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「ネアンデルタール人の臓器も再現可能」 横浜市立大学准教授・武部貴則が語る 「再生医療」と「広告医療」の最先端とは? 後編2/2

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これからの医者は広告プランナー的な感覚を持つべき

堀江 「臓器の種」を作るプロセスはわかりました。移植は実際にはどのような方法で行なうんですか?

武部 基本的には注射を想定しています。肝臓に流れていく血管に「臓器の種」を注射することで、患者さんの肝臓内に正常な肝臓を創り出す方法です。

堀江 もともとの肝臓に生着させるんですか?

武部 基本的にはそうなんですが、この方法は肝臓病の状態によると思います。お子さんで遺伝子異常などによって特定の酵素の機能欠陥があるような場合だと、その機能以外は正常なので肝臓自体はきれいなんです。そういう場合は、生着する環境としてはいい。それに対して、肝炎や肝硬変などのいわゆる「肝臓自体が問題を起こしている状態」は生着しづらい。

堀江 そういう場合は、別の場所で?

武部 はい。別の場所に入れることが必要ですね。一番現実的な場所として考えられるのが腸間膜という皮膜状の組織です。ここは血管が豊富なので、生着しやすい。あとは皮下のある程度血流が豊富なところにまとめて入れる。

堀江 脾臓とかはどうですか?

武部 脾臓はあり得ます。脾臓でできたという知見もいくつかありますし、問題が生じた時に取り出せるメリットもあるので良いと思います。アメリカではリンパ節でやっているところもあります。

堀江 リンパ節でやって、大きく育つんですか?

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武部 かなり大きくなるようです。

堀江 増えるんですか?

武部 はい。再生刺激(身体の失われた部分を再生する信号)は全身を回っているので、もとの肝臓に再生能力がないような仕掛けをしておくと、代わりに移植した側の正常細胞が増えていくということがあります。

堀江 すごいなあ。

武部 言い換えると、病気の人には移植細胞の生着優位性があって、もとの肝臓の機能が失われている場合、新しく入れた正常な細胞の方に増殖のアドバンテージがあるんです。「グロウスアドバンテージ」っていうんですが、もとの機能を補う形で新しい細胞が増えて、必要量になったらそこで止まるというメカニズムが働きます。

堀江 必要量まで増えたらそこで止まるのがいいですね。

武部 それが身体のホメオスターシス(恒常性)ですね。僕がこれから研究を進めたいのは、個別の臓器の再生からさらに進んで、「組織と組織、臓器と臓器の連結」を計画的に再現するということです。

堀江 組織の連結というと?

武部 例えば肝臓は単体で存在しているのではなく、肝臓の中には胆管があり、胆管はすい臓に合流して、そして十二指腸に排泄されるんです。肝臓には、それらの臓器が連結しているわけです。もともとひとつの腸管から分化したものですし、本来はそれらの連続性が担保されないと、肝臓の機能を永らえさせることができません。腎臓はもっとわかりやすくて、腎臓だけでなくて尿管や膀胱などを作ってあげないと尿を作って集めるプロセスは完成しません。腎臓の糸球体(腎臓内の毛細血管の塊)だけを再生しても透析患者さんを救うことはできないんです。だから僕は、器官間の連結を担保するために腸管からの発生初期段階を模倣できるようなプロセスを作りたいんです。それは10年、20年かけてやる大仕事と思っています。

堀江 なるほど。僕が今日お話を聞いていてわかってきたのは、こうした先端的な技術開発をしている人たちがいる一方で、その成果が社会に全然役立っていないということです。

武部 確かにそうですね。

堀江 例えば、胃がんの最大の原因とされるピロリ菌は簡単に除染できることがわかっていて保険適用もされるのに、多くの人は検査すらしない。研究が進んでいろいろわかってきているのに、なんででしょうか?

武部 研究で明らかにされたことでも、その情報を自分たちの未来の健康のために使うということはあまりしないですよね。であるならば、そういう一般の人の視点に立って、実際に活用してもらえるようなアプローチがもっと必要だと思います。

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堀江 そうですよね。

武部 僕が今取り組んでいる「広告医療」というのが、まさにそれなんです。医学的には当たり前のことなのに、なぜか情報がちゃんと発信されていない。これは医者のコミュニケーション不足に起因している部分も多いと思います。だから、これからは医者も広告プランナーみたいな感覚を持つべきなんです。そのために、僕のところでは大手広告会社の人を研究員に加えたりしています。

堀江 あ、そうなんですか。

武部 僕たちとは視点の違う人が入る必要があるんです。実は、そうした流れで最近開発したのは、体型が可視化できるメタボパンツです。

堀江 どんなパンツなんですか?

 

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保