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「塗る太陽電池」の開発!理研・尾坂格氏の考える 未来の発電のカタチとは?1/2前編

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尾坂格 Itaru Osaka
工学博士、理研上級研究員
1975年生まれ。岡山県出身。2002年、筑波大学大学院工学研究科修了後、富士フイルム研究員、カーネギーメロン大学博士研究員、広島大学大学院工学研究科助教を経て、2013年に理化学研究所創発物性科学研究センター上級研究員に。2014年からは筑波大学客員准教授を務めている。

インクジェットプリンターで集積回路を作ることができる

堀江貴文(以下、堀江) 尾坂さんは“塗って作る太陽電池(有機薄膜太陽電池)”の研究をされているんですよね。

尾坂格(以下、尾坂) はい。我々が開発した半導体ポリマーを基板に塗ることで、太陽電池(太陽光発電機)が作れるんです。

堀江 半導体ポリマーで太陽電池を作るためには、ポリマーの結晶がきれいにそろってないとダメなんでしたっけ?

尾坂 そうですね。半導体ポリマーの結晶を整然と並べることが大切です。バラバラだと電気が通りにくくなるからです。それときれいに塗るためにポリマーの溶解性を高めることも必要です。

堀江 なるほど。

尾坂 実は、僕が太陽電池(太陽光発電機)の開発を始めたのは4、5年前からなんですよ。もともとは太陽電池の材料のほう、半導体ポリマーの研究がメインでした。僕は筑波大学の出身で、学生の頃はノーベル化学賞を受賞した白川英樹先生の研究室にいたんですよ。白川先生は導電性ポリマー(電気を通すプラスチックのようなもの)の研究で2000年にノーベル賞を取ったんですが、僕もその流れで半導体ポリマー(導電性ポリマーと半導体ポリマーはほぼ同じもの)の研究に進みました。

堀江 導電性ポリマーの研究の歴史っていうのは、白川先生から始まったんですか?

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尾坂 “ポリマー”というカテゴリーだと、白川先生から始まったと言えるんじゃないでしょうか。白川先生の研究によって1970年代半ばにポリマー、つまりプラスチック素材が電気を通すことが発見されましたから。同じ有機物の色素などでは、もうちょっと前から同じような研究が行われていました。そして、1980年代になると太陽電池などへの応用研究が始まり、2000年代になって半導体ポリマーの研究が盛り上がってきました。

堀江 なんで、それまで盛り上がらなかったんですか?

尾坂 いろいろな種類のポリマーを作る合成方法がなかったからです。2010年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章先生(北海道大学名誉教授)や根岸英一先生(パデュー大学特別教授)をはじめとする研究者が、1970年から1980年代頃に炭素と炭素を結合させるクロスカップリング反応を初めて発見したんですが、それらの反応を使って、現在、我々が使っているような材料である半導体ポリマーなどを合成できるようになるまで、そこからかなりの時間がかかっているんです。

堀江 クロスカップリング反応って、何か特殊な触媒を使うんでしたっけ?

尾坂 そうですね。パラジウムやニッケルなどのレアメタルを使います。そして炭素と炭素をくっつけます。

堀江 材料のほうが研究のメインだとすると、これまでに太陽電池以外にもいろいろなものを研究してきたわけですよね。

尾坂 ええ。例えば、トランジスタの研究もやってきました。トランジスタはシリコンの半導体を使って集積回路を形成していますが、それを無機物のシリコンではなく有機物でやろうということです。

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堀江 有機物で集積回路を作ると、どんなメリットがあるんですか?

尾坂 非常に薄く、軽く作れます。我々が開発した半導体ポリマーを使えばいろいろな物に集積回路を塗ることができるし、プリントすることもできる。簡単に言えば、インクジェットプリンターで紙に自分の好きな配列を書けば、そこに回路が出来上がります。しかもサランラップみたいな薄い膜にも描けます。すると皮膚に貼ることもできるんです。

堀江 なるほど。

尾坂 薄ければ曲げたり丸めたりすることもできるので、例えばパソコンのディスプレイを作れば、折りたたんでポケットに入れておいて必要な時に広げて使うといったことも可能です。

堀江 それは、もうすぐ実用化されそうなんですか?

尾坂 実用化となると、もうしばらく時間がかかると思います。どういう用途に使うかにもよりますが、やはり、今のパソコンと同じくらいのパフォーマンスが出せないと厳しいかもしれませんから。

堀江 でも、ディスプレイは、そろそろですよね。

尾坂 そうですね。一部の携帯電話には使われたり、テレビも販売され始めていますが、アップルが有機ELディスプレイを採用するという報道がありましたから。

堀江 2018年からという話ですよね。

尾坂 確か、そうだったと思います。

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