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ホリエモンWITH エンタテイメントとVRの融合を探求する。エンタテイメントシステム第一人者、神奈川工科大学准教授・白井暁彦 その3

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白井暁彦が語る「エンタテイメントで絶対に守るべきルール」とは

白井 最近のビットコインの話どうなんですか。情報工学の世界ではシステムトレードとかも研究対象で、個人的に興味深く観察しているのですが、コンピューターの性能がどんどん上がっていくと結局「さやとり」ばっかり起きるんじゃないかと。

堀江 確かに株式市場とか為替市場はもう完全にそうなってますね。コロケーションってシステムをその証券取引所のデータセンターに置くみたいなサービスがあって、そこでミリセカンド単位の競争が繰り広げられてますし。で、値幅制限ないとそれでスコーンと落ちちゃったり。

白井 それこそあまり表にならないだろう話でしょうけど、例えば「流通総額が少ないマイナー株」の場合、とても賢い取引プログラムで全部奪ってくようなアルゴリズムを書いたら、最終的には全部の株がコンピューター側の方に持ってかれちゃうんじゃないのって銘柄がちらほら見えるんですよね。コロケーションしてるしてないかにかかわらず。

堀江 資金力があればできるでしょうね。

白井 できるだけ安く買って高く売りますはまだいい方で、アルゴリズムによっては気が付けばもう自由取引じゃなくなってるようなものも多々あるんじゃないのかな……なんて。

堀江 ただ、値段を故意に吊り上げるとかそういうような取引って言うのは市場操縦ってことで違法行為になっちゃいますけどね。

白井 じゃあ賢いアルゴリズムを研究して、市場に手を加えるのも最近だとちょっとヤバい感じなんですか。風説の流布なんかよりよっぽどダメージ大きいですよね。きっと。

堀江 市場操縦って言われちゃう可能性が高いです。そういうプログラムを書くことはよくないかもしれないですね。

白井 ビットコインなんかもマウントゴックスが最近破綻したじゃないですか。一般の人にbitcoinの仕組みを知らしめるインパクトがある、面白いことになってるなって。こういった仮想通貨はどう考えますか?

堀江 あれは現実通貨とそのインターフェイスに問題があるんじゃないかなと。ビットコインの1つの弱点というか、欠点はハードディスクの中に実態がある点なんですよ。自分のビットコインの口座やウォレットの秘密鍵を全部マウントゴックスに預けてる。その構造自体ちょっと変だよねって。そもそも、僕は現実通貨とビットコインを交換するっていうこと自体がどうなのかなって考えるんですけど。

白井 たしかにそうですよね。ちょっとこれ僕の領域の話と被るんですけれど、「エンタテイメントシステム」にも考える上で絶対に守らなきゃいけないルールっていうのがあるんですよ。

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堀江 それはどういうルールで?

白井 まず、人々がエンタテイメントとして理解するためには、「いつでもやめられる自由な活動でないといけない」というのが一つ。そして、「その日常と非連続で隔離されている必要がある」ということですね。止めたいと思っても止められないみたいなのは、「ゲーム」の体を成してるけど「遊び」じゃないんですよ。また、テーマパークに遊びに行くならゲートがありますよね。公園にも柵みたいなのありますが、「ゲートをくぐると遊びだ」って、境界がはっきりしている必要があるんです。そして、3番目が「非生産的活動」って呼んでるんですが「現実世界に富を生まないこと」ですね。富を生むってわかった瞬間に、仕事をやめて毎朝パチンコ店に並びに行ってしまう。作業となってしまいその繰り返しになる。さらにゲームが「虚構と分かる」って要素です。写実でもいいけどプレイヤーは「これはゲームだ」って分からないといけない。よく「青少年がリアルなFPSやってるといつかキレて人殺す」みたいな話がされますけど、あれこそが乱暴な話で、本人が「現実と区別がついてるかついてないか」っていうのが重要なポイントなんです。

