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「深海生物のメカニズムでイノベーションを起こす」 海洋研究開発機構・出口茂が考える 極限環境を使った最新技術とは?後編1/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 出口茂

<前編はコチラ>

バイオミメティクスから、続々と最新技術が生まれている

堀江貴文(以下、堀江) そうした研究を実際に、どのように応用しているんですか?

出口茂(以下、出口) 今のところ、一番応用されているのは空気や水の抵抗に関することですね。例えば、陸上を25メートル歩くのと、プールの中を25メートル歩くのでは、プールのほうが圧倒的に大変ですよね。水の抵抗がありますから。水の中で生きていこうとすると、この水の抵抗をいかに減らすかということが重要になってくるんです。有名なのはサメ肌です。

堀江 ああ、聞いたことがあります。

出口 有名なのでご存知かと思うんですけど、サメの身体は水の抵抗が少ない流線型です。そして、ただ流線型なだけではなく、サメの肌はリブレット(微細な凹凸が周期的にある)構造になっているんです。リブレットがあると水の抵抗を受けやすいように思えますが、サメ肌のリブレット構造を数値シミュレーションしてみると水の抵抗は減っているんです。そして、その構造を真似して繊維にリブレットを編みこんだものが、有名な高速水着のレーザーレーサーですね。

堀江 はいはい。

出口 また、ルフトハンザ航空は、こうしたサメ肌の構造を飛行機の機体の表面に貼って空気抵抗を少なくし、燃費がどれくらい良くなるかということを今、テストしています。

堀江 へー。

出口 それから、バイオニックカーというのがあるんですけど、魚ってすべてがマグロみたいな流線型をしているわけじゃなくって、なかにはハコフグのような形のものもいますよね。

ホリエモンWITH 堀江貴文 出口茂

堀江 いますね。

出口 ハコフグのような形って、マグロに比べると明らかに水の抵抗が大きですよね。でも、ただ抵抗が大きいだけなら今まで生き残ってこなかったと思うんです。こうしたズングリムックリした形にも、それなりに水の抵抗を減らす仕組みがあるはずなんです。

堀江 なるほど。

出口 そこで、メルセデスベンツの技術者がどんな仕組みがあるのかを解析して、ハコフグに学んで設計したのがバイオニックカーです。

堀江 これは初めてみました。

出口 空気抵抗を下げることだけを考えて車を設計すると、たぶんF1みたいな形になると思うんですが、それだと車の中に何人も人を乗せることはできませんよね。

堀江 まあ、そうですね。

出口 でも、ハコフグ型だとある程度の人数を乗せることができる。空気抵抗を下げながらも室内の体積がそれなりに確保されているわけですから。

堀江 これはトレードオフですね。

出口 トレードオフです。

堀江 最適解に近いということですよね。

出口 そうです。でも、その最適解を人間がイチから考えるというのは、あまりにも大変な作業です。ところが生き物を見てみると、その最適解を求めるという作業を進化の過程でずっとやってきた。

ホリエモンWITH 堀江貴文 出口茂

堀江 膨大な試行錯誤を繰り返しながら……。

出口 だから、今、生き残っている生き物の中には、最適解がすでに出ているはずなんです。

堀江 なるほどね。

出口 このように生き物から学ぶことを「バイオミメティクス(生物模倣)」というんですが、アメリカでは10年後にバイオミメティクスの分野だけで、数十兆円規模の国内総生産と約160万人の雇用を生み出すと予測されています。

堀江 そうか……。

出口 また、バイオミメティクスで面白いのは、こうした生物の知識を持っているのは博物館とか動物園だということなんです。ですから、これからは博物館や動物園の人たちがバイオミメティクスのメインプレイヤーになりつつあるんです。

堀江 なるほどね。

出口 バイオメティクスのひとつに「ゴミムシダマシ」という甲虫の技術があります。アフリカのナミブ砂漠は、場所によっては年間降水量が数十ミリで、ほとんど雨が降りません。では、こうした環境でゴミムシダマシは、どうやって水を得ているのか。ナミブ砂漠は海に近いので、たまに霧が発生します。そこで、霧が出てくるとゴミムシダマシは頭を下げて背中を立てるんですよ。すると背中に霧の水滴がつきますよね。その水滴が徐々に大きくなって、頭に落ちてくる水を飲むんです。

堀江 へー。

出口 そこで、ゴミムシダマシの背中を詳しく調べてみると、効率良く水滴をくっつけて、それを大きくするメカニズムがちゃんとあるんです。そして、ボストンのベンチャー企業が、その技術を使って製品化しようとしているんです。

堀江 サバイバルグッズね。アメリカとかは、こういう技術を軍とかが使いそうですね。

出口 そうですね。

堀江 バイオミメティクスって、ミツバチの巣のようなハニカム構造とかも有名で、結構、昔からあるじゃないですか。でも、深海の生物のバイオミメティクスは、最近始まった感じなんですか。

出口 そうですね。例えば昆虫など陸上にいる生物は研究しやすいですよね。しかし、深海になると簡単には行けないので深海の生物のバイオミメティクスってあんまりないんですよ。だから、研究はこれからという感じですね。

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