましたね。

堀江 あとスマホにセンサーとかそういったものがたくさん入っていて、例えばロボット作ってる人とか、ドローン作ってる人とかはかなりその恩恵を受けてますよね。

篠田 それはダイレクトに組み込んじゃってってことですよね。

堀江 そうですね。だからここ10年ぐらいロボットってすごく進化してるじゃないですか。安く高性能なロボットが普通に製品として出てくるような状況になっているというところは、スマホのおかげなのかなっていう。スマートフォン革命というのは、製品としての有用性にとどまらず、わりと他の分野にも影響を与えていて、システムとして1つこういうものにインテグレーションした結果として、いろんな他の分野にも役に立ってる部分は大きいんじゃないかなっていうのはありますね。

篠田 その通りだと思います。使えるセンサーっていうのは山ほどあるんだけども、その中でジャイロや加速度センサー、GPSなど、選び方は絶妙だと思いますね。加速度センサーをどう使うかなんて、スマホが出てくるまで非常に特殊な例しか知られてなかったですし。

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堀江 スマホの前はWiiリモコンですね。Wiiリモコンがたぶん加速度センサーをああいう用途ではじめて使ったのかなと。

篠田 触覚のフィードバックがあるとこんなになるんだなって多くの人が体験したのはWiiリモコンですね。

堀江 確かプレステ2でもブブブって震えたりとかありましたね。でもやっとここ数年でしょうね、そういうものが製品として一般コンシューマーがやり始めたというか。ノビントファルコンはご存知ですか?

篠田 いえ。

堀江 もともとAPSってガンシューティングゲームのマシンガンのフィードバック、打ったらブブブブブッて手元が震えるのってあるじゃないですか。それ用に作られてる機材なんですけど、それを日本人が改造して、マシンガンの代わりに手をつけたんですよね。これ面白いなと思って。僕の知り合いが作っちゃったんですけど、その手を使って初音ミクと握手ができるっていうもので、ヘッドマウントディスプレイつけて手を握ると、ここに初音ミクがいて、握手してるような感覚になるんです。みんな興奮しちゃって、強く握手しすぎて、100回ぐらいで壊れちゃうっていう(笑)

篠田 ハハハ(笑)。

堀江 まさかそんなものに使われるとは思ってなかったでしょうね。

篠田 触覚の研究者の間では握手も含めてコミュニケーションっていうは非常に注目されていているんですけど、実は握手までいかなくてもいいんですよね。映像と一緒に動いたものが、こちらと同じような動きとして感じられるようになると、本当になんか一緒に触れてるような感じはしますよね。同時にいる感じを楽しむっていうだけだったら、棒を持っててもいいわけですよ。むこうが引っ張った、こっちも動くっていうと一緒の棒を持ってる感じは出るわけです。

堀江 なるほど。手術用のロボットアームも触覚フィードバックをやってる人がいましたが、それを同じような感じなんですか?あれはダイレクトに通信回線経由で、無線ワイヤレスでもできるようにしてましたけど。

篠田 人間の触覚を活用していくという意味ではもちろん同じですし、問題も共通しています。どういうふうに使っていくかっていうと触覚っていろいろな方向がありますね。アミューズメントやコミュニケーションに使うのもあるし、運転中のドライバーを支援したりとかもありますし。今私たちがやってるのは、物を持たなくても触覚を伝えられるようにするという技術の研究です。物を持たなきゃいけないっていうと、必ず形とか物で表現できるものにしか使えないですよね。握手なら握手する手が必要で、握手することしかできない。ここに装置があって、そこにいると何も触れなくても、何か触覚を感じる体勢のときに、ふっと触覚を感じさせるというようなことができると、映像とか音声と同じように触覚を使える時代がくるんじゃないかなと思っています。実はそういう研究をメインにやっています。

堀江 世界的に見てそういった研究をやってる人って多いんですか?

篠田 触らないで触覚を再現するっていうのは超音波を使ってやるんですけど。

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堀江 はい、集束超音波。

篠田 そうです。それをやり始めたのは世界的にみても私たちの研究室が最初だったと思うんですけど、今はいくつかの大学でやっています。でも集束超音波に限らなくても、触覚ってまだそんなに本格的にはやっていない状況じゃないでしょうか。たぶん、今1番規模が大きいのはスマホですね。スマホの表現として、バイブレーションでの触覚フィードバックがあります。ボタンの位置のところに触れると本当にボタンの盛り上がりが感じられるとか、そういうのをやってる方はたくさんいると思います。ただでも、まだまだその程度のもので。触覚は本当にいろんなところでこれからもっともっと使われてくると思います。

堀江 やっとそういうふうになってきたみたいなことなんですかね。

篠田 やっぱりそれより重要なものが飽和するまでは始まらないってことなんじゃないですかね。会社だって次の目玉を何にするか、ということで、インパクトのある製品を考えていくわけじゃないですか。テレビにしても今までだと画面が大きくなるとそれだけですごくて、そのインパクトに勝てるものはなかったから、そこにみんな注目するわけですよね。さすがにこれ以上画面はでかくならないなってときに、次に何で差別化しようかって、初めて他の感覚が重要になってくると思うんです。

堀江 不思議ですよね、そこは。

篠田 不思議ですね。トレンド化してる。

堀江 僕はそこがすごく不思議だし、だけど未来を見てみたいっていうのもあって、飽和しなきゃ考えないとかじゃなくて、人的リソースとかも含めてもっと効率的な方向に進めないものかなって、いつももどかしいんですよね。

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Photograph/Edit/Text=柚木大介