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技術の継承とは

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私たちは細々と小型ロケットの開発作業をしている。その現場に某大手重工の部長が見学に来てくれた。そこで彼が発した言葉。ウチは新規のロケットエンジン開発をやっていないから若手に新規開発の機会を作ってやりたいと。

技術の継承作業とは実は厄介な問題だ。新規開発された既存の技術をメンテナンスしているだけでは、継承は不可能だ。なぜなら、技術開発とは試行錯誤の繰り返しであり、ネジ一本取ったってノウハウの塊だったりする。そのノウハウは文書化してマニュアルに載っていないものばかりだ。新規開発した当の本人達が記録に残さないからだ。最先端技術はそのノウハウの塊である。それは新しい技術開発を通じて若手に伝承されていく類いのものである。

例えば日本の新規ロケットエンジン開発は1994年のLE-7ロケットエンジン搭載H-II成功、1997年のM-Vロケット成功以来行われていない。もちろんマイナーチェンジはあるのだが。。。研究開発自体はさらに10年くらい前から行われるのが通例の為、既に20年以上が過ぎており最初新入社員だった技術者も初老に差し掛かる頃である。若手はマニュアルに従いメンテナンスや管理を行うだけである。先輩社員達が退職してしまえば技術を習得できなくなるだろう。

福島第一原子力発電所で起きた事もそれに類似する。建設されたのは40年も前であり、その具体的なこまいかい部分の仕組みまで理解して対処できた技術者がどれだけいただろうか?耐用年数を延長してまでも古い原発を使い続けることの危険性はここにある。危機に対応できないのだ。具体的な部品がどこに使われているかなど完全に把握していないと危機時にどこをどうすればいいのだととっさには思い付かないのである。

事故を受けて日本国内では原発廃止論が盛り上がっている。廃炉にすること自体の決定は簡単だが、廃炉後のメンテナンスや使用済み核燃料の処理など問題は山積みだ。そこでまた今回の津波被害のような大事故が起きた時に十分な技術者を確保できるのか不安である。終わり行く技術を志す奇特な若者は少ない。チェルノブイリ原発後原子力工学科の人気はガタ落ちだった。今回はそれ以上に人気が無くなるだろう。そんな中どうやって技術者を確保するのだろうか?海外からつれてくるなんて楽観論もあるようだが、そうなれば安全保障上の問題も浮上するだろう。

数十年後、老技術者が細々とメンテナンスする原子力発電所に事故が発生したら?と思うとそっちのほうがぞっとする事態だ。むしろ前向きに今回の事故を教訓として小型の安全性の高い原発の整備や津波対策など講じて原子力発電所とつき合って行くほうが技術者確保の観点からは安全性が高まると感じている。

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