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書評:勝率ゼロへの挑戦

カテゴリー:
漫画・書評, 裁判関連
勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか
八田 隆
光文社
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クレディ・スイス証券元部長の八田隆氏と国税局・検察との死闘の物語。途中外資系金融機関でのキャリアの部分の記述が冗長ではあるのだが、突然自宅が強制捜査され検察が村木厚子さんの郵便不正事件(冤罪)で大混乱した挙句の引き伸ばしで5年以上被告人の立場から逃れられずも脱税犯として社会的にも抹殺されながら、明るくポジティブにソーシャルメディアも活用して一審・二審ともに無罪を勝ち取るまでのドキュメンタリー。

丁度私が収監される直前くらいに告発されて、著者自身から国税局の脱税摘発の実態を描いた本とともに手紙を頂いた時は実はあまり関心が無かったのだが、その後収監されてから彼の活動を見ていて、共感をするようになった。なぜなら彼と同じように告発され無念の有罪判決を受けた知人を沢山知っているからだ。

本書に書いてあるとおり、茂木健一郎さん(本書内の江川紹子さんのあとがきではMさんとしている)の税務無申告については彼のパブリックイメージもあり、彼の「忙しかった」という説明を国税局は丸呑みしたものの、外資系勤務の高額納税者は強欲な悪者、非国民であるという、検察・国税のステレオタイプな正義感により強制捜査・告発され故意でない無申告を有罪にさせられている事を私は知っている。彼らのほとんどはサラリーマンであり、ストックオプション税制に詳しくなく会社によっては説明もされておらず、過失による無申告だったにも関わらず犯罪者とされてしまったのである。

そんな国家の横暴に彼は単身で立ち向かった。正直に告白しよう。当初、私は国税・検察に敵わないと思っていたが、彼の頑張りはあの保守的な刑事裁判所を動かすに至った。これは画期的である。拍手喝采を送りたいし、私は難しいとは思っているが国家賠償請求訴訟にも勝利して、ぶんどったお金で刑事司法を変える取り組みを行って欲しい。これは期せずして刑事司法に関わった私からの要望である。