堀江 うんうん。

白井 あとは「ルール」が途中で変わるとこれは遊びじゃなくなっちゃう。そして、いつやめられるか、きちんと終わりが見える必要がある。最後に「先が見えない事」。これらが全部成立してないと基本的には遊びでもないし、エンタテイメントシステムとしては似てるけど違うんですね。例えば「リハビリテイメント」って言葉を使う人もいますけど、リハビリが目的だったらそれは遊びじゃないし、英語学習が目的になってるならそれも遊びじゃない。それを「ゲームっぽいシステム」を使って作ってるだけなんです。マウントゴックスみたいな仮想通貨を扱う金融機関は、バーチャルでカジュアルだけど虚構ではないし、現金で現実に利益を得られるものは遊びではなくて、趣味なり博打なり投機なり投資であることがわかっている必要がありますね。

堀江 そうするとリアルマネートレードみたいなものもエンタテイメントなんですか?

白井 私の「エンタテイメントシステムの定義」は、「人々の娯楽に作用するために設計されたコンピュータ・システム」なので範疇にはありますが、現実に利益を得てしまうと、「遊び」は成立せず、作業もしくは労働として整理されることになります。

堀江 「ゲーミフィケイション」っていうのはどうなんですか。例えばオキュラス・リフトと、オムニを使ってダイエットとかのために走るって作業。ああいうのもエンタテイメントじゃない?

白井 体を動かす遊びは「センソリ・モータープレイ(sensory motor play)」って呼ばれていまして、「体を動かす行為自体が楽しい」っていう基本的な遊びです。これを気付かせてあげる設計はあると思いますね。

堀江 なるほど。

白井 自分がマンガの主人公になれる学生作品「マンガジェネレーター」もセンソリ・モータープレイをうまく学生が使った設計で。ストーリーの中で「こういう格好しなきゃ」みたいなシチュエーションになると「ふだん自分がしない格好」をするわけですね。頭で描いているけど普段しない格好であればあるほど楽しくなる。実はそれも仕掛けなんですが「文化とか言語とか関係なく楽しさを生み出せる」というマンガ没入型エンタテイメントVRシステムになっていますね。

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堀江 これアプリとかできそうですね。

白井 スマホアプリにする事も可能でしょうけど、「ストーリーの中に落とし込んでいく」っていう設計と、技術的に難しいのは「プレイしている人の姿勢を判断する」っていう部分がちょっとスマートフォンだとやりづらいんですね。やりづらいっていうだけですけど。

堀江 グーグルの「タンゴ」(スマートフォンとVRを融合させた新しいAIプロジェクト)とか、それですよね。

白井 まさにおっしゃるとおり。

堀江 ああいうのとか使うと?

白井 出来ると思います。タンゴのプロジェクトリーダーであるジョニー・リーって、ああいう世界を作りたいと思って長年やってるコンピュータービジョンとかの研究者なんですよ。学生時代につくったWiiリモコンの動画が有名です。ウチの技術では、多人数でゲームをやってる時、「飽きてる人」をコンピューターが理解して、ターンを回してあげられたりする技術に使えるでしょうね。マンガジェネレーターの裏側の研究は「人間が感じることをどうコンピューターが理解するか」って技術なんですよ。裏側は。

堀江 でもスマートフォンベースで作っていくべきですよね。

白井 実はスマートフォンでもそういう技術を研究しています。「ワラエル(Wara-L)」って言うんコードネームですけど。例えば、人がニコニコ動画みたいなのを見て「ププ」って笑う時には無意識に体が動くんですね。それを判断する技術です。

堀江 そんなのあるんですね。

白井 今のスマートフォンの加速度センサーって16ビットとか持ってるんですよ。どれくらいかというと、1円玉の16分の1のものが動いても取れるくらい。今までだったら「www」とか押してたものを、「面白い動画を見たときに笑う」という微妙で無意識な体の動きを自動で全部記録できると。そのタイミングを分類していくって技術なんですよ。

堀江 これニコニコ動画か、ツイキャスビューアーに仕込みたいですね。

白井 ツイキャス面白いですね。ぜひコラボしたいところです。