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ホリエモンWITH「日本第二の都市が国に頼っているのはおかしい」 橋下徹大阪前市長に聞く、地方自治体の未来とは?その2

大阪市は公務員を2分の1まで削減できる

堀江 僕は、小泉純一郎元首相が郵政選挙をやり始めた頃から、ちょっと政治に興味を持ち始めたんですよ。それで、いろいろ勉強していくと、国や自治体がやらなきゃいけない事業っていうのはものすごく限定的で、ほとんどは民間企業に任せた方がいいということがわかったんです。ただ、立ち上がりが遅い時に、そこだけ補助金を出してあげればいいっていう話であって。

橋下 それは、そうですよ。

堀江 あるいは出資するでもいい。そうするとものすごいシンプルになる気がするんですよね、自治体って。そう思いません?

橋下 その通りですけど、それをやるのにどれだけ政治的なパワーが必要か。この間、公立病院をひとつなくして民間病院を誘致したんですよ。これひとつやるだけで大変な政治エネルギーが必要でした。住民から反対が運動があって、議会からも反対されて。

堀江 なんかこう、一気に変える方法はないんですかね。

橋下 民主主義国家には、ないですね。

堀江 だから、僕は小泉さんがやった郵政選挙ってすごいなって思ったんですよ。郵便局員20万人以上でしたっけ?

橋下 そうですね。

堀江 20万人以上の公務員を一気になくしちゃうって、すごい決断ですよね。だから、いま思えば政府金融機関とか特別行政法人も基本的に民営化する流れになっていて、社会福祉も地方に任せて、国は外交や防衛だけっていう感じの流れを作ろうとしていたわけじゃないですか。すごいグランドデザインだなあと思って。

橋下 方向性はそうですね。

堀江 橋下さんは、今、何年目ですか?

橋下 6年目です。

堀江 どうですか? あと2年で道筋はつきますかね?

橋下 そうですね、さっき言った公共交通と水道の民営化は、もうだいたいプランを固めてあって、あとは議会の議決を得るだけなんですよ。それから、大学も一本化して、病院も独立行政法人化を成立させて非公務員化にして、今まだ揉めているところなんですけど……。

堀江 そうすると、どのくらい公務員が減るんですか?

橋下 僕の計画で行くと、3万8000人のところを1万9000人ちょっとまでは削減できますね。さらに都構想が実現すると1万5000人くらいにはなるんじゃないですかね。

堀江 2分の1以下ですか。すごいですね

橋下 全部、成立すればね。だって地下鉄だけで7000人くらいの公務員が民間に行くんでね。

堀江 医療のほうは、まだまだやらなきゃいけないことがいっぱいありますよね。病院を民営化すれば終わりじゃなくて、そのあとに医療法人改革みたいなことがありますし。

橋下 そうですね。病院のカラクリっていうのはすごいですよ。一般会計から補助金が出ているんですよ。収入が得られない医療関係のための補助金ですって。しかも、そのお金が不良債務の解消に充てられていたりすることもあるんですから。

 

大阪がワースト1から抜け出すには、教育しかない

堀江 実は僕、教育の問題にすごく感心があるんですよ。いろいろなところで訴えているんですけど、教育もやっぱり国家レベルで変えていかなきゃいけないもんなんですか? 自治体では変えられない?

橋下 公募校長をやるだけでも1年間議論して、やっと制度改正したんですよ。教育行政は、とにかく変えにくい仕組みになっている。それをいま一個一個、変えるようにしています。

江 自治体レベルでも、かなりのことはできるということですか?

橋下 やろうと思えばね。

堀江 うーん。

橋下 僕はやろうと思ったんで、大阪市長になった時に、あえて教育基本条例っていうものを作った。最終的な教育行政の決定権者、責任者は知事と市長にあるとか、校長は公募でやるとか、学校選択制を認めていくとか、学力テストの学校別の成績は開示するとか。

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堀江 で、どうなったんですか?

橋下 それを全部条例に盛り込んだら、「教育への政治介入だ」って言われましたね。

堀江 ああ、それ覚えてますよ。すごかったですよね。

橋下 すごいやれましたね。でも選挙で勝ったんで、今は大阪ではそれが普通に行われています。

堀江 僕、教育にすごく関心があるんですけど、それはなぜかというと教育変えると10年後にすごく効いてくるからです。だって10歳の子供が10年経ったら20歳、成人ですからね。選挙権がありますから。

橋下 うん。

堀江 教育って、意外と即効性があるんじゃないかなって思ってるんです。

橋下 そうですね。大阪って治安がワースト1だったり、失業率がワースト1だったり、もうワースト1の数字ばっかり出てくるんですよ。これを変えていくのが政治や行政だっていうんだけど、このひとつひとつに税金を使ったって際限ないですよ。僕は、とにかく教育で市民レベルを上げていくしかないと思っているんです。だから、僕が市長になるまでは教育関係の予算は約60億円だったけれども、僕が市長になってからは約280億円に増やしたんですよ。さらに26年度以降は300億円を超えます。

