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「透析のない街を作りたい!」 徳島大学・安部秀斉准教授が語る 腎臓病治療の最前線! 前編1/2

安部秀斉 Hideharu Abe
徳島大学大学院医歯薬学研究部准教授
1965年生まれ。京都大学医学部大学院博士課程修了後、京都大学医学部付属病院、静岡県立病院などを経て、徳島大学病院に。徳島大学病院では副科長、外来医長を務める。日本医療研究開発機構創薬booster研究代表者

透析のない街をめざす委員会(サイバー・ホスピタル)代表
https://cyber-hospital.com/

健康な人でも30歳を過ぎると腎臓機能が低下する!

堀江貴文(以下、堀江) 安部さんは、腎臓病の専門医ですよね。

安部秀斉(以下、安部)はい。最近は動脈硬化ベースで腎臓病になる人が多いんですよ。

堀江 動脈硬化ベース?

安部 高齢化やメタボリックシンドローム(メタボ)の人が多くなっているのが一因です。メタボの人は血圧やコレステロール、中性脂肪が高く、高尿酸症だったりする。すると動脈硬化を起こしやすい。腎臓は大小さまざまな血管がたくさんあって“血管の塊”のような臓器なんです。動脈硬化によって血管がつまってしまえば、その血管の先にある血液をろ過する“糸球体”に血流が行かなくなってしまう。すると腎臓病になってしまうんです。

堀江 なるほど。

安部 それに、まったく健康な人でも30歳をすぎるとネフロン(尿を作るためにある糸球体と尿細管の組み合わせ。ひとつの腎臓の中に約100万個のネフロンがある)が減っていきますから。

堀江 え、そうなんですか。

安部 はい。こうやって座って話しているだけでも、1個、2個と壊れていきます。

堀江 壊れているかどうかは、健康診断とかの数値でわからないんですか?

安部 わかりますよ。血清クレアチニンという腎機能検査があります。しかし、100万個の糸球体が半分の50万個になっても異常値は出にくい。糸球体の3分の2が壊れたくらいの状態になって、やっと血清クレアチニンの数値が上がってくるという感じです。

堀江 でも、その前に血圧が高くなっているとかでわかるんですよね。

安部 いや、血圧が高くなってきたりするのが、その頃なんです。

堀江 じゃあ、壊れた頃にいろいろと出てくるわけだ。

安部 そうですね。50、60歳になると高血圧の人が増えるのは、歳とともにネフロンが減っていくからです。しかも、ネフロンが半分壊れていて、体の大きさも食べる量も変わらないと1個あたりの仕事量が倍になりますよね。負荷が増せば増すほど、残っているネフロンも加速度的に痛んでいきます。

堀江 怖いですね。

安部 実は腎臓病って“ないないづくし”なんですよ。まず、診断方法がない。診断方法がないから、診断基準も明確なものがない。もちろん、治療方法もない。だから、早期に見つけられない。早期に見つけられれば、リスクファクター(危険因子)の管理で、かなり抑えられるんですけどね。

堀江 なんか、だんだん怖くなってきました。

安部 だから、ネフロンが壊れているかどうかがわかればいいので、今、診断薬を作っているところです。腎臓って他の臓器のように画像診断もできないし、バイオマーカーも、肝炎だと「GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)」や「GPD(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)」に鋭利に反応しますけど、腎臓には鋭利に反応するマーカーがないんです。

堀江 今、僕はどれくらいネフロンが壊れているかわかるんですかね。

安部 既存のマーカーで一番頼りになるのは「eGFR(推算糸球体濾過値)」です。血清クレアチニンの数値と年齢と性別でわかる日本人用の概算式があるんです。eGFRが50だったら、あくまで数字上ですが、半分壊れてるし、30だったら透析までそんなに余裕がないということがわかります。

堀江 僕、カルテをクラウドに全部入れてるんですよ。だからわかるんですけど、僕の血清クレアチニンは0.89です。

安部 数値と年齢と性別を入れるだけでわかるサイトがウェブ上にあると思いますよ。

堀江 あ、あった。結果は73.4です。

安部 ということは、4分の1は壊れてるということですね。

堀江 結構、壊れてますね。どうすればいいんですか?

安部 まず、数値を悪くしている要因の洗い出しです。20〜30項目の問診、約50項目の検査をやります。それから、これまでの経過がわかると主要因がわかりやすくなります。タンパク尿が出ていない場合は、至適体重(理想体重)を割り出して、至適体重をオーバーしている場合は減量をすすめます。減量するとクレアチニンが下がるんです。腎機能の壊れた部分を元に戻す方法はないんですけど、クレアチニンが下がるようなことをやれば、残っているネフロンのプロテクションになります。リスクリダクション(危険因子の低減)をやっていくということです。

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