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ホリエモンWITH 「量子ドットレーザーでスマートグラスを変える!」 東大・荒川泰彦が考える量子研究の未来とは?前編1/2

ホリエモンWITH 堀江貴文 荒川泰彦

荒川泰彦(Yasuhiko Arakawa)
東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構長、東京大学生産技術研究所教授
1952年11月26日生まれ。工学博士。東京大学工学部卒業後、米カリフォルニア工科大学客員研究員などを経て、東京大学国際産学共同研究センター教授、東京大学先端科学技術研究センター教授などを歴任し現職に。

網膜に直接、映像を映し出すアイウエアの完成

堀江貴文(以下、堀江) 荒川教授は目の網膜にレーザーを直接照射して情報を提供するスマートグラスを開発されたんですよね。

荒川泰彦(以下、荒川) はい。『レーザーアイウエア』というものです。㈱QDレーザと東京大学が共同で開発しました。

堀江 すごいですよね。やはり、直接、網膜に入れたほうがいいんですか?

荒川 そうですね。なにしろメガネをかける必要がないわけですから。メガネタイプだと、近眼の人などは「度」を合わせないといけないですよね。

堀江 はい。

荒川 でも、レーザーアイウエアは網膜上に直接、映像を描画するので、近眼や老眼などは関係ないんです。

(編集部注:『レーザーアイウエア』は、赤・青・緑の半導体レーザーを使い、映像を網膜上に映す機械を搭載している。そのため、近眼や老眼などの視力を選ばない。また、液晶など他の方式に比べてサイズや消費電力、コスト面で優れているといわれている)

私は今後、レーザーアイウエアを含めたスマートグラスは、人間の生活の中でとても重要な役割を果たして行くんじゃないかと考えています。

堀江 そうですよね。僕も早くスマホをずっと見ている生活から解放されたいですよ(笑)。

荒川 (笑)。スマートグラスは、目的地までのナビゲーションや様々な情報を得るための道具というだけでなく、視野狭窄など視力に問題のある方々への生活援助などにも役立つのではないかと思っているんです。

ホリエモンWITH 堀江貴文 荒川泰彦

堀江 はい。

荒川 ですから、ひとつは情報入手の便利さと快適さを求める「作業支援」。そしてもうひとつは、視力が弱っている人などへの「視覚補助」という2つの方向があると考えています。

堀江 なるほど。

荒川 問題は、こうしたスマートグラスが今後、どれだけ小型化できるかということなんですよ。今はレーザーの光源やバッテリーなどが有線でお弁当箱大の小さなボックスにつながっているんですけれど、それが近い将来にはスマートフォンくらいの大きさになって、その後はもっと小さくなっていくでしょう。そして有線から無線になっていくでしょう。

堀江 小型化のポイントって何ですか?

荒川 それは「小さなレーザーを使うこと」と「ローパワーにすること」です。

堀江 小さなレーザーを使うというのは、「小さなレーザーを作る」ということですか。

荒川 そうですね。そして、ローパワーにして電池を1個でも2個でも少なくすること。これはバッテリーの問題ですね。

堀江 グーグルグラスもバッテリーが鍵だと言われていますからね。

荒川 ええ。

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堀江 じゃあ、その小さなレーザーを作るということは、“量子ドット(半導体微粒子)レーザー”を作るということになるんですか。このレーザーアイウエアは、もともと量子ドットの技術を使うことを考えて開発されたっていうことですね?

荒川 そうですね。小さなレーザーを作るには、発光層に量子ドットの技術を使うことがポイントになってくると思います。

堀江 量子ドットの概念が、僕は完全に理解しきれていないんですけど……。

荒川 簡単に言うと、子どもが体育館で遊んでいるとします。それも3次元的に重力がない状態で。そうすると、寝転んでいる子もいるし、地面を走りまわっている子もいるし、空中を飛び回っている子もいます。そうして遊んでいる子どもたちを電子だと思ってください。この、体育館の中でバラバラに子ども(電子)が遊んでいる状態が普通のバルク半導体なんです。そこで、体育館の天井を子どもの身長と同じくらいまで低くしていく。そうするとどうなるかというと……。

堀江 ……空中を飛び回れなくなる。

荒川 はい。これまでは3次元的に飛び回っていることができたのに、2次元的な方向にしか動けなくなるわけです。さらに、体育館の中に子どもの頭しか出ないくらいの落とし穴を作る。そうすると、子ども(電子)は穴に落ちた状態で動けなくなってしまいます。この「落とし穴に入れる」という表現が、子どもに対して使うのに問題があると指摘を受けたことがあるので、イスに座らせるという比喩を使うこともあるんですが、落とし穴のほうがイメージに近いので、今回は落とし穴で説明させてください。

堀江 はい(笑)。

荒川 そうすると体育館の床から子どもたちの顔だけが出ていて全く動けないという状況になるわけです。このとき、電子の運動の自由度は0になるので、0次元状態といいます。さっきの自由に遊びまわっている状態だと、レーザー発振に寄与しない電子がいるわけですが、顔だけ出して動かない状態にしておけば、すべての電子がレーザー発振に寄与するわけで、非常に効率が良くなります。従って、少ない電子でレーザーを作ることができるようになるわけです。

堀江 なるほど。

荒川 電子の状態を量子力学的に動けなくなるような状態にしてあげる。そのために、電子とだいたい同じ大きさの落とし穴に入れてあげるというわけです。

ホリエモンWITH 堀江貴文 荒川泰彦

堀江 そんなに小さい落とし穴を……。

荒川 10ナノメートル(1億分の1メートル)くらいです。

堀江 そうすると低消費電力で、微小な半導体レーザーが作れるんじゃないかということですね。

荒川 そうですね。それに量子ドットレーザーだと温度が上がっても「しきい値(レーザーが発振開始する値)」が変わりません。一方、通常の半導体レーザーだと、温度が上がるとしきい値もどんどん高くなります。

堀江 へー。

荒川 温度が上がると子どもがどんどん元気になって、よりバラバラに遊び回ってしまうんですね。ところが、落とし穴に閉じ込めておけば、温度が上がって元気になろうとしても動けないでしょう。

堀江 そうか……。半導体レーザーに比べて、量子ドットレーザーはどれくらいの低消費電力になるんですか?

荒川 理想的には、光子数十個分くらいまでのエネルギーになります。……どういう言い方をしたらいいんでしょうか。ええと、現在の半導体レーザーのしきい値に対して約10万分の1くらいです。

堀江 すごい(笑)。

荒川 理想的にいけば、ですけどね。入れた電流がすべて光になって、エネルギー変換効率が極めて良いという条件です。

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