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「記憶は人為的に書き換えられる」富山大学大学院教授・井ノ口馨が語る 「脳のしくみ」と「記憶」と「自我」後編3/4

DSC_4660後編その1はこちら

人間は寿命120年を超えて不老不死になれるか?

堀江 倫理的な問題はあるにせよ、今はクローン脳や、iPS細胞から大脳を作ることがたぶんできるわけですよね。

井ノ口 できますね。

堀江 そして、人間が死ぬ要因がだんだん少なくなっていますよね。

井ノ口 そうですね。人間は生物学的には120歳まで生きることが可能です。

堀江 僕は、さらにその先があると思うんです。iPS細胞とか再生医療って、その先を狙ってますよね。例えば、免疫系でもT細胞を初期化して再生すると若返るとか……。

井ノ口 要するに人間の寿命も突破できると。

堀江 突破できるんじゃないかと思ってます、僕は。

井ノ口 その場合は、不老不死になるということですよね。

堀江 そうですね・iPS細胞から神経細胞を作って、脳の悪くなっている部分に注入すると若返る。脳も長生きできるわけです。おそらく、50歳から100歳くらい寿命が延びるんじゃないでしょうか?

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井ノ口 iPS細胞や再生医療で臓器を増殖させると、同じ機能を持ったものができるわけです。だからリプレース(交換)可能なんです。ただ、脳の場合、今まで経験したことによって配線が作られているわけで、それを新しく作るとランダムになってしまうわけです。そこをクリアしないと難しいかもしれないですね。それに正常な臓器を阻害する場合もあります。

堀江 そう簡単にはいかないわけですね。

井ノ口 そうですね。例えば、アルツハイマーは神経細胞が死んでいくわけですけれど、そこに神経栄養因子を入れると神経細胞が分裂して増えていきます。それでアルツハイマーが治るだろうと思って、マウスで実験をしてみたらランダムな配線ができてしまうので、脳機能がさらにひどくなってしまったんです。

堀江 えー。

井ノ口 つまり、きちんとしたプログラムを作ってあげなければいけない。それは複雑すぎて、今のところお手上げなんです。だから、iPS細胞とかでやるよりも、さっきの外部に情報を移すというほうが可能性はあるかもしれないですね。

堀江 そっちのほうが有力だということですね。

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