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ホリエモンWITH 光で遺伝子をコントロールする東工大准教授、 増田真二が描く遺伝子と生命の未来とは?その2

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実験に使うノウハウは「2ちゃんねる」から!?

堀江 なんでそういうことを思いついたんですか?

増田 私は高校の授業で、先生から「遺伝子の発現」について聞いた時、すごく興味を持ったんですよ。それで生物学を勉強し始めて、光受容体のタンパク質を見つけた時から、いつかは光で遺伝子発現をコントロールしたいなあと思ってて……。

堀江 思ってたらできた、みたいな。

増田 そうですね。で、これまではバクテリアとか植物で研究してたんですが、どうせやるなら生物種を超えてゼブラフィッシュでやろうと。それで始めたのが5年くらい前かな。

堀江 やっぱり、それくらいの時間はかかるものなんですか?

増田 かかりますね。特に今回は材料として使う生物種を変えたので。

堀江 たとえば、どういうところで苦労するんですか?

増田 なんですかね。論文ひとつまとめるのにも、とにかく時間がかかるんですよ。みんなが納得しないとダメなんです。あるデータを出した時に、「このデータだけじゃなくて、こういうデータもちゃんとつけなさい」とか「ここを補足せよ」とか、いろんなことが要求されるもので。

堀江 論文を書くのに時間がかかると……。

増田 あと、何が難しいかというと、たとえば卵に針をどうやって打つかって、本には詳しく書いてないんですよね。「インジェクションする」とは書いてあるんですけど、どの段階でどれくらい針を突き刺すかとか、そういうことまでは書いてないんです。

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堀江 それ、受精卵の段階ですか?

増田 そうです。受精卵です。産んですぐの卵です。

堀江 まだ分裂してない時期ですかね。

増田 そうですね。段階としては、一細胞期か二細胞期の段階ですね。

堀江 一細胞期から二細胞期になるのにどれくらいかかるんでしたっけ?

増田 ゼブラフィッシュは数時間です。それも、ひとつの卵に入れるだけじゃなくて、場合によってはいっぺんに何百個も入れたりするんですよ。

堀江 それ全部、手作業でやるんですか?

増田 顕微鏡を見ながら手作業で。トランスフェラーゼというDNAを組み入れる酵素があって、それを利用して遺伝子と一緒にタンパク質を入れるんです。

堀江 どの辺に入れるんですか?

増田 それが、どこに入れるかコントロールできないんです。染色体にランダムに入っちゃうんです。最近は、ゲノム編集っていう狙った染色体に遺伝子を入れたり、変異を入れたりする方法が確立されつつはありますが。

堀江 そういうのって、学会とかでみんな知るんですか?

増田 最初は口コミですよ。論文になる前は、口コミが主ですね。「こういう成果があるらしい」っていう話が入ってくるんですよ。

堀江 インジェクションのテクニックの話とかって、すごい原始的というか。そんなんで苦労してるんだ、みたいな。

増田 まあ、それは私だけかもしれないですけどね。ゼブラフィッシュを使ってずっと研究をしている人は、そんなことがボトルネックにならずに実験が進むのかもしれないですけど。まあ、今回の研究に関しては、一番苦労したのがその部分ですね。

堀江 僕もここに来る前に生物学の教科書を読み直したんですけど、インジェクションの仕方なんて、細かくは書いてないですよね。

増田 細かくは書いてないですよね。たとえば論文なんかでも、実験方法の部分があるんですけど、それを読んでも実験の追試できない場合がけっこう多いんです。それは、たぶん書かれてない部分で何かコツみたいなのがあるんだと思うんですよね。

堀江 なんでもそうなんですね。僕は宇宙開発をやってるんですけど、宇宙開発もそういうのばっかりですよ。

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増田 宇宙開発の場合は、何か参考にする文献があったりするんですか?

堀江 あんまり、ないですね。そもそも、宇宙開発やってるところが少ないし、やってても軍だったら国家機密だったりするし……。たとえば、圧力容器に液体窒素を入れる方法とか、あんまり聞かないでしょ?

増田 確かに……。

堀江 実験で液体窒素を使う場合、デュワー冷却器とかに入ってるじゃないですか。それを圧力容器に入れようとする時、ふつうにじょうろでは入らないんですよ。

増田 じゃあ、どうやって達成するんですか?

堀江 正解は、圧力容器を断熱材でおおって圧送するんです。圧力をかけてむりやり入れる。でも、液体窒素なので、入れたそばからどんどん蒸発していく。それで、断熱材がだんだん冷えてくると、やっと入るようになるんです。そんな方法、原始的すぎてどこにも書いてないですよね。でも、そういうところでけっこう苦労するんです。

増田 そういう苦労って、研究をしてるとしょっちゅうありますよ。遺伝子を切り貼りするという基本的な操作があるんですけど、半年かけてがんばっているのに、なんでうまくいかないんだろうって思ったら、組み換えに使う酵素が失活してたとか……。

堀江 失活ってなんですか?

増田 失活っていうのは、構造が変わって働かなくなることです。実験に使う酵素は不安定なものが多いので……。

堀江 そういうノウハウの交換サイトとかはないんですかね?

増田 昔は「2ちゃんねる」とかにもあったんじゃないかなあ。

堀江 実験板みたいなやつですか?

増田 ええ。あとは、ヤフー知恵袋とか。

堀江 そんなんで知ったりしてるんですか!?

増田 はい。「これ試せ!」とか(笑)。結構、有力な情報とかが出てたりしますよ。