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Jリーグチェアマン・村井満氏が語る 日本サッカーの問題点と未来とは?後編1/2

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<前編はコチラ>

大相撲はサッカーより先にグローバリズムを完成させていた

村井 今年、大相撲を見にいったんですよ。「溜席」っていう土俵に一番近い席にご招待いただいたんですけど、あの席は200kg近い力士が飛んできたりするわけじゃないですか。

堀江 はい。

村井 あの臨場感はシビれるものがありました。それから、鈴鹿のF1日本グランプリにも行ったんです。その時はピットエリアにも入れさせてもらったんですが、目の前でタイヤ交換をしているのを見た時は興奮しました。やはり、大相撲もF1も“顧客にどうやって臨場感を与える見せ方をするか”ということをすごく研究しているんですよね。

堀江 僕は大相撲が好きで、「若・貴」の時代からずっと見てるんですよ。大相撲は一時期、不祥事(2010年から2011年にかけての野球賭博問題や八百長問題)があってどん底まで落ちましたよね。あそこで変わりましたよね。

村井 今はSNSをうまく使って面白いこともやってますよね。

堀江 それは、不祥事があって2011年の夏場所をNHKが中継しなくなったからです。その時に『ニコニコ動画』とかが中継をして、仲良くなったんですよ。「大相撲超会議場所」ってご存知ですか?

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村井 なんか聞いたことはあります。

堀江 IT業界のわんぱくたちと相撲を取ろうということになって、昨年、僕とひろゆき(元「2ちゃんねる」管理人)とかが、遠藤と相撲を取ったんですよ。まあ、当たり前なんですけど一人ずつでは歯が立たず、最後に4人がかりで寄り切って勝ったみたいな。

村井 へー。楽しそうですね。大相撲って、至近距離で見るとやはりすごいですよね。力士たちは少し稽古してから土俵の前に座るじゃないですか。だから、あの仁王様のような体から湯気が沸き立っているように見えるし、土俵に上がってシコをふんでいるうちに肌の色がみるみるピンクに変わっていったりする。ああいうところは、テレビではなかなか伝わらない世界ですね。

堀江 僕、大相撲って、すでにグローバルコンテンツになっていると思うんです。

村井 それは、パリ巡業とかニューヨーク巡業とかで?

堀江 いえ、そうじゃなくて。力士がグローバル化しているんですよ。大相撲って「外国人枠」ってないじゃないですか。

村井 確かに。

堀江 今、横綱はみんな日本人じゃないけれど、白鵬なんて日本人よりも日本人っぽいじゃないですか。受け答えもしっかりしてるし、「こんな立派な日本人なかなかいないよ」っていうくらいですよね。

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村井 そうですね。

堀江 それで、モンゴル人力士が横綱だったりするから、もちろんモンゴルでは人気が高いし、最近はロシアやエジプトの力士もいたりするので、そっちの方でも注目されている。完全にグローバルコンテンツになっているんですよ。大相撲って、実はサッカーの先をいってるんです。

村井 大相撲みたいに、Jリーグもアジアからやって来る選手がJ1でもっと活躍するようになれば、アジア全体での「Jブランド」が高くなりますね。今はレ・コン・ビンとかイルファンとかまだ人数が少ない。

堀江 でも、ジュニアとかだと結構、うまい選手がいるんですよね?

村井 いますね。それから、今、日本の指導者がどんどん海外に行き始めていますから。例えば、「セレッソ大阪」はタイの農協と協力して子どもたちを集めています。セレッソのトップパートナーである「ヤンマー」さんは農機具を扱っているので、タイの地方の農家にヤンマーブランドを広めるのと同時に、運動神経のいい子どもや体の大きい子どもをバンコクに連れて行って練習させる。そして、その中からポテンシャルのある子どもをセレッソの指導者が徹底的に教えるわけです。そうした世代がトップチームに上がってくるようになると、アジア一帯の国がJリーグとコラボできるようになる。

堀江 でしょうね。育成の問題がありますよね。モンゴルって人口が300万人くらいなんですよ。人口で比べたら、白鵬みたいに強い力士が出てくる確率は日本の方が何十倍も高いはずなんです。じゃあ、何で出てこないかっていうと、日本人が力士を目指してないからなんです。モンゴル人は、夢のひとつに「大相撲の力士になる」ということがある。日本に行って大相撲の力士になって、スターになってお金持ちになる。それがモンゴリアンドリームのひとつなんです。だから、それを目指すわけです。それに、モンゴルにはモンゴル相撲という土壌や育成システムがある。だから、強いんだと思います。

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村井 そうですね。だから、そうした土壌や育成システムをJリーグも作っていかなくてはいけないんでしょうですね。実は、タイでは日本人のサッカー選手が60人くらいいるんですよ。それからベトナム代表監督の三浦俊也さんは、今ベトナムで一番有名な外国人のうちの一人だと思います。

堀江 でしょうね。

村井 今、そういうふうに日本人選手や指導者がどんどん海外に行って、育成を始めているんですよ。これはワールドカップ予選の敵を強くするということにもなるんだけれど、トータルで考えると日本のポジションを上げることにもつながると思っています。

堀江 あと5年もすれば、育成とかいろいろな取り組みの成果が出そうですね。

村井 5年後は今の小学生たちが17歳とかになります。ただ、アジアを勝ち抜くのはさらに難しくなっている可能性があります。今年ニュージーランドで行われたFIFAU-20ワールドカップ本大会には、ミャンマーが出場しました。少し前までサッカーではまだまだ発展途上だと思われていた国々がアジア予選を勝ち抜く時代になりました。そうした力をつけてきているアジア各国のチームとどう渡り合うか、楽しみです。

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