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「開腹手術なしで治療ができる」 自治医大・山本博徳教授が語る 小腸の内視鏡検査・治療の最先端 後編1/2

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がんも早期なら内視鏡で完全摘除が可能

堀江 山本さんが開発した小腸用の内視鏡って、確か「ダブルバルーン型」って言うんですよね。

山本 そうです。

堀江 バルーンが小腸を広げて、中を見るという感じなんですか?

山本 バルーンは小腸の中を見るというより、腸を把持するためのアンカーとして使います。このバルーン型内視鏡の開発は「なんで小腸には内視鏡が入りに難いんだろう」という疑問からスタートしたんですよ。腸ってフニャフニャ柔らかくて曲がっているから、そこに内視鏡を入れてもなかなか進まないし、場合によっては腸が伸びてしまうんです。それに曲がり方がきついと余計入り難くなる。だから、腸管が伸びないようにバルーンで固定したんです。

堀江 それはバルーンを膨らませて?

山本 そうです。バルーンを交互に膨らませて内視鏡を進め、さらに小腸の距離を縮めるんです。

堀江 小腸の距離を縮める?

山本 小腸って、アコーディオンみたいになっているんですよ。人間の小腸は、だいたい5、6mほどの長さがあるんですが、縮めれば2mの内視鏡で大丈夫見られます。

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堀江 2mでいけちゃうんですか?

山本 ええ。それに、2mの内視鏡に使うオーバーチューブは1m45cmです。

堀江 そういうのを今まで作らなかったのは、なぜなんですかね?

山本 実は、小腸内視鏡は昔からあったんです。

堀江 えっ、昔からあったんですか?

山本 ええ。新谷弘実先生(アルベート・アインシュタイン医科大学教授)が1960年代の終わりに内視鏡で大腸内視検査に成功したあと、平塚秀雄先生(平塚胃腸病院長)が1970年代の初めにロープウエィ法で小腸内視検査に成功しているんです。

堀江 ロープウェイ法?

山本 ロープウェイ法というのは、「腸紐」という紐を患者さんに飲ませて、お尻から出てくるのを待ち、その紐に沿わせて内視鏡を入れるという方法です。それからもうひとつ、ソンデ法といって鼻からチューブを挿入して小腸まで進めて行く。このふたつの方法がありました。

堀江 でも、口にしても鼻にしても、入れられたほうは大変ですよね。

山本 そうですね。患者さんの負担が大きいし、大がかりだし……。

堀江 あと、最近は小型のカプセルとかもありますよね。

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山本 はい。僕がダブルバルーン法を考えた時、カプセル内視鏡がすでに開発されていましたから、「今さら内視鏡を開発しても、あんまり意味がないんじゃないか」って言われたんですよ。たしかに、カプセル法はそれまでのロープウェイ法やゾンデ法に比べて楽かもしれないけれど、「じゃあ、病気が見つかったらどうするんだ」と。

堀江 開腹手術しかない……。

山本 ですよね。でも、ダブルバルーン法は中で操作ができるから、治療もできるわけです。やっぱり、ダブルバルーン法を開発して「一番良かったな」と思ったのは、内視鏡で診断ができて、さらに治療までできることなんですよ。

堀江 特にさっきの小腸にポリープができるポイツ・ジェガーズ症候群の人とかは、お腹を切らなくてよくなったんですもんね。

山本 そうです。あと、ポイツ・ジェガーズ症候群の患者さんって、口唇に黒いポツポツができるので、そういう症状があるお子さんには「8歳になったら一度、小腸の検査をしましょうね」ということを小児科の先生とかに言ってもらってるんですよ。8歳までにちゃんと検査をすれば、9割の人はその後開腹手術をしないですみますから。

堀江 それは腫瘍があったら、内視鏡で切除できるから……。

山本 そういうことです。それから、ESD(Endoscopic Submucosal Dissection)。これは早期大腸がんの内視鏡切除なんですけど、最近は内視鏡の技術が進んだので拡大内視鏡で見るとがんの境界線が良く見えるんです。それで確実に早期がんを完全摘除できる。がんの治療って、やっぱり薬じゃ不十分なんですよ。大腸がんも転移しちゃってからでは遅いわけです。それが、局所に留まっている間なら内視鏡で取れるんです。

堀江 早期発見ということですね。

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