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ホリエモンが聞く、中村修二教授の「ゼロ」と今。その1

堀江貴文 中村修二 ホリエモンWITH

ホリエモンこと堀江貴文が、テクノロジーの未来を聞き出す。

青色ダイオードを世に送り出した中村修二氏と、堀江貴文。「研究者」と「起業家」、別々の道を歩んできた2人に共通するキーワードは「テクノロジー」と「ベンチャー」。2人が見た日本のテクノロジーベンチャーの問題点とその秘めた想いとは。

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LEDとの出会い、中村修二の原点。

堀江貴文(以下堀江) 早速ですが、中村修二教授は、日亜化学工業という化学会社にいらしたんですよね。教授がいらした頃は、どんな感じの会社だったんですか?

中村修二(以下中村) 徳島県阿南市で、蛍光体という粉を作るメーカーでした。 蛍光体は、蛍光灯やカラーテレビのブラウン管などに使うものです。

堀江 蛍光体ってどうやって作るんですか?

中村 化学反応で作るんです。かっこいいでしょ(笑)化学反応で白い粉ができて、それを沈殿させて、乾燥して焼けばできるんです。それが蛍光体です。

堀江 原料は?

中村 原料は、例えば酸化物の粉を作る。それに不純物を入れて光らせる。不純物は希土類です。ユーロピウム(希土類元素のひとつ)とか。

堀江 希土類って何で光るんですか?

中村 原子核の周りを電子が回ってるんですけど、その電子が電子線で励起(移動)して落ちる。その落ちる光が、赤や青、緑になるという感じですね。

堀江 中村修二教授は、日亜化学工業では最初からLEDの研究をされてたんですか?

中村 いいえ。開発課にいたんです。創業者が蛍光体もそのうち売れなくなるだろうって言うんで開発課があったのです。最初から私は開発課所属にになり、赤色LEDの材料に関係する開発を私がやるようになり、そのうち、赤色LEDそのものもやるようになり、10年くらいやってました。その後、今の窒化ガリウムでできる青の研究をするようになりました。

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堀江 青って、基板に成長させるのが難しかったんですよね?

中村 よく知ってますね。当時はセレン化亜鉛がメインだったんですが……。

堀江 セレン化亜鉛だと光量があまり出なかったんですか?

中村 光量は出るんですけど、セレン化亜鉛っていうのは不安定な材料なので、LEDを作ると非常に寿命が短かったんです。

堀江 で、窒化ガリウムだと寿命が長そうだみたいな。

中村 窒化ガリウムは共有結合に近く、すごく安定な材料なんですよ。周期表でII-VI族のセレン化亜鉛はイオン結合に近く、水の中に入れたら溶けてしまうような、非常に不安定なんです。だからセレン化亜鉛は水分に弱い。。光るんですけれど、非常に弱い。窒化ガリウムはIII-V族で族で、周期表の真ん中に近く、共有結合近くなるんです。しかも窒素結合はさらに強い。

堀江 だから窒化ガリウムで……。

中村 III-V族-というのは非常に安定なんですが、窒化物というのはさらに安定しているんです。ところが、当時II-VI族のセレン化亜鉛でみんなが注目していたのは、イオン性とかそういうのじゃなくて、結晶欠陥がいかに少ないかということ。セレン化亜鉛というのは結晶欠陥が非常に少なく、1平方センチ当たり10の3乗個程度のものができるという話だったんです。それが窒化ガリウムであれば10の9乗個くらい。6桁の違いがあるんです。当時、LEDとかレーザーダイオードっていうのは、結晶欠陥が10の3乗個以下じゃないとできないっていうのが常識だったんです。それを、10の9乗個もあるような窒化ガリウムで、LEDやレーザーを目指すっていうのは非常識なんです。しかも、よく光って、寿命が持つというのを作るというのは……。

堀江 それを減らしていく作業をやったんですか?

中村 いや、減らさずに。

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堀江 その状況でLEDをやってみたら、よく光って、しかも寿命も長かったと(笑)。

中村 物理とかあまり知らないど田舎の会社で、当時は私もそんなに専門知識を知らなかった。全部独自でやっていて、とても常識的ではなかった。

堀江 常識はあまり知らなかった?

中村 そう。結晶欠陥が多くて光らないとかいうのもね。

堀江 結晶欠陥とは?

中村 結晶というのは原子が規則的に並んでいるんですが、それが並んでない。並んでない部分は光らないし、熱が出て寿命が縮まるんですよ。

堀江 結局、原理はどうだったんですか? 結晶欠陥があっても光って、寿命が長いっていうのは、理論的にはどうなんですか?

中村 わからないんです(笑)。 仮説はあるんですけど……100%はまだわかっていない。

堀江 仮説というのは?

中村 仕組みとしては、電子と正孔が結合して光るんですが、結晶に欠陥があれば欠陥を通じて再結合してしまうので光が出なくなるんです。発光層には、インジウムガリウム窒素という結晶を使用するですけれど、今言われているのは、インジウムガリウム窒素の結晶中のインジウムの組成不均一によって電子と正孔は欠陥のところには行かないようになっている、と。

堀江 それはインジウムが入ってるからですか?

中村 欠陥のところにはインジウムが少ししかなくって、光るところにはインジウムがいっぱいある。「インジウムがたくさんあるところは、エネルギーが低く電子と正孔はそこで放射再結合する」というのが仮説です。けど、まだ、はっきりわかんないです(笑)。

堀江 すごいですね、よくわかんないところで動いているっていうのが。世の中ってそういうこと多いですよね。

中村 物理の説明って、あとからついてくるものなんですよ。最初に発見やモノ作りがあって、あとで適当に屁理屈をつけて理論をつける。それがほとんどです。理論が最初にあって、何かモノができるっていうのは、ゼロじゃないですけど稀です。大体は発見が先で理論付けはあとですね(笑)。

 

堀江貴文 WITH 中村修二