堀江 僕はもっと言うと、その教育をする人を変えなきゃいけないと思っているんですよ。

橋下 それはもう採用試験とかそっちの問題ですか。

堀江 採用試験というか……先生って、どちらかというと実社会から隔絶されている人たちじゃないですか。そういう人たちに教えられているから、子どもたちは社会との関わり方をあんまり知らないんですよね。教えられていないから。

橋下 うーん。

堀江 実社会に出たら、学校で習ったことと全然違うことがいっぱいありますよね。

橋下 うん。だから僕は公募校長の必要性を感じたんですよ。外から入ってきてもらって、その人の人脈でいろんな人を連れてきて教えてもらったりとか。

堀江 やっぱり、そうですよね。

 

ある程度、実績を積んだ経営者が、政治家になってほしい

堀江 これは、誰にでも言ってもなかなか賛同してくれないですけど、“選挙運動に未成年者をボランティアで参加させるような仕組み”を作ると面白いと思うんですよ。今、未成年者って選挙運動できないじゃないですか。

橋下 ダメですね。

堀江 何でダメなんですか?

橋下 公職選挙法の問題ですね。

堀江 公職選挙法で未成年者に選挙運動をさせてはいけないない趣旨って何なんですか?

橋下 まだ、判断力が備わっていない年齢だろうということだと思います。タバコや飲酒などと同じで、未成年者保護のパターナリズムだと思いますよ。

堀江 僕は自分で選挙運動やって、政治に対する意識がすごく上がったんです。やってみると、そんなに嫌なことなくて、仲間でひとつの目的に向かうことの高揚感がありましたし、落選しましたけど達成感もある。そういう思いを共有できる体験ってなかなかないじゃないですか。それで若い人が政治への参加意識を持ってくれるとすごくいいと思うんです。選挙運動を手伝ったことのある人の投票率って、ものすごい高いと思うんですよ。

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橋下 そうでしょうね。でも、僕は「それは何か堀江さんらしくないなあ」と思いますね。

堀江 そうですか?

橋下 というのは、僕はボランティアではなく、もっとダイレクトに市長とか政治家になる仕組みを作ってほしいんですよ。

堀江 どういうことですか?

橋下 選挙運動に携わるとかじゃなくて、ダイレクトに政治家になるとか、ダイレクトに市長になるとか。そして、そこには経営者の経験のある人が入ってきて欲しいんですけどね。堀江さんどうですか?

堀江 僕ねえ、みなさんからすごい誘われるんですよ。でもねえ、まず自由がなくなるでしょ。

橋下 それにマスコミから散々やられるでしょ。で、報酬は……。

堀江 経営者と比べたら、桁が一個以上違いますよね。

橋下 で、働いている時に、人から「ありがとう」って言われるのが一番嬉しいことじゃないわけですか。でも、政治家の仕事って、それがないんですよ。

堀江 けなされまくりですよね。

橋下 ちゃんとやっていて当たり前。だからこそ、もうこれは修行だと思ってね。公に対しての恩返しじゃないけども、4年間とか決めてやるというのはどうですか?

堀江 う〜ん。

橋下 あはは(笑)。だから、本当にそういうことなんです。政治って、自分を成長させるというよりも、ある程度、経験を積んだ人が修行する場なんですよ。

堀江 じゃあ、ある程度の実績を上げた経営者を100人くらい集めて、修行させようとしているわけですか?

橋下 そう。

堀江 それで4年間修行したら……。

橋下 何かの経験にはなるだろうくらいのことしか言えませんね。それに、民間人の立場と比べたら、楽しくないし、めんどうくさいし、しんどい。でも、僕はそういう人たちが集まらないとこの社会は、日本の政治はよくならないと思うんです。

堀江 これまで話を聞いてると、結構、やられてますよね。いや、すごいわ。これがいい感じで全国に波及して、各自治体が変わっていくといいんですけどね。今、若手の市長や首長が誕生しているじゃないですか。千葉市長や福岡市長とかそうだと思うんですけど。で、わりと大都市圏で若手の首長が増えているので、「俺もできるんじゃないか」とか「俺もやってやる」って、手を挙げる人が多くなる気がするんですけどね。

橋下 そうなるといいんですけどね。4年前に大阪維新の会を立ち上げて、統一地方選挙に一文無しの状態で府議会議員、市議会議員を擁立してやってきたんですよ。その時にメディアは今回お話したような大阪都構想の完成形の話を全部出せって言ってきたんですよ。でも、そんなことできるわけがない。4年も5年もかけて、やっと制度を設計できる話なわけです。最近になって、やっと大阪都構想がどういうものか、どれだけ時間かかることかというのが、メディアや住民の方にやっとわかっていただけたみたいです。だから、これからが本当の勝負なんです。

堀江 もうすぐ大阪市長選ですね。今日は長い間、ありがとうございました。

橋下 こちらこそ、ありがとうございました。

 

橋下徹(はしもと とおる)
オフィシャルウェブサイト
1969年生まれ。前大阪市長。弁護士時代に『行列のできる法律相談所』などに出演し、注目を浴びる。その後、2008年に大阪府知事、2011年に大阪市長に就任。大阪維新の会代表。日本維新の会共同代表。

Photograph=柚木大介  Edit/Text=村上隆保 Transcription=   logo23