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ホリエモンWITH 「養殖魚の価値を高めたい!」養殖魚ビジネスの現実と未来とは?近畿大学水産研究所 前編

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近畿大学水産研究所 http://www.flku.jp
アンテナショップ http://kindaifish.com
アーマリン近大 http://www.a-marine.co.jp

養殖クロマグロは、1kg3000円以下で売ると採算が取れない。

堀江貴文(以下、堀江) 今日は完全養殖の“近大マグロ”について、いろいろお聞きしたいので、よろしくお願いします。大阪・梅田のグランフロントに近大マグロを食べさせてくれるお店がありますよね。僕、行きましたよ。できたばっかりくらいの時に……。超満員でした。

岡田貴彦<近畿大学水産養殖種苗センター大島事業場 場長>(以下、岡田) 『近畿大学水産研究所』という名前の店ですよね。開店したのは昨年(2013年)の4月末ですけど、できたばかりの頃だと、本当にてんてこ舞いしていた時ですよ。担当者の試算によると、週に2本くらいマグロがあれば十分だということだったんですが、オープンしたら1日に2本ずつ使っていて、このままいくとマグロが足らなくなるって大騒ぎになったんです。それで鹿児島県の奄美大島から、親のマグロを持って来たりしていたんですよ。

堀江 親のほうも完全養殖のやつですか?

岡田 完全養殖したものと、天然から育てたものと2種類あります。今、串本からは完全養殖の3代目が世の中に出回っています。

堀江 すごいですね。今、マグロって30kgぐらいで出荷されているんですか?

岡田 最低で30kgくらいですかね。でも「近大マグロ」は40kg以上で出荷したいと思っています。40kg以上にならないとトロの厚みが出ないんですよ。さらに、美しくおいしい状態にするとなると60kg以上です。60kg以上だと、細胞が強いというか、お店のショーケースの中に入れるためにブロックに切っても、身がしっかりと張っているんです

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堀江 30kgになるのに、だいたい何年ぐらいかかるんですか?

岡田 30kgだったら、2年から2年半くらいですね。

堀江 60kgだと?

岡田 60kgだと、そこから1年ぐらいでなります。

堀江 倍増するんですね。

岡田 奄美大島だと3年で70kgにはなりますで、ここ(和歌山県・近畿大学水産研究所)よりも水温が高いので、成長が早いんです。奄美だと4年で100kgになります。

堀江 エサ代はどれくらいかかるんですか?

岡田 そうですねえ。マグロって、1kg太らせようと思ったら、12、13kgのエサを食べさせないといけないんですよ。ほとんどが運動エネルギーに使われてしまうので、魚の中では一番効率が悪いんですよ。だから、本来は養殖向きの魚ではないと言われているんです。で、40kgのマグロを育てようとしたら、その12倍の500kgのエサを食べさせないといけないですよね。エサ代は今、高くなっていて、1kgあたり100円はしますから、40 kgのマグロ1匹あたり5万円くらいですかね。

堀江 それって、単にエサ代だけで、人件費含まずですよね。

岡田 そうですね。経費でいえば、エサ代がまだ60〜70円の頃に試算したら1kgあたり2500円ぐらいかかっていましたね。それに台風被害などのリスクを考えると、1kgあたり3000円を割るとクロマグロの養殖事業は難しいんじゃないですかね。

堀江 1kg3000円以下だとクロマグロは採算がとれないと。

岡田 台風の被害を受けて全滅ということが過去に4、5回あるので。その時は朝から晩まで死んだマグロを取り上げて……。

堀江 きついですね……。それは廃棄するんですか?

岡田 廃棄ですね。使えそうなものは市場で使っていただくんですけど、ほとんどは廃棄になります。奄美のマグロ養殖業者が被害にあうと廃棄する場所がないので、一般家庭のゴミ処分を止めていただいて焼却をお願いしました。それでも、全部を処分するのに1週間ぐらいはかかっていたみたいです。

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堀江 養殖マグロは今、1kgあたりいくらぐらいで売られているんですか?

