WITH

ホリエモンが聞く。現代の魔法使い、落合陽一の目指す未来とは。その3

堀江貴文 落合陽一 ホリエモンWITH

コンピュータグラフィックスの世界を現実世界に作る。

堀江 じゃあ、そのディスプレイが、VRヘッドセットのオキュラスに付いていて、その質感があったら、本当に現実世界ですよね。

落合 本当に現実世界ですね。そういうのも面白いですよね。でも、僕はどちらかっていうとVRの方に現実世界を作るのでなく、この現実世界にいながらにして、何かが消える、トランスフォームするっていうほうに興味があるんですよ。コンピュータ側から実際の物理的な世の中を制御することって難しいじゃないですか。だから、それをディスプレイでうまく制御したいんです。

堀江 魔法使いですからね。

落合 はい。でも実際、今のところはオキュラスに光線情報再現を付けたほうが絶対に売れると思います(笑)臨場感あるし。

堀江 まさに、みんながそこにいる感覚で会議がやれますよね。ほんと、瞬間移動ですよ。どこでもドアですよ。宇宙に打ち上げたいな、それ。

落合 確かに、宇宙に浮いている感じが体験できますよね、きっと。

堀江 まさに、ゼログラビティの世界が……。宇宙にそのカメラを持っていけばいいんですか?

落合 宇宙は、両眼視差がほとんどないので、正確な数はわからないけど多分『THETA』を4つくらい持っていけばいいんじゃないかなと。それをくるくるとまとめて廻したりすればいいのかなと思います。

堀江 両眼視差ってどういうことですか?

堀江貴文 落合陽一 ホリエモンWITH

落合 宇宙って、全体的に物が遠いので右目と左目で見える映像ってほとんど変わらないんです。だから、近場の光線を再現しなくていいんですよ。よくある3Dテレビって近いところの右目と左目の像の見え方の違いで立体映像をつくるでしょう。そこのところがいらなければ、近くの物体のディテールにこだわる必要がない。そうすると、ほぼいくつかの静止画を球体に貼り付ければ良いから。360度のカメラを何個か置いておけば、だいたい補完できるんです。「THETA」を人工衛星に何個かつけるだけでもいいんじゃないですか。

堀江 ディスプレイの方も質感を再現できるようになっていたら、ほとんど現実的に宇宙に浮いているみたいな状況が再現できますよね。それ理想ですね。

落合 理想ですね。

堀江 シャボンは別として、今はめちゃくちゃ高精細な液晶ができるのを待っているみたいな感じですか。

落合 そうですね。あと、高精細じゃなくても、アクティブバックライト方式(バックライトの方向を変えられるディスプレイ)だと光の方向を記述できるので、精細度はなくてもできるのではないかと考えてます。ピクセルが光をどっちに曲げるかがわかっていれば、反射の質感に関しては再現できますから。その次は触覚ですね。触覚で視覚でやっていたようなつるつる、ザラザラといった質感をどうやったらうまく作れるかっていうのをやってます。

堀江 そこまで考えているんですか。

落合 はい。どうやったらこの現実世界にコンピュータグラフィックスを実現できるかっていうのが、僕のテーマなので。VRやARをつかうことなく、我々は生身の人間のままでこの世界にコンピュータグラフィクスのような操作可能性を実現する。Physicalization of Computer Graphics (コンピュータグラフィクスの物理化)とか呼んでます。でも、この物理世界にはそもそも重力があるからものは動かしにくいし、光の方向は一度放ったら変わらないので、なかなか物理世界の見た目をコントロールすることは難しい。だから、この世界でうまく魔法は使えるようになるには、その物体自体が表面で光を跳ね返したりだとか、その光線自体をどうやって記述するかっていうモデルや基本的なテクノロジーから作っていく必要があると思うんです。

堀江 なんか、できることないですかね。

堀江貴文 落合陽一 ホリエモンWITH

落合 とりあえず、質感に関してできる研究は、いっぱいやりたいなと思っています。コロイドはさっきの、どうやってスイッチングして質感を再現するかっていうのでだいだい決着はついているんですが、次はそれを液晶でどうやって作るか、他のスタティックな材質で作るかって方向に研究がシフトしていて、今はそこをひたすら追いかけています。

堀江 お金に関してはどうですか?

落合 結構、キツイんですよ。

堀江 営業すればいいんじゃないですか?

落合 欲しがるところあるのかな。

堀江 欲しがりますよ。まったく新しい分野ですからね。

落合 じゃあ逆にエンドコンシューマが欲しがる様な物を作っていくってことですよね。ちなみに、今作ってるやつは、2月-3月中くらいにはお見せできると思いますよ。他の研究との進捗次第ですが。

堀江 え、どういうやつですか?

落合 iPhoneで自由視点のやつですね。それを今、レンズアレイシートの会社と一緒にやっていて、たぶん今年中くらいには出せるんじゃないかと。

堀江 どんな見え方するんですか?

落合 今はまだ「あ、変わってる。変わってる、確かに」みたいな感じですね。反射をモデリングして、それに応じて表示してやる。今はまだ途中ですが、ただ、この先解像度を変えると質が一気に変わると思います。今はレンチキュラーを使っているので、「ただの絵の変わる下敷きと同じじゃん」て思われるかもしれませんが、それは解像度によって差が出る部分なので。今は、それが実際のマテリアルを模倣するところが面白いところかな。

堀江 それとミラーボールカメラみたいなものを組合わせてやってみたいですね。

落合 やりたいですね。

堀江 でも、ミラーボールカメラは、お金さえあればすぐに作れるんじゃないですか?

落合 はい、たぶん、結構簡単に作れると思います。現にボール状になっているカメラはキックスターターなどでもお金を集めていますから。ポイントはそこから、カメラ自体の球体の体積を小さくして、その後そこで撮れる光線情報をどうやって再現するかっていうのが次ですね。

堀江 それ、また相談させてください。お金が回る仕組み考えておきます。

落合 ぜひお願いします。宇宙でロケットを打ち上げた暁には、何か飛ばして空中で回してみましょう。無重力空間で、ある種の物が自在に動いていたら、それは結構かっこいいと思います。宇宙空間での映像で、我々人類は浮いていることは見慣れているんですけど、浮いているだけじゃなくて、自由自在に動かせたらインパクトあるかと。音響浮揚ももともと宇宙を目指してやっているところなので。

堀江 それ、ぜひやりましょう。

落合 面白いと思うので。

堀江 早く、宇宙空間に物を打ち上げられるようにならないと。

落合 僕はいつまでも待ってますから。僕の方ももっと研究しないと。

堀江 本日は長い時間ありがとうございました。

落合 ありがとうございました。

 

落合陽一(Yoichi Ochiai) Website

1987年東京都出身。東京大学大学院学際情報学府修了。デザインとプロトタイピング、およびメディアアートに興味を持ち研究開発に従事するメディアアーティスト・研究者。また実業家としてジセカイ株式会社を創業など多岐に渡り活動している。

Photograph=柚木大介  Edit=村上隆保 Transcription=logo-01 Text=伊藤龍介