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「鋼ほどの硬さのガラス」を開発 東大・増野敦信助教が語る最新のガラスの秘密とは?1/2後編

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<前編はこちら>

スマホメーカーからの問い合わせが殺到

堀江 このガラスは、どんな分野での応用を考えているんですか?

増野 薄くても丈夫な新素材ということで、エレクトロニクス用基板や建築材料、カバーガラスなどへの応用を期待しています。実際、このガラスを発表したら、スマホメーカーの人がいっぱい来ました。

堀江 やっぱり……。僕は、今のIOT(Internet of Things)の基盤になってるものってスマホの力が大きかったと思っているんですが、材料の世界もスマホの影響は大きいですね。

増野 ガラスなんて古い材料だったんですが、スマホのおかげで一気にセンター的な感じになっちゃいましたね(笑)。でも、スマホに向いているのはもうちょっと弾性率が低いガラスなんです。

堀江 あ、そうなんですか。

増野 スマホの場合は、弾性をやや低くしてわざとたわむようにして、逆に割れないようにするんですよ。以前、サファイアガラスが使われるという話もありましたけど、あれはダメでしたね。サファイアガラスは硬すぎて割れちゃうんです。

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堀江 確かにそうですね。

増野 サファイアガラスは、ガラスではなくて単結晶なんです。単結晶はやっぱり割れやすい。硬いけど、脆い。スマホメーカーの人に聞くと、硬すぎるのはダメで、筐体と同じくらいの弾性率がいいそうです。そうなると今回のガラスでは少し硬すぎるんですが、もうちょっとマイルドな感じにすればいけるかなと思っています。

堀江 その場合は強化ガラスにするんですか?

増野 このガラスは強化しなくてもいいんです。もともと組成的に硬いので。強化って、お金がかかるんですよね。それから1回強化してしまったガラスは後の加工が難しいんです。そういう点でも強化していない強いガラスは、けっこう需要があると思っています。

堀江 なるほど。このガラスは後の加工がしやすいんですか?

増野 はい。普通のガラス加工と同じようにできます。

堀江 それで特性は変わらないんですか?

増野 形は変わっても特性は変わらないですね。

堀江 へー、いいですね。

増野 実は今回の硬いガラスの他にも、いろいろなガラスを作っていまして……。

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堀江 どんなガラスですか?

増野 以前に、ダイヤモンドくらい屈折率の高いガラスを作って発表したことがあるんです。そうしたら、レンズメーカーからいろいろ問い合わせがきました。すでに多くの会社にその技術は入っていて、商品化も近いと思いますよ。

堀江 例えば、どんなところに?

増野 スマホのカメラレンズですね。屈折率がすごく高いので光がギュンと大きく曲がりますから、非常にワイドに拡大できるんです。とてもクリアに見えるレンズですよ。

堀江 なるほど。

増野 でも、高屈折率ガラスを発表した時よりも、硬いガラスを発表したときの方が反響が多かったです(笑)。僕自身、ちょっとびっくりしているぐらいでした。それから「割れにくいガラス」というのが、もうできています。

堀江 それは、今回発表したガラスに、さらに何か加工したり組成を変えたりしたものですか?

増野 はい、組成を変えました。よりサファイアに近いガラスです。サファイアガラスは酸化アルミニウム100%ですが、それだけだとガラスにはならないので、ガラスができる最小限ギリギリのシリカを加えてあります。

堀江 これは当然、浮かせてないとできないですよね。

増野 そうですね。このガラスは硬いんですよ。しかも、硬くて割れない。

堀江 かなりサファイアの組成に近いんですか?

増野 近いですね。原理的にはサファイアに近づくほど硬くて割れないガラスができるとは思いますが、それは浮かせる技術を使っても作るのが難しい。この割れないガラスの組成は6(酸化アルミニウム):4(シリカ)なんですが、これがマックスという感じですね。

堀江 なるほど。

増野 でも、この「硬い」とか「割れにくい」っていうのは、なかなかわかってもらうのが難しいんですよ。実際に触ってみても、ガラスの球だからよくわからないんですよね。それで学生たちと考えたんですが、堀江さんに実感してもらうためには「割ってもらうしかない」ということになりました(笑)。

堀江 えー。

増野 そのためのジグ(固定する道具)も用意しました。普通のガラスだったら簡単に割れるから必要ないんですけどね。せっかくですので、1個割ってみてください。

堀江 はい。……(「ドン!」という大きな音)すごい! 本当に割れないや。

増野 よかった! 体感していただけて(笑)。

 

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