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ホリエモンWITH 「米を23%まで磨き、日本一を目指して造った獺祭」桜井博志が語る日本酒純米大吟醸のこだわりとは? その4

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堀江 地ビールも作ってたんですか?

桜井 作ってました。地ビールで失敗したから、今があるんです(笑)。

堀江 で、どんな感じだったんですか、そのネオ日本酒みたいなやつは……。

桜井 なんとも、ヘンチクリンな香りの……。良い酒ではありませんでしたね。

堀江 でも、たとえば東京農業大学とかの醸造科を出て、地元の酒蔵継ぎますとか、そういう人も結構いるわけじゃないですか。それこそ、夏子の酒は大学の醸造科を出た人がアルバイトで入って来てみたいな話じゃないですか。日本酒造りでも、科学的にある程度解明されている部分っていうか、技術として確立されている部分とかってあるわけですよね。

桜井 もちろんです。技術的には、おそらく昭和50年代にはできあがったと思います。あとは、どの技術とどの技術をチョイスしてくっつけるかという選択だと思います。

堀江 だけど、その長年の伝統があって、杜氏制をなかなか変えられないみたいなことがあるわけですか?

桜井 そうですね、酒造りって冬場の仕事なんですよね。杜氏さんって、だいたい兼業で、酒造りに来るのは冬だけです。酒蔵からしたら、一番寒くて冷房効率の良い時に杜氏さんたちに来てもらって、酒を作ってもらう。夏場はいないから人件費は必要ない。杜氏さんにしてみたら冬場に仕事して、夏は自分の家で農業をしてるとか……。

堀江 農閑期にやる仕事だったんですね。

桜井 そうですね。

堀江 そこを革新しちゃったわけですか。

桜井 革新というか、地ビールで失敗して、杜氏さんたちにFA宣言されちゃったので、しょうがないから自分たちで作ろうと。

堀江 ある意味、必要に迫られて……。

桜井 だから当時、「大変だから一緒に頑張るよ」って言ってくれた杜氏さんがいたら、今はなかったですね。いなかったから、そこでイノベーションをすることができたんです。

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(編集部注:旭酒造は杜氏による酒造りを辞め、社員のみによる生産体制に切り替えた。また、蔵内を常時5℃に保つ空調設備を導入し、年間を通して酒造りが行なえるようになった)。

堀江 僕、日本酒の普及率が上がらない一番の理由って、日本酒独特の風味だと思うんです。そのへんをどういうふうにお考えなのかなって、ちょっと聞いてみたかったです。

桜井 うちの酒どうでした?

堀江 やっぱり独特の風味はありますよ。それこそが日本酒らしさなんですけど、その日本酒らしさが良い時もあれば、この風味があるから飲みたくないなっていう人もぶっちゃけいると思うんです。そういう意味では、ビールってわりとオールマイティーじゃないですか。

桜井 ……う〜ん。

堀江 「とりあえずビール」っていう人は多いけど、「とりあえず日本酒」っていう人はまずないでしょう。

桜井 ひとつは、「とりあえず……」っていう商品は、ある意味、お客様もそこまではこだわらないですよね。そして、もうひとつは、日本酒の大きな特徴というのは、それなりのアルコール度数や独特の香り、味があって、おかしなたとえだけど“体調が悪い時には、あまり飲みたくない”酒ですよね。だけど、僕はそれがひとつの日本酒の価値だと思っているんです。

堀江 言いたいことはわかります。でも、今までワインとかビールとか焼酎とかを飲んでる層に日本酒を広げていくっていう考え方はないのかなって。日本酒独特の風味をもっと万人受けするようなものにしていくことはないんですか?

桜井 それはないです。それをやると、おそらく日本酒の良いものを捨ててしまう気がするんです。私たちはマスマーケット狙ってないんですよ。それは当たり前ですよね。だって、ちっちゃい酒蔵ですから。マスマーケット狙おうとするなら万人受けするものを造る必要があるんでしょうけど……。

堀江 たとえば、納豆とかでそうだと思うんですけど、臭みの少ない納豆とかってやっぱりエントリー商品としてはすごくいいわけですよ。そういう日本酒があれば、そのうちに本筋に近づいていくわけじゃないですか。「納豆って意外とうまいんだ」って思えれば、臭い納豆も食えるようになるみたいな。クセの少ない、入りやすいところを造るみたいな考えはないのかなと思ったんですよ。

桜井 それをやるのは、うちじゃないですね。もっと大きなメーカーだと思いますよ。

堀江 大きなメーカーに期待できないから言ってるんですけど(笑)。申し訳ないんですが、大きなメーカーって品質の低い酒を作って、逆に日本酒離れを加速させてる元凶だと思うんです。

桜井 (笑)。

堀江 だから、やっぱり旭酒造みたいな会社が、ドンペリと並ぶようなハイエンドの獺祭スパークリングのようなものを出してほしいなと思っているんです。そして、世界中で日本酒の評価をもっと上げてほしいんです。

桜井 そう言われるとうれしいんですが……。とにかく、今は、なんとかお米を手に入れて、みなさんの需要にお応えすることが先決だと思っています。

堀江 やっぱり、問題は米ですか……。すみません、そろそろ時間のようです。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

桜井 こちらこそ、ありがとうございました。

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桜井博志(Hiroshi Sakurai)
旭酒造株式会社代表取締役社長(旭酒造は1770年創業の老舗)
1950年山口県岩国市生まれ。1973年に松山大学を卒業し、3年間の修業を経て1976年に旭酒造に入社。その後、一時期、旭酒造を離れるが、1984年に戻り、試行錯誤のうえ1990年に『獺祭』を開発。倒産寸前だった会社を立て直す。

 

Photograph=柚木大介  Edit/Text=村上隆保 Transcription=logo-01