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「水を分解して燃料を作る」 関西学院大・橋本秀樹教授が語る 人工光合成の最前線 前編1/2

橋本秀樹(Hideki Hashimoto)

関西学院大学理工学部教授。1990年、関西学院大学大学院理学研究科博士後期課程修了。グラスゴー大学客員准教授、大阪市立大学教授を経て、現職。人工光合成による次世代燃料開発などが研究テーマ。

水を分解して酸素と水素にする触媒が、あることは確か。

堀江貴文(以下、堀江) 橋本さんは、人工光合成の研究をどれくらいやられているんですか?

橋本秀樹(以下、橋本) もう10年以上はやっていますね。

(人工光合成とは……植物の光合成反応を模倣して,太陽光エネルギーを使って,水と二酸化炭素から水素やメタノール等の燃料を作る技術のこと。ちなみに,光合成とは,太陽光エネルギーを使って「水」を分解し、生成した「水素イオン」と「高エネルギー電子」を用いて「ATP〈=アデノシン三リン酸〉」と「NADPH〈=ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチドリン酸・電子伝達体〉」を作る。この際に「酸素」が放出される。次に「ATP」と「NADPH」を使って「二酸化炭素」から「糖質」を生産すること。)

堀江 次世代燃料の生成の研究もしているんですよね。

橋本 そうです。我々は水を分解して、水素を発生させる触媒の開発をしています。現在、プラチナが触媒としてすごくいいのはわかっているんですが、埋蔵量が限られているので、すべてをプラチナでまかなうことはできません。そこで、プラチナに代わる安価な触媒探しをしているんです。

堀江 ターゲットになる触媒って、どうやって探すんですか?

橋本 それは、もうカンですね。

堀江 カンですか(笑)。

橋本 カンです(笑)。水を分解するには触媒が必要だけれども、その触媒が何かがわかっていない。そこで科学者のカンで、手探りでやっているんです。

堀江 触媒はどんなものか、まったくわかっていないんですか?

橋本 まったくわかっていません。「こういうメカニズムで動いています」ということを示す例はあるけれども、本当にそうなのかということはまだ言い切れない。

堀江 じゃあ、ミクロの世界で何が起こっているかを想像してやっているということですか?

橋本 そうです。

堀江 どういうことが起こっていると想像されているんですか?

橋本 まず、簡単な原理として、水素イオンのプラスと水素イオンのマイナスがあればくっつきますよね。

堀江 はい。「H2」になりますね。

橋本 そうです。ただ「H+」はどこにでもありますが、問題は「H」。水素イオンマイナスは「ヒドリドイオン」というんですが、それが触媒の表面にできているのを見た人はいない。

堀江 見た人はいない(笑)。

橋本 だけど、間接的な証拠はある。

堀江 それで触媒の表面には「H」があるだろうということで、触媒を探していくと。

橋本 そうです。

堀江 その「H」は、水(H2O)から分解されたやつなわけですよね。

橋本 そうでないと困ります(笑)。

堀江 でも、できていることは確かなんですよね。

橋本 そうです。

堀江 なるほどなー。

橋本 まあ、ヒドリドイオンができているかどうかはわからないけれども、水を分解して、水素を「NADPH」で蓄えているのは確かです。

 

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