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「深海生物のメカニズムでイノベーションを起こす」 海洋研究開発機構・出口茂が考える 極限環境を使った最新技術とは?前編1/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 出口茂

出口茂 Shigeru Deguchi
海洋研究開発機構・海洋生命理工学開発センター長
1966年生まれ。京都府出身。博士(工学)。京都大学を卒業後、海洋科学技術センター研究員、グループリーダーなどを経て、現職。横浜市立大学大学院客員教授、東洋大学大学院客員教授などを兼任。

現在、生き残っている生物には、技術開発のヒントがある

堀江貴文(以下、堀江) JAMSTEC(海洋研究開発機構)と言えば、「しんかい6500」とかの潜水調査船が有名ですよね。僕も1度くらいは乗ってみたいなと思うんですけど……。

出口茂(以下、出口) 「じゃあ、1時間くらいちょっと観光しますか?」みたいな感じであれば、乗ってみたいと思うでしょうね(笑)。

堀江 結構、長く潜水しているんですか?

出口 潜航して海底に着くまでに2時間くらい。それから、3時間くらい調査をして、浮上するのにまた数時間。乗ってから降りるまで、だいたい8時間くらいですね。

堀江 8時間はきついですね(笑)。

出口 しかも、船内はすごく狭いんですよ。それに海の底に潜ると温度は2〜4度くらいしかなくて、暖房もないし、トイレもない……。

堀江 じゃあ、みんなトイレはどうしてるんですか?

出口 携帯トイレですね。

堀江 大のほうがきたら、きついですね(笑)。

出口 (笑)。まだ、大をしたという人の話を聞いたことはありませんが……。

堀江 ところでJAMSTECは、潜水調査船などで調べた結果をどのように応用しているんですか?

出口 そうですね。今、深海に限らず、テクノロジーで一番重要なのは“持続可能性”だと思っています。産業革命以来、テクノロジーはものすごく発展してきましたが、地球温暖化など現在はその歪みが出てきていて、今後はより持続可能性のある技術開発に変わっていくはずです。そして、そのヒントはたぶん生き物にあるんじゃないかと考えています。生物が何年前に生まれたかということに関しては諸説ありますが、いずれにせよ何億年以上もずっと生き続け、絶滅の危機を乗り越えてきているわけです。ということは、持続可能であるということは間違いありません。そこで、僕らがやろうとしていることは「生き物がなぜ持続可能性を維持しているのか」ということなんです。

ホリエモンWITH 堀江貴文 出口茂

堀江 なるほど。そのへんの話になるわけですか。

出口 海の中は、地上とはまったく違う場所です。僕らの生きている地上は、太陽の光がふんだんに降り注いでいて、光合成をする植物が一次生産者となり、とても豊かな生態系が維持されています。でも、海底は太陽の光が届かない常に真っ暗な世界です。光が届かないだけじゃなく、例えば世界で一番深い海の底まで行くと圧力が1100気圧もありますから、住んでいる環境がぜんぜん違う。でも、そこにもちゃんと生き物がいて、そういう環境で何億年も生きていくために、地上とは違う生き残り戦略を持っているはずなんです。僕らは、そこに新しい持続可能な技術開発のヒントがあるんじゃないかと思っているんですよ。

堀江 本当に1万メートル以上の深海に生物がいるんですか?

出口 います。気持ち悪いのがいっぱい(笑)。

堀江 それは、もともとそこにいたんですか?

出口 それは、いい質問ですね(笑)。海底が表面層から1万メートル離れているといっても、物理的に隔離されているわけじゃありません。ですから、もともとそこにいたかどうかというのは、まだよくわかっていないんですよ。ただ、例えばマッコウクジラって3000メートルくらいまで潜ることができるんですね。そうするとクジラの眼って海の表面層の太陽の光がサンサンと降り注いでいるところから、3000メートルの真っ暗なところまで見ることになるわけじゃないですか。そこで、暗いところでは光の代わりに音を使うんですよ。

堀江 あ、超音波。

出口 はい。超音波でのセンシング(判別)に切り替えるんです。

 

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