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「新しい体験を創り出す」ヴァーチャルを超えた体験を現実に。代替現実システム(SR)研究者、藤井直敬 その2

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想像していた未来は近くまできている。

藤井 ロボットアームは電極10本くらいでそこそこ動かせるます。今のフレキシブル基板には電極が200個くらいついているので研究が進めばもっと複雑なことができるはずですよ。

堀江 念力でグォ〜って感じでいろいろできたら面白い(笑)モビルスーツとかいけそうですよね。ニュータイプとか生まれそうですよ、本当。

藤井 そうですね、世界と自分が脳で直結しますしね。今サル用のSRを作っているんですが、サルは人間と違って現実か過去だかわからない状態を見ても疑わないですからね。電極で脳の活動全体をモニターして、その情報を元にSRを通じたフィードバックをかけられるから、一種のクローズループですよね。脳と世界が繋がっているっていう。いわゆる攻殻機動隊みたいな世界っていうのはサルのレベルでは原理的にはもう出来てる。

堀江 なるほど。結局研究が繋がってるわけですね。

藤井 もちろん、僕の中では。まわりのヒトからは遊んでるだけだと思われてるかもしれませんが(笑)。

堀江 同じような研究をやられている方ってどれくらいいるんですか?

藤井 BMIに関しては日本では3〜4施設で、VR系に関しては東大や慶応など、かなり多くのところがやってます。純粋なSRはうちだけじゃないかな。

堀江 Googleとかがお金を出したりとかしないんですか?

藤井 SRに?そうですね、まだお金を取りに行ける一歩手前というか、実際の応用の形がようやく出てきたところなので、明確な出口ができてきたらやってみようと思ってるんですけどね。体験プラットフォームだけでなく、「どこにどのような価値が生み出されるのか」というところまで詰めないといけないので。まだ「おもしろいけど、一体何に使うのさ?」っていう疑問にうまく答えられない。今年1年くらいでそこを明確にしていければいいですね。

堀江 そう考えると、想像していた未来は結構近くに来たんじゃないかという感はありますね。こないだも仰ってましたけど、もうちょっと長生きしたくなったみたいな。

藤井 そうそう。今まではあんまり世界に期待してなかったんだけど、最近急におもしろくなってきた。

堀江 よかったですね。眼科医で終わらなくて(笑)

藤井 あれはあれで楽しかったですけどね(笑)

高精細化ではなく、演出から生まれるリアリティ

堀江 ちなみに、SRは今後どんな進化の過程を辿って行くんですか?

藤井 装置自体は小型軽量化、あとはワイヤレス化していくでしょうね。「RICOH THETA」みたいなパノラマカメラがもっと小さくなってiPhoneとかに装備されるようになったら、この技術が誰でも日常的に使えるようになるので、そうなってくれると世界が広がってすごく嬉しいんですけどね。ヘッドマウントディスプレイも初期と比べてかなり明るく綺麗になったんですけど、面白いのは、実は「SRでやりたいことは、640×480の解像度でも十分できる」ってことなんですよ。

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堀江 さっきのSR映像でも、マリオみたいな8ビット絵のフィルターをかけたものでも充分リアリティがありましたもんね。あと、線画のアニメの中に没入する感じのやつも。あれよくできてましたよね。自分の手が線になるヤツ。

藤井 ついつい僕たちは高精細じゃないとリアリティは生まれないって思いがちですけど、スペックなんか本当はどうでも良いんですよね。リアリティは各自のあたまの中にあるから、本人が信じられるおはなしを与えてやるだけで良いんですよ。

だから、お金をかけるべきは技術よりもエンターテイメントの部分、演出の部分。そこをプロのシナリオライターの人とか、プロの役者に参加してもらって、体験のクオリティを上げる事で、かなり面白いものできるんじゃないかと思いますね。たった5分か10分程度のショートストーリーでお腹一杯のこれまでにない体験を提供できるはずですよ。

堀江 作りこみが大事ってことですよね。その代わり、そんなに解像度が無くてもそれなりに楽しめると。

藤井 そう。

堀江 そこと、BMIが繋がっているって面白いですよね。

藤井 僕の中だけですけどね(笑)

堀江 昔から脳のことにはすごい興味があって、お互いの脳が融け合っていくというか、ダイレクトなコミュニケーションっていうのにすごく興味があって「マトリックス」や「マルコビッチの穴」みたいな映画もそういう面で好きだったりするんですけど、現実世界もそういう風になりそうですかね?

藤井 似たような体験は作れるんじゃないかと思います。例えば、SRって主観映像見ているわけじゃないですか。通常、僕の見ている世界と堀江さんが見ている世界は視点が違うから当然違う。それがSRの中では全く同じ視点の映像を同時に見ることができて、同じ体験をすることになるんです。例えば戦争であったり、事故であったり、いろんなことを違った場所から見ると物事が違って見える。当たり前の事ですけど、そういう体験もできるようになります。現在、過去に渡ってずっと体験を共有できますしね。

また、対人関係の問題や国関係の問題って、視点が違うからみんなそれぞれ違ったものを感じて主張するわけじゃないですか。でも、それを相手の視点で見たり、同じ視点で見ると自然に相手の言っていることも理解できるようになるかもしれない。それは、さっき言った「融け合う感じ」とちょっと近いんだと思うんですよ。そういうことも体験を通じてお互いを理解できるようになるってことですね。