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「胃がんの99%はピロリ菌が原因」「胃がんは予防できる時代に」 国立国際医療研究センター理事・ 上村直実が語る“予防医学”の現状とは?前編1/2

※次の通り、2017/03/07にタイトルの変更作業を行いました。
(変更前)『胃がんの99.5%はピロリ菌が原因』→(変更後)『胃がんの99%はピロリ菌が原因』

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上村直実(Naomi Uemura)
国立研究開発法人国立国際医療研究センター理事、国府台病院長
1951年生まれ。広島大学医学部卒業後、広島大学病院、呉共済病院などを経て、国立国際医療研究センター理事・国府台病院長に。ヘリコバクター・ピロリ菌と胃がんの発症リスクとの関係を突き止めた臨床研究で知られる。日本ヘリコバクター学会副理事長、日本消化器病学会理事、日本消化器内視鏡学会理事、早稲田大学客員教授、北海道大学大学院客員教授。

ピロリ菌は30年前に偶然、発見された

堀江貴文(以下、堀江) 今のがん研究ってものすごく進んでいますよね。今日はそのへんのお話を中心に伺いたいんです。例えば、胃がんや胃潰瘍はストレスやタバコが原因だと言われてましたけど、今はピロリ菌によるものだとかわかってきたじゃないですか。

上村直実(以下、上村) そうですね。ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」(以下、ヘリコ)と言いますが、1983年にオーストラリアのロビン・ウォーレン(病理学者)と、バリー・マーシャル(微生物学者)によって、半分は偶然、発見されました。

堀江 え、偶然なんですか?

上村 ええ。胃の中って酸性じゃないですか。「強塩酸の状態ではバクテリア(細菌)は住めない」って、ずっと思われていたんです。そして、1950年代にアメリカのエディー・パルマーという有名な病理学者が調べた時にも、バクテリアは発見できませんでした。

堀江 へー。

上村 それが1979年頃に「胃の中に螺旋状のバクテリアのようなものが見える。特に胃炎の患者にそれが多い」とウォーレンが言い始めたんです。でも、当時は彼の言うことを誰も信じませんでした。

堀江 まあ、そうでしょうね。

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上村 そして、1981年になって若い研修医だったマーシャルがウォーレンのところに来て、バクテリアがいることを一緒に証明することになった。それで、胃の中にあるバクテリアを培養しようとするのですが、何回やってもバクテリアは増えない。それで「これはダメなのか」とあきらめていたところ、復活祭の際に4日間の休暇に出かけてシャーレをそのまま置きっ放しにしていたところ、ダメだと思っていたバクテリアが増えていた!

堀江 それは、何故なんですか?

上村 後日、判明したのですが、ヘリコが嫌好気性菌で分離や培養が難しい菌だったからです。

堀江 ……ああ。

上村 通常、多くのバクテリアは培養すると48時間以内に増えます。でも、ヘリコは嫌好気性菌であり、増えるのに4日くらいかかったというわけです。たまたま何日も放っておいたために、偶然、発見できたようなものなんです。

堀江 そうだったんですか。

上村 それで胃の中にはヘリコがいるということは証明されたわけですけど、それが胃炎をおこしている原因かどうかは、まだわかっていなかった。だから、マーシャルは、内視鏡で自分の胃の中にヘリコがないことを確認した後、その培養したヘリコを自分で飲んでみたんです。

堀江 え!? 自分で飲んだんですか!

上村 ええ。するとマーシャルは急性胃炎になった。そして、内視鏡で見ると胃炎が起こっており、顕微鏡でみるとヘリコがすごく増えている。それで「ヘリコが胃炎などの病気を引きおこす」ということを証明したんです。それが1984年のことでした。

堀江 すごいですね。

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