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JAXAはやぶさ2プロジェクトマネージャー津田雄一が語る『はやぶさ2の挑戦』後編2/2

ロケット技術の継承をなんとかしたい

堀江 僕らのロケットは前回、打ち上げに失敗しましたけど、この間、フル秒時の燃焼試験をやって、無事成功しました。

津田 ロケットの作り方は教科書には書いてありますけど、それだけでは絶対に作れない。やってみないとわからないノウハウがたくさんありますからね。

堀江 そうですね。それに僕らはやっているチャレンジは、量産化して定常的に打ち上げるために少ないお金でどう飛ばすかなんです。教科書と同じにやっていれば、みんな飛ばしているんだから、そりゃあ飛ぶでしょう。でも、お金がないぶん、僕らは教科書とは違うことをやらなければならない。だから大変なんです。

津田 新しい技術でやるときは、失敗もちゃんと評価されないといけないんですよ。自分たちの技術力アップのためにデータをきちんと取る必要がありますからね。特にロケットなんて何度も失敗することが前提になります。

堀江 やっぱり、少しでもロケットを軽くしたいじゃないですか。軽くできれば推進系に余裕ができるので、低スペックのロケットエンジンでも飛ばせるようになる。そのためには、センサーが横にかかってくる加速度を検知して姿勢を立て直して、できるだけ応力がかからないように飛ぶ制御をしたいんですけど、安くていいセンサーがないんですよ。1個何百万円みたいな話になっちゃう。スマートフォンが普及して、いいセンサーが安くなったと言っても宇宙で使えるものは限られている。僕らの場合は、そこが難しさとしてすごくあるんですよね。

津田 なるほど。

堀江 いま、はやぶさ2はリュウグウの周りをグルグル回っている感じなんですか?

津田 いや、高度20kmのある地点でホバリングしています。ヘリコプターみたいに止まっています。

堀江 ホバリングには、どういうスラスター(動力)を使うんですか?

津田 化学エンジンです。イオンエンジンは使っていません。

堀江 化学エンジンはヒドラジン(無機化合物の一種)とか使っているんですか?

津田 はい。ヒドラジンです。

堀江 どれくらい使うんですか?

津田 探査機の中に満載すると約48kgのヒドラジンが入るんですけど、まだ10kgぐらいしか使ってないですね。

堀江 ヒドラジンって、火をつけるときどんな感じなんですか? まだ使ったことないんですよ。

津田 ヒドラジンは毒性が強いので気をつけたほうがいいですよ。我々はふたつの液体,酸化剤と燃料を混ぜるタイプのを使っています。

堀江 一液式じゃないんですか?

津田 二液式です。

堀江 僕らはエタノールです。

津田 姿勢制御は?

堀江 ジンバルとガスジェットロール制御をやっています。

津田 ガスジェットもエタノールですか?

堀江 そうです。同じタンクから取っています。やはり、余計なものは積めないので。最初、ガスチェットロール制御は窒素ガスでやってたんですけど、全然足りなくて。

津田 非力ですしね。

堀江 これは無理だなっていう話になって、ヒドラジンも含めて検討したんですけど、ヒドラジンは民間企業だと扱いが大変だし、環境問題などとの関係もあるので止めようということになりました。本当はケロシン(石油の分留成分のひとつ)を使いたいんですけど、海に落とすと大変じゃないですか。毎回ちゃんと打ち上げが成功して、「燃料は全部使い切っています」と言えるようになったら、ケロシンを使う予定です。

津田 そうなんですね。

堀江 レギュレターはどうしてます? 何MPa(メガパスカル/圧力の単位)くらいで取っているんですか?

津田 レギュレターはおよそ15MPaです。レギュレターは壊れやすいところなんですよ。だから我々もすごく心配しています。

堀江 レギュレターが壊れやすいという話は、どういうふうに技術継承されてきたんですか。僕らの「MOMO2」というロケットが打ち上げを失敗した時は、レギュレターをふたつ入れていたんですよ。

津田 我々はレギュレターを入れているけど、使っていないんです。レギュレターを信じない設計にしています。ヘリウムタンクがあって、弁があって、その後にレギュレターがあって……。

堀江 あ、元弁みたいなのがあるんだ。

津田 そうです。弁は基本的に閉じているんです。必要な時にだけ圧をかけて、それ以外の時はレギュレターを使わない運用の仕方をしています。

堀江 そういうのって、先輩から叩き込まれるんですか?

津田 叩き込まれますね。「レギュレターは気をつけろ」と(笑)。半分口伝で。

堀江 そこが技術継承の問題で、口伝じゃダメなんですよ。

津田 そこが技術継承の難しいところではありますよね。

堀江 僕は、そこをなんとかしたいと思っているんですけどね。本日はお忙しいところありがとうございました。

津田 こちらこそ、ありがとうございました。