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「特定の気体を孔に吸蔵させて運べる」 京都大学アイセムス特別教授・北川進と 特定助教・樋口雅一が語る ナノサイズで作った新素材PCPとは?前編

北川進(Susumu Kitagawa
京都大学アイセムス(高等研究院物質-細胞統合システム拠点)拠点長/京都大学高等研究院特別教授

1951年生まれ。京都府出身。東京都立大学理学部教授などを経て、1988年から京都大学大学院工学研究科教授。2007年に京都大学アイセムス(物質-細胞統合システム拠点)副拠点長・教授、2013年拠点長に。

PCPの作り方は簡単。無機物と有機物をただ混ぜるだけ!?

堀江貴文(以下、堀江)  本日は、今、飛躍的なイノベーションが起きていて、世界を変えるかもしれないといわれている新材料“多孔性配位高分子(PCP/MOF)”について、いろいろお伺いしたいと思っています。

北川進(以下、北川) はい。よろしくお願いします。

堀江  早速ですが、先生が開発された「PCP/MOF」(以下、PCP)とは、どういうものなんですか?

北川 組み立てブロックをイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、ブロックのナノスケール(原子や分子の大きさ)版です。そして、ブロックの部品にあたるものが「金属イオン」と「有機配位子」で、これが交互に組み合わさっています。

堀江 なるほど。

北川 材料科学の視点でいうと、既知の材料は基本的に「無機物(金属や鉱石など)」か「有機物(一般的に炭素が含まれる物質)」でできています。そして、無機物と有機物を混ぜ合わせると「混合物」になる。ところが、ナノレベルで無機物と有機物を混ぜ合わせるとまったく新しいもの(金属錯体)になったんです。しかも、その物質にはナノサイズの孔が規則正しく空いていた。このまったく新しい材料を発見したのは1997年でした。

堀江 例えば、1991年に発見されたカーボンナノチューブ(炭素原子がつながって筒状になっている物質。アルミニウムよりも軽く、鋼鉄よりも強い)は、別の実験をしている時に発生したものを観察したら偶然、見つかったといわれていますが、PCPも何かを反応させていた時に偶然できたとかそういうことなんでしょうか?

北川 PCPの作り方は実に簡単で、金属イオンと有機配位子を混ぜるだけなんですよ。特別な装置も何もいらない。フラスコの中で金属イオンと有機配位子を混ぜるだけでできるんです。

堀江 ただ、混ぜるだけで?

北川 ええ。じゃあ、なぜ1997年までそれが見つからなかったのかというと、それまでも混ぜるとキラキラと光るものが落ちてくるのはわかっていたんですですが、それを分析することができなかったからです。

堀江 観測する装置がなかったということですか?

北川 装置はあったんですが、一粒1ミクロン以下のキラキラ光るものの構造を見たいということになると、大きな大学の研究室が持っている装置を借りて、大きな大学の特別なコンピュータなどで解析するしかなかった。それが、1990年代後半になると、各研究室でその装置を購入できるようになった。

堀江 装置がリーズナブルになって、コンパクト化したと。

北川 はい。

堀江 ということは、昔からPCPは簡単に作れたかもしれないけれど、構造解析が簡単にできるようになったことが大きいということですか。

北川 そうですね。ただし、解析は簡単にできたかもしれないけれど「そこにあるナノサイズの孔を使おう」という発想は出てこなかったと思います。

堀江 そうですよね。それで北川先生は、その孔に例えば「低分子のガスなどを閉じ込めることができるんじゃないか」と考えたわけですよね。

北川 はい。

 

後編に続く