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「将来的には人工冬眠で宇宙旅行も可能に」 理研・辻孝が語る「再生医療」の最先端!前編1/2

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辻孝(Takashi Tsuji)
理化学研究所多細胞システム形成研究センター器官誘導研究チームリーダー
1962年生まれ。岐阜県出身。新潟大学、新潟大学大学院、九州大学大学院を卒業後、日本たばこ産業研究員を経て、2001年に東京理科大学助教授。2007年に東京理科大学教授。2014年から現職に。京理科大学客員教授、東京歯科大学客員教授、九州大学非常勤講師

歯や唾液腺などの「臓器再生」は可能になった

辻孝(以下、辻) 私たちはいま、「臓器再生」をめざして研究を進めているんです。「再生医療」って、例えば血液を作り直すとか、神経を再生するとか、いろいろな治療方法があるのはご存知だと思いますが、そのほとんどがバラバラの細胞をそのまま体の中に戻しています。それで、今はその次の段階として、皮膚をシート化して火傷の患者さんの体に貼りつけるなどの治療は進んでいます。私たちは、さらにその先の段階としての「臓器再生」を考えているんですよ。

堀江貴文(以下、堀江) 臓器再生……ですか。

 はい。臓器というと腎臓や肝臓をイメージしがちですが、それよりもう少し小さなもの。たとえば、「歯」とか「唾液腺」とか「髪の毛の毛包」とか……。実は、これらも臓器と同じ仕組みでできているんです。そういった臓器を再生する研究を10年くらい前から始めていて、歯や涙腺、唾液腺などを細胞から作りあげることに成功したんです。

堀江 最初は何を作ったんですか。

辻 最初は歯です。胎児の時に「歯のタネ」がアゴの中に作られて、それが育つと歯になります。歯のタネのように将来、臓器のもとになるものを「原基」といいますが、ヒトの歯の場合は1つめのタネが乳歯になり、2つめのタネが永久歯になります。歯のタネは2個しかないので、それ以上はもう生えてこないんです。

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堀江 へー。歯のタネは2個なんですね。

辻 そうです。人間の場合は2個です。お母さんのお腹の中にいる時に2個セットされます。他の臓器は1個しかつくられないので、基本的に1回だけ早期が出来上がるだけなんです。

堀江 ああ。

辻 「では、ヒトの場合、3つめのタネを作って埋めれば、なくなったところにも歯が生えてくるんじゃないか」と思いますよね。そこで、歯のタネをマウスに移植してみたら、実際に歯が生えてきました。それがこれです(資料を見せる)。

堀江 この蛍光物質のものですか。

 そうです。実際に生えてきたものが臓器再生で作ったものかどうかを判断するために、蛍光物質を入れています。でも、人の歯をタネから育てるためには何年もかかる。それでは遅すぎるということで、ある程度、歯として完成した歯槽骨と歯根膜のユニットを抜けてしまった部分に入れてみました。すると、骨折治療のように新しい歯槽骨がもとあった骨がくっついてその場に固定されたのです。

堀江 なるほど。この「バイオ・ハイブリッド・プラント」というのは? 僕もインプラント(人工歯根)をやっているんですけど……。

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 インプラントって骨に直接結合させますよね。そこで新しい技術として、インプラントと骨の間に歯根膜をつけてあげるんです。歯根膜がないと圧力や刺激が感じられず、QOL(クオリティ・オブ・ライフ=人生の質)が悪くなる。でも、歯根膜があるとそこに神経が入ってくるので、噛んだ時に圧力や刺激を感じられます。

堀江 それ、いいですねえ。

 実は、歯科治療って、この2000年くらい変わってないんですよ。例えば、インプラントって紀元1世紀のミイラのアゴからも出てきているんです。真珠貝を歯の形に成形して、それを骨に刺していた。真珠貝の出す炭酸カルシウムによって骨がくっつくんです。これは今の骨結合型のインプラントです。

堀江 そんな時代からインプラントがあったんですか。

辻 はい。だから「噛む」ということが、人のQOLにとってどれほど大事かがわかりますよね。ブリッジだって、5世紀からあります。

堀江 ブリッジのほうが新しいんですか。それは意外ですね。

辻 そうなんです。日本では、江戸時代に木製の総入れ歯がありました(笑)。

堀江 いかに歯が大事かということがわかりますね。

 そうなんですよ。でも、治療法はあまり変わっていないんですよね。

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