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ホンダエアクラフトカンパニー社長 藤野道格が語るホンダジェットがもたらす革命とは?前編

藤野道格 Michimasa Fujino
ホンダエアクラフトカンパニー社長兼CEO。1960年生まれ。東京大学工学部卒業後、1984年ホンダ技術研究所に入社し、1986年から航空機の開発に携わる。ホンダジェットの設計、製作、飛行実験などあらゆる業務を率いた。2006年から現職

奇跡の位置の発見がすべてを変える

堀江貴文(以下、堀江) 一般的なビジネスジェットだと、機体の胴体後部にエンジンがくっついていますよね。でも、ホンダジェットは「主翼の上」にエンジンがついてる。

藤野道格(以下、藤野) ここにエンジンをつけることで、客室を広く取れるんです。しかも、空を飛んでいる時は、主翼がエンジンと地上の間にあるため、音のシールドになってくれて飛ぶ音も静かです。NASAの人が乗った時も、「エンジンはかかっているの?」と聞かれたぐらいです。

堀江 この位置にエンジンを配置するのって、すごく難しいのでは?

藤野 そうです。主翼の上にエンジンをつけると、空気抵抗が大きくなってしまってスピードが出ないというのが「飛行機設計者の常識」でした。そんな中で我々が発見したのは、2つのエンジンを絶妙な場所に配置することで、空気の流れをうまくコントロールして、抵抗を低減する方法です。実は、エンジンがあと20cm前についていたら、抵抗が何倍にも増えてしまうんですよ。

堀江 この位置が「奇跡の位置」というわけですね。

藤野 そのとおりです。

堀江 このクラスの機体でこのキャビンの広さはやばいですね。エンジンを主翼の上に付けたことによって、キャビンがすごい広く取れるようになったわけだ。これがほんと凄い。

藤野 エンジンが機体後部に付いていると支持構造がくるので後ろのスペースが使えないんです。このクラスの飛行機で対面で座ると、膝が重なるのでみんな膝を斜めにして乗ってるんですよ。でもこれだと190cmのアメリカ人が乗っても全然大丈夫です。

堀江 あと機体後部にあるタイプは騒音がすごいですよね。振動がキャビンにそのまま伝わる。

藤野 そうですね。構造上キャビン内にすごく共振してしまうんですね。

堀江 でもこれはめっちゃ静か。普通に会話ができる。

藤野 そうですね。今日は高度があまり高くないんですけど、4万3,000フィートまで上がると空気の密度が減ってものすごい静かになるんです。この前台湾から羽田に飛んできた時なんかは、アメリカ人が「ウィスパークワイエット」と言ってましたよ。

堀江 ひそひそ話できる。

藤野 あと揺れがすごく他の小型機と違うと思います。揺れてもそんなにバタバタした感じはしないので。

堀江 キャビンに椅子をつけると5人乗れる感じですか?

藤野 そうですね。あと短距離の時には更に後ろにも乗ってますから最大で7人。実際セスナの機体なんかでも乗れるやつはあるんですけど、1時間も乗ったらうるさくて嫌になっちゃいますね。

堀江 なるほど。このサイズで7人は驚きですね。

堀江 これってキャプテンひとりだけで飛べるんですよね?

藤野 はい。シングルパイロットですね。基本的にはひとりでデモや長距離飛ぶ時なんかは二人で。

堀江 一人で運用できるってすごいですね。昔「ガルフストリーム」というジェット機をを持っていたけど、それはキャプテン、コパイロット、CAも必要だったんで。

藤野 アメリカではオーナー社長は自分で操縦して部下を乗せて出張に行くっていう人が全体の3割くらいいますね。操縦は結構簡単で自動操縦もiPhoneと同じような感じでアイコンを押して目的地の空港を選んで高度や上昇率なんかを設定すれば、あとは自動でそこまで行けます。

堀江 僕はもう10年以内にオートパイロットの時代が来ると思ってるんですけど、自動車よりも航空機の方が断然早く来るでしょうね。今でも離着陸以外はほとんどオートパイロットで飛んでるわけだし。

後編に続く

 

取材:岡 ゆづは(NewsPicks記者)
写真撮影:遠藤素子