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ホリエモンWITH 「カイコを使って新しい薬や食品を作る」 東大・関水和久の考える“ゲノム創薬の未来”とは?後編1/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 関水和久

新しい薬を発見するのは1万分の1以下の確立

関水 モデル動物がどうして必要なのかというと、ほとんどの物質は、体の中に入っても薬としての治療効果が出ないんです。試験管の中で病原菌の増殖を抑える物質があったとしても、その99%はまったく薬にならない。どうしてだかわかりますか?

堀江 体の中で代謝されちゃうからですか?

関水 そう。薬を飲んでも腸管などから吸収されない。血液の中に入っても代謝されちゃう。排出されちゃうんですね。そのため、大部分の抗菌剤は薬にならない。たとえば1万種類の化合物を集めて、試験管の中で抗菌活性のあるものが数パーセントあったとしますよね。

堀江 はい。

関水 その中から治療効果があるものを探すわけですが、それがものすごく少ない。万が一っていいますけど……。

堀江 万が一、1万分の1くらいの確率なんですか?

関水 もっと少ない。それで、その1万分の1よりもっと少ない化合物の中から治療効果があるかどうかを調べるために高等動物を使っているわけです。だけど、私たちはそれをカイコでやろうということなんです。

堀江 でも、魚とかではダメなんですか?

関水 魚でもできますよ。ただし、注射をしようとすると魚はバタバタ跳ねるから大変ですよね。でも、カイコはとてもおとなしいですから。

堀江 それはそうですね。

関水 それに、薬の体内動態という観点からするとカイコと人間、ほ乳類はあんまり変わりはないんです。先ほども言いましたが、カイコに黄色ブドウ球菌を注射すると真っ黒になって死んでしまいます。でも、その前に抗生物質を注射すると治療できるんです。これは「感染」と「治療」という医学・薬学の基本的なシステムが成立していることを表しています。

ホリエモンWITH 堀江貴文 関水和久

堀江 へー。

関水 ですから、ほ乳類を使わなくてもカイコで抗生物質が効くかどうかがわかる。それで私はカイコを使って新しい抗生物質を発見しようと思ったんです。新しい抗生物質を発見するにあたって、私たちは実際に日本中から土の中などにいる細菌1万5000検体から、抗生物質の候補を取ってきました。そして、カイコを使って治療効果があるかどうかを調べました。そうしたら、1万5000検体の中のたったひとつだけ黄色ブドウ球菌に効果のあるものがあったんです。それが“ライソシン”です。

堀江 すごいなあ。新しい抗生物質を発見するプロセスが、ものすごく高速化・低価格化したということですね。

関水 そうです。

堀江 もし、そのライソシンが本当に人間に効くとしたら、非常に画期的なことじゃないですか。

関水 今のところマウスには効くんです。だから、当然、人間にも効くと思いますが、それには臨床治験をやってもらわなくてはならないんです。

堀江 これ、臨床治験が成功したら大変なことになりません?

関水 そうですね。ライソシンはバンコマイシンに対して耐性な黄色ブドウ球菌が出てきた時に人類を救うことになると思っています。

(編集部注:「バンコマイシン」とは、抗生物質が効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌などに効果がある抗生物質)

堀江 これって、エボラ出血熱の特効薬みたいなものですよね?

関水 まあ、そうですね。でも臨床治験を経て、人間の治療に有効であるという立証が必要なんです。それには大変なお金がかかるんです。ですから、日本ではバイオベンチャーは新しい抗生物質を作り出していないと思います。

堀江 日本で抗生物質の研究・開発パイプラインを持っている製薬会社ってどれくらいあるんですか?

関水 私の認識ではゼロです。ないですね。今、日本の製薬会社は抗生物質をやってないと思います。

堀江 「やってない」というのは、どういうことなんですか?

関水 欧米に頼っている。日本の会社は勝負から降りているんです。

堀江 そうなんですか。