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光で遺伝子をコントロールする東工大准教授、 増田真二が描く遺伝子と生命の未来とは?その1

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増田真二(masuda shinji)
1972年神奈川県生まれ。2000年都立大学で博士号(理学)取得。日本学術振興会特別研究員PD、米インディアナ大学客員研究員、理化学研究所基礎科学特別研究員、東京工業大学生命理工学研究科助手を経て、現在東京工業大学バイオ研究基盤支援総合センター准教授。同大学生命理工学研究科/地球生命研究所准教授を兼担。

「今まで取材なんてされた事ないんですよ。今回堀江さんからお話をいただいて、当日も本当に来るのか半信半疑でした(笑)」柔らかい物腰でそう語る増田准教授。光で遺伝子をコントロールする技術「PICCORO」とその先にある未来とは。

光を当てるとシッポが発現したり、制御されたり

堀江貴文(以下、堀江) 僕、増田さんの“光によって遺伝子発現をON・OFFできる技術(ピッコロ(PICCORO)/PixD complex-dependent control)”を開発したという記事をグノシー経由のWEBニュースで見て、「これはスゴイな!」と思ったんですよ(編集部注:増田さんは、光のON・OFFによって魚のシッポの発現をコントロールすることに成功した)。

増田真二(以下、増田) 実は僕、取材をしてもらうのは今回が初めてなんです。記者さんから取材を受けたこともないので、堀江さんがお読みになったのは大学のプレスリリースだと思いますよ。

堀江 そうなんですか。じゃあ、あれはプレスリリースだったのかなあ。

増田 大学がプレスリリースを作って、記者クラブに渡しているんです。

堀江 それにしても、あの技術はすごいですよ。似たような研究は、世界中で行われているんですか?

増田 光で生命現象を制御しようという研究は、世界中で行われています。この分野のきっかけとなったのは、光で脳神経の動きをコントロールしようという研究でした。ある藻類には“光を受けると膜を隔ててイオンをポンピングするタンパク質がある”ことは昔から知られていたんです。その現象をアメリカの大学の研究者が脳の中で発現させた。それが光遺伝学の始まりだと思います。

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堀江 それは何年ぐらい前の話ですか。

増田 今から10年くらい前ですかね。

堀江 それが、今はどれくらい進んでいるんですか。

増田 かなり進んでいると思いますよ。本当かどうかわかりませんが、光で神経をコントロールできるので、軍事用に利用しようと考えている人もいると聞きます。

堀江 脳と機械やコンピュータをつなぐブレインマシンインターフェイス的に使えますよね。インプットのデバイスとして。

増田 そういう研究をしてる人もいるという噂はありますよね。

堀江 ダーパ(DARPA/米国国防高等研究計画局)とかでやってるんですかね。脳に光スイッチングチップみたいなの入れて……。

増田 実験では、LEDを脳に埋め込んで、手元のスイッチ操作でネズミが走ったり、止まったりするということは確認できてますね。そうした神経活動のコントロールから、次に光で遺伝子の発現をコントロールしようという流れになっています。私は他の人が使ってないタンパク質で、それをもっと効率化しようという研究をしているんです。

堀江 すごいですね。それはどんなものなんですか?

増田 シアノバクテリアという光合成をするバクテリアです。シアノバクテリアは光に向かって動くんです。人間には目があるので、光がきた方向ってわかりますよね。でも、シアノバクテリアは単細胞なので、光を認識するタンパク質があったとしても、どっちから来てるのかはわかりづらいはずなんですよ。でも、光に向かってちゃんと動く。その仕組みが非常に不思議で、私はその仕組みが知りたくて研究していたんです。

堀江 で、どういうメカニズムかわかったんですか?

増田 それが、実はまだきちんとはわかってなくて、今まさにやってるところなんです。ただ、ひとつわかったのは、あるタンパク質(PixD)が光を受けて、それをシグナルとして下流に伝えますよね。その時に、そのタンパク質(PixD)と相互作用する別のタンパク質(PixE)があることがわかったんです。

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堀江 それは活性化するみたいな?

増田 はずれちゃうんです。

堀江 はずれちゃう?

増田 光が当たると構造変化して、くっついていた別のたんぱく質がはずれる。今回の研究というかプレスリリースしたものは、光でタンパク質の相互作用をコントロールできることがわかったので、それを利用して、光を当てた時だけ転写が活性化したり、抑制したりするシステムを作ったということです。

堀江 光を受けるタンパク質と相互作用するような転写因子タンパク質をデザインしたということですか?

増田 はい。今回は機能するとしっぽの形成がおかしくなるものを例にとって、しっぽの形成に必要な転写因子に融合させたキメラ遺伝子みたいなのを作ったんです。それをゼブラフィッシュで発現させる……。

堀江 つまり、転写因子と情報伝達タンパク質がくっついてるキメラみたいなものを作ったんですね。

増田 そうですね。遺伝子の実体DNAは、バクテリアも動物も同じなので、普通に組換遺伝子は機能するだろうっていうことなんです。

堀江 光を当てた場合だけ、その遺伝子が発現するんですよね。

増田 仕組みを変えると抑制されたりもするんですよ。発現したり、発現が止まったり……。

堀江 任意の部分に?

増田 そういうのが将来的にはできるんじゃないかと思います。

堀江 光を照射すると、そこにしっぽが生えるとか?

増田 はい。転写因子の機能を調べるというのは、体がどうやってできるかという研究につながるので、発生生物学にも関わってきます。たとえば、指ができる時にどういう転写因子が機能しているのかを知るには、光を当てたところの表現型を見れば、わかったりするんです。

堀江 すごい使えそうですよね。

増田 と思ってるんですけどね。