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「血流からリスクを読み取る」心臓血管外科医・板谷慶一が語る 「予測医療」の重要性 前編1/2

板谷慶一/Keiichi Itatani
心臓血管外科医、流体力学者 1977年生まれ。東京大学医学部卒業。血流シミュレーションなどを開発し、血流エネルギー損失の計算法を発明。血流解析のパイオニア。2015年血流解析会社「Cardio Flow Design」(http://cfd.life)を創設。

流体力学を取り入れて、血流を解析した

堀江貴文(以下、堀江) 板谷さんは、血管の血流解析をしているんですよね。

板谷慶一(以下、板谷) はい。僕は心臓血管外科医なんですけど、現在の心臓外科手術はかなりレベルが高くなっていて、単に「心臓の弁が狭いから入れ替えればいい」とか「破れた血管を人工血管に置き換えればいい」という状況ではなく、「患者さんが術後、元気で長い間生きていくにはどうすればいいか」ということが課題になっています。

堀江 なるほど。

板谷 心臓には血液が流れていますから、血管の形とか狭さや膨らみだけを見るのではなく、血液の流れを見ることも重要です。ところが、血液の流れはそう簡単にはとらえられない。

堀江 そうですね。

板谷 だから僕は流体力学を取り入れ、スーパーコンピュータやIT技術、画像解析などを使って血液の流れを解析しました。そして、どういう手術をすればより効果的なのかを判断しているんです。

堀江 具体的には、どうやってるんですか?

板谷 CTやMRIを受けると多くの画像が撮れます。心臓全体で拍動まで追跡して撮影すると5000枚から1万枚ほどにもなります。その画像を重ね合わせてコンピュータ処理し、血管を立体化します。血管が非常に細かい網の形をしているイメージです。そして、これまでに蓄積したデータから、網の各点の血液の流れの速度や血圧の情報を解析します。すると「血管がつまっている先の血圧が非常に低い」とか、「血管をつまらせるストレスがこのくらいある」ということがわかるんです。

堀江 へー。

板谷 そして、例えば狭心症で心臓のバイパス手術をする場合など、事前にCGによって「この血管とこの血管をつなぐとどうなるか」というシミュレーションができる。すると、つないだ血管には何ccの血液が流れて、低かった血圧がどの程度回復できるかなどがわかるんです。

堀江 すごいですね。

板谷 今の医学は統計を重視していて「100例のうちの成績が何%だから、これでいきましょう」みたいになっているんですけど、血管の配置とか血管の狭い部分がどこにあるかということは患者さんによって違いますからね。

堀江 それは、そうでしょう。

板谷 術後に「この患者さんは、あっちの手術のほうが良かった」「あの患者さんだったらこっちだったね」みたいなことは、医療者なら少なからず経験していると思います。手術は、一度やったら元に戻せないわけですから。

 

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