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「ネアンデルタール人の臓器も再現可能」 横浜市立大学准教授・武部貴則が語る 「再生医療」と「広告医療」の最先端とは? 前編1/2

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武部貴則(Takanori Takebe)
横浜市立大学医学部准教授。
1986年生まれ。神奈川県出身。米スクリプス研究所研究員、米コロンビア大学研修生、横浜市立大学医学部助手を経て、2013年より現職。米スタンフォード大学幹細胞再生医学研究所にて客員准教授を兼務。

臓器再生で大事なことは「形」ではなく、できあがる「プロセス」

堀江貴文(以下、堀江) 武部さんは、iPS細胞を使って「ヒトの臓器の種となる細胞(器官原基)」を作り出すことに成功されたそうですね。

武部貴則(以下、武部) はい。これまでのiPS細胞を使った研究は、臓器ではなく“細胞”を作ろうとするものでした。例えば、肝臓の場合だと、iPS細胞から「肝細胞」を作り、それを患者さんに移植して肝臓を再生させるという方法です。しかし、これだと移植した細胞が体内できちんと機能しているかどうか判断が難しい。臓器は「ただの細胞のかたまり」ではないので、血管などが張り巡らされている「構造」まで作らないと上手く機能しないんです。そのため、期待したほどの治療効果もあがっていませんでした。

堀江 「細胞」を再生することと「臓器」を再生することは、ずいぶん違うんですね。構造を作る再生医療の研究って、これまでなかったんですか?

武部 これまでは血管や組織など必要なパーツごとに細胞を作って、それを鋳型に並べて臓器を再生する“工学的なアプローチ”をやっている研究者が多かったんです。いわゆる「組織工学」というフィールドです。

堀江 ああ、3Dプリンターで臓器を作ろうという話もありましたよね。

武部 ええ。組織工学的な方法は、ある特定の臓器には良いと思いますが、僕たちが研究対象にしている「肝臓」や「すい臓」「腎臓」などは、きちんとした構造があってはじめて機能するので、構造まで作らないとダメなんです。

堀江 なるほど。

武部 臓器再生で大事なことは形だけではなく臓器ができ上がるプロセスです。胎児の時期に臓器が作られるのと同じように、時空間的に変化をしていくプロセスを考えない研究では、iPS細胞からきちんと機能する細胞を作るのは難しい。だから「そこを解決したい」というのが、ここ5年ほどの僕たちのミッションでした。

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堀江 具体的には、どんな方法で臓器の種を作るんですか?

武部 人間は受精後のごく初期に、「内胚葉」から「腸管」という1本の管ができます。そして、その管から食道・胃・十二指腸・肝臓・すい臓・小腸・大腸といった臓器ができていきます。

堀江 ひとつの管から分化していくんですね。

武部 はい。そして受精後1〜2ヶ月ぐらいの時期に、その管がボコボコと飛び出して“複雑系”になる。この時に必要なのが、将来「血管」になる「前駆細胞」と、それらをつなぐサポーターのような働きをする「間葉系の細胞」です。

堀江 そのふたつの細胞が、実際の構造を作る上で重要だと。

武部 そうです。平面的な腸管から立体的な臓器になるために非常に重要です。実際の研究では、iPS細胞から作った肝細胞になる手前の前駆細胞に、血管の前駆細胞と間葉系の細胞を合わせていきます。

堀江 合わせていく?

武部 シンプルに言うと「混ぜる」ということです。

堀江 混ぜるだけですか?

武部 もちろん、混ぜる時には特定の比率とか培養する環境などの諸条件がありますが、そうした環境下で混ぜると自律的にモコモコと……。

堀江 モコモコ(笑)。

武部 そうなんです。3年前に見つけたんですが、この方法を使うと細胞が自律的に立体的な構造体を作るんです。

堀江 へー。

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