岡田 平均したら3000円くらいですね。

堀江 それは、30kgも40kgも60kgも変わらないんですか?

岡田 いや、やっぱり大きくなればなるほど値段は上がりますね。それでも30kgでだいたい2000円後半、40kgで3000円ぐらい。そこから先は、なかなか値段が上がらないですね。以前は60kgを超えたものは8000円とか、1万円していたんですけど……。

堀江 それは何でですか?

岡田 今は、値段が上がると、その食材を使ってもらえなくなるんです。出荷先って、ほとんどが回転寿司屋さんなんですけど、値段が上がると他の魚に変えちゃうんです。そうなると、養殖業者は出荷ができなくて、エサ代ばかりかかってしまうので、投げ売りしたりするんですね。悪循環です。

堀江 回転寿司屋さんね。

岡田 養殖魚の出荷先は、どうしても回転寿司屋さんが多いですから。今はサーモンが非常に人気があって、原価が安いんですよね。ノルウエーやチリのは200円ぐらいでできるっていいますから。

堀江 一匹ですか?

岡田 1kgあたりです。日本だとマダイは最低でも500円はかかるんですよ。ブリも500円。それに比べてサーモンは、200円でできて、空輸で運んできても300円ですべて納まりますから。

堀江 マグロはどうですか? 天然の輸入ものは?

岡田 メキシコとかオーストラリアからの輸入ものが、これまた安いんです。1kg1800円とかですから。

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「養殖魚って、こんなにおいしんだ!ってわかってもらいたくて、お店を出しました

堀江 アンテナショップを作ったのは、なぜなんですか?

岡田 お店を出そうと考えた時は、マダイやブリの価格がどんどん低迷していって、つぶれる養殖業者さんが多くなっていたんです。私たちの本業は、養殖用の種苗を養殖業者さんに買っていただいて、その収益で研究をするということなので、養殖業者さんが元気でいてくれないと私たちも困ってしまうんです。それで、どうすれば養殖業者さんが元気になるかを考えたんです。

堀江 それで?

岡田 日本って、まだまだ“天然魚信仰”というのがありますよね。「やっぱり、魚は天然ものだ」って。それをなんとか払拭できないかと思ったんです。養殖魚って、天然ものに比べて「安定供給」「安定品質」「安定価格」ができるんですね。だから、小さな店でもいいから養殖魚を食べてもらって、「養殖魚って、こんなにおいしんだ」ってわかってもらったり、「こういうふうにしたらもっと美味しく食べられますよ」というPRを近大がやろうと。

堀江 ほう。

岡田 だから、もともとは近大の魚じゃなくて、近大の稚魚を使って養殖されたタイやブリを仕入れてその店で出そうとか、近大の教員が調理師学校に授業に行っていたので、そこの学生さんたちが考えたメニューを出そうとか考えていたんです。そんな時にちょうどグランフロントができるということで、1号店をオープンしたんです。堀江 その後にできた東京・銀座の店も長蛇の列ですし、すごく儲かってるんじゃないですか?

岡田 いや、儲かってはないんですよ。お客様が求めて来られるのは、やっぱりマグロなんですよね。それで、私たちのクロマグロを使うと丼でも、どうしても2000〜3000円になっちゃうんです。東京や大阪の街中のお店だと、キハダマグロのマグロ丼が1200円くらいで出されていますよね。それに比べると「高いじゃん」って言われる。だから「とにかく安くだせ」ということで、今は儲けというより、トントンであればいいかなと。

堀江 じゃあ、お得なんですね(笑)。

岡田 そうですね。他だともっと高くなっちゃいますね、どうしても。あと、キハダとメバチとビンナガとクロマグロの違いというのが、一般の人にはわかりにくいというのがあって、寿司屋さんでも「キハダマグロ」とか「メバチマグロ」とか書いていないで、ただ「マグロ」と書いてある店が多いですよね。あれをなんとかできないのかなって思うんです。

 

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Photograph=柚木大介  Text/Edit/Transcription=村上隆保