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ホリエモンWITH 「カイコを使って新しい薬や食品を作る」 東大・関水和久の考える“ゲノム創薬の未来”とは?前編1/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 関水和久

関水和久 Kazuhisa Sekimizu
薬学博士・東京大学大学院薬学系研究科教授
1950年生まれ。東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程修了後、九州大学薬学部教授を経て東京大学大学院薬学系研究科教授に。2013年から「ゲノム創薬研究所」顧問となる。2014年、カイコを使って新しい抗生物質を発見。

カイコはマウスより安価で数多く用意できる

堀江貴文(以下、堀江) 関水先生はカイコ幼虫を医学・薬学の実験材料にすることを提案・研究しているんですよね。

関水和久(以下、関水) そうです。一般的に医学や薬学の実験にはマウスやイヌ、サルを使いますよね。その代わりにカイコが使えるんじゃないかと思っているんです。カイコを使えばコストが低くなりますし、動物愛護の精神からもネズミを殺すのに比べて良心の呵責が少なく感じます。

堀江 そうですね。

関水 カイコは、養蚕業のために人間が5000年かけて家畜化した昆虫です。そのため、日本にはたくさんのカイコの研究者がいます。しかし、みなさん“どうやって良い絹を取るか”ということだけに研究が集中してしまっているんです。

堀江 それは、この間、農業生物資源研究所に行って伺ってきました。まさに“良い絹を作るにはどうしたらいいか”に研究が集中していて、“カイコがどういうふうに生きているか”ということに関しては、ほとんど知られていないんですよね(ホリエモンWITHの「『遺伝子組み換えでクモ糸をシルクに混ぜ、強度を増した』 生物研が目指す養蚕業の未来とは?」参照http://horiemon.com/talk/17809/)。

関水 そうですね。だけれども、僕は10年くらい前にカイコが医薬品とか食品の開発に利用できるんじゃないかと考えたんです。カイコを使って、病原菌の病原性を見ようとした人は、これまで誰もいません。野口英世も北里柴三郎も思いつかなかったんです(笑)。

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(編集部注:「病原性」とは、人がある病原菌に感染した時、病気が発症するかしないかという性質を表したもの。感染しただけでは病気が発症しない病原菌もある)

堀江 たしかに(笑)。

関水 それから、病原性を見るだけじゃなく、新しい抗生物質を発見することもできるんです。実際に私たちはカイコを使って新しい抗生物質を発見し、ニュースにもなったんですよ。

(編集部注:2014年11月21日の「日本経済新聞」(夕刊)に『ゲノム創薬研と東大、新たな抗生物質発見、耐性菌、治療に道。』という見出しで記事が掲載されている)

堀江 へー。知らなかったです。でも、なんでカイコなんですか? カイコ以外の昆虫ではできないんですか?

関水 できますよ。アゲハチョウでも、モンシロチョウでも薬の効き目は調べられますよ。でも、カイコじゃないとダメなことがあるんです。

堀江 それは何ですか?

関水 カイコなら、たとえば100万頭用意することができる。

堀江 ああ、なるほど。

関水 私たちは、毎週カイコを2000頭ずつ買っているんですが、アゲハチョウやモンシロチョウを毎週2000頭ずつ買うことは難しいんですよ。でも、カイコは養蚕の技術があるから、それができる。カイコは2000頭の卵があったら、2000頭が幼虫になるんです。しかし、アゲハチョウは多くが死んでしまいます。

堀江 それにカイコはほとんど動かないですもんね。

関水 そうなんです。飼いならされてるから逃げないんです。

堀江 あと、これは実験用のカイコですよね。生物研に行って聞いたから知ってるんですけど、実験用のカイコは桑の葉を食べるのではなく、カイコ用の飼料を食べているんですよね。

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関水 そうです、そうです。

堀江 関水先生は、カイコを使う前はふつうにマウスとかで実験してたんですか?

関水 はい。私はマウスを使ってがんの研究をしていたんです。それで、あまり自慢にはなりませんけれど、多いときは1カ月に1000匹くらいのマウスを使っていました。

堀江 へー。

関水 マウスって一匹、いくらくらいするか知ってますか?

堀江 けっこう高いんですよね?

関水 1000円近くするんです。ですから1000匹のマウスを使えば、月に100万円かかりますよね。

堀江 バカにならない額ですね。

関水 そうなんです。だから昆虫を使ってみようと思ったんです。