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「先読みする」技術で世界一を目指す。 金沢大学准教授・菅沼直樹が語る 車の自動運転研究の最前線 前編2/2

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GPSは使わない。運転中の環境と過去の画像をマッチングさせて位置を把握する

堀江 センサー以外はどうなんですか? GPSとかは?

菅沼 GPSも自動運転にとって、重要なテクノロジーのひとつです。例えば、日本だと準天頂衛星(日本の真上を通るような軌道の人工衛星)を打ち上げて、かなり精度の高い位置情報を測れるようになっています。そのため、自動運転もそのシステムを使えば可能だというイメージがあるんですけれども、実際には「GPSはほとんど使えない」という想定で皆さん研究しています。それはなぜかというと、東京都内だと高いビルが建ち並んでいて……。

堀江 捕捉できないんですね。

菅沼 そうです。準天頂軌道とはいいつつも、やはり新宿など高いビルのある場所では難しい。それにトンネルなんかに入るとまったく情報が取れないので、「GPSを利用しての自動運転は現実的じゃない」というのが一般的な考え方なんです。

堀江 まあ、そうなるでしょうね。GPSを使わずに自動運転するためには、どんな方法をとるんですか?

菅沼 我々は、レーザーを使って「運転中の周りの環境」と「過去に走ったときに得られた画像情報」をマッチングする手法を使っています。でも、マッチングがうまくいかない場合もあるんです。例えば、同じような側壁が続くまっすぐで単調な高速道路だと、画像情報だけでは前後感などがわからない。そのため、正確な位置がつかめません。そんな時は、ジャイロセンサーや加速度計、タイヤの回転数などの情報を統合して、自分の位置を連続的かつ、なめらかに求める技術が必要になります。

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堀江 ロケットと同じようなことをやっているんですね。

菅沼 そうなんです。軍事やロケットから派生した技術が、車で利用できるようになってきています。

堀江 潜水艦の技術に近いのかもしれないですね。

菅沼 そうですね。潜水艦には、GPSを利用せずにジャイロセンサーや加速度計などで自分の位置を把握するシステムが普通についていますからね。

堀江 GPSで測位できるところは、どうしているんですか。

菅沼 もちろんGPSの情報も使っています。ただし、GPSから得られる一瞬のデータを使うのではなく、時系列的に信頼できるデータを使うとか、探索する範囲を限定するなどして利用しています。あとはDead Reckoning(推測航法/トンネル内など衛星からの信号が受けづらい場所で、ジャイロや加速度計などの各種センサーからの情報を統合して測位の精度をあげる技術) とMap Maching(マップマッチング/GPSデータの誤差をコンピュータの地図情報と照らし合わせて補正する)技術を組み合わせてやっています。

堀江 なるほど。

Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保