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「再生可能エネルギーとしての水素を 太陽電池から高効率で作り出す」 東大・杉山正和准教授の考える 未来のエネルギーシステムとは?前編1/2

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杉山正和(Masakazu Sugiyama)
工学博士、東京大学大学院工学系研究科准教授
1972年生まれ。静岡県出身。1995年、東京大学工学部化学システム工学科卒業。2000年、東京大学大学院工学系研究科化学システム工学専攻博士課程修了。

日本では条件が整わなかった高効率の集光型太陽電池

堀江貴文(以下、堀江) 杉山さんは太陽電池から高効率の水素を生成することに成功したんですよね。もともと電気系だったんですか?

(編集部注:杉山准教授は新しい集光型の太陽電池を開発し、その電力で水を電気分解して、効率良く水素を作り出すことに成功した。24.4%という変換率は世界最高水準。水素は化石燃料の代替エネルギーとして注目されているため、今後の研究に期待されている)

杉山正和(以下、杉山) いや、大学の学部では化学を専攻していました。正確にいうと「化学工学」といって、ビーカーやフラスコを振るのではなく「半導体を作る装置の原理」とか「その中で何が起こっているのか」といったことを研究していました。

堀江 そうだったんですか。

杉山 ただ、学部にいた頃から環境問題に関することをやりたいと思っていたんですよ。化学工学は「エネルギーが地球全体でどれだけ使われているのか」ということを数字でとらえたりするので、エネルギーのフローを解析して、その変換をいろいろ考えていました。その後、半導体の結晶とか金属の薄膜を作る研究を経て、10年くらい前に太陽電池の研究を始めました。

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堀江 へー。

杉山 水素の話の前に、まずは太陽電池の話をさせてください。皆さんが普段よく目にする太陽電池は“シリコンパネルを使ったもの”ですよね。あれは技術的にかなり完成されたもので光エネルギーの電力への変換効率は20%くらい。この数字は、研究されている最新のものとそれほど開きがない。だから、あとはどれだけ安くできるかということが研究のポイントになります。

堀江 はい。

杉山 それに対して、僕らが研究している太陽電池は“レーザーやLEDなどの化合物半導体を使ったもの”です。これを使うと非常に高効率な太陽電池が作れる。ただ、このシステムは非常にお金がかかるんです。

堀江 なるほど。

杉山 だから、お金がかからないように、できるだけ小さな半導体を使って、虫眼鏡みたいなもので太陽光をギューッと集める。それが「集光型太陽電池」と呼ばれるものです。実はこれ、20年くらい前に世の中に出ているんですよ。

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堀江 え、そうなんですか。

杉山 そうなんです。知らなかったでしょ?

堀江 ええ。

杉山 この集光型太陽電池は日本ではほとんど使われていないんですよ。なぜ、使われていないかというと、ひとつはやはり“値段が高い”から。そして、もうひとつの理由は“地域的な問題”。このシステムは虫眼鏡みたいなパネルが朝から晩まで、ずーっと太陽のほうを向くようにプログラミングされているわけです。

堀江 スタートラッカー(恒星センサー)みたいだ。

杉山 そう、まさにそれです。そうすると朝、陽が出たらすぐに発電を始められるのでとても効率がいい。ただ、曇が出たりするとうまく集光できなくなるので効率が下がってしまう。だから晴天率が高かったり、日照時間が長い地域じゃないとうまくいかないわけです。でも、日本にはそういった条件の場所がなかなかない。だから今は海外のすごく陽射しが強い地域、例えばオーストラリアとか、アメリカのアリゾナとか、スペインやイタリアなどの南ヨーロッパなどで、少しだけ利用されているというのが現状です。これを見てください。集光型太陽電池って、いくつもの半導体材料を使うんですよ(資料を見せる)。

堀江 (図を見ながら)あ、なるほど。光のエネルギーにあわせて青色LEDとか赤色LEDとかを利用することで、幅広い波長の光を効率良く変換してるんだ。

杉山 その通りです。さすがですね。光の波長にあった材料で変換してあげるとロスが少ない。こういうのを「多接合太陽電池」っていうんですけど、これが一番、効率がいいんです。

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