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これが最先端のがん治療法。 山形大学・根本教授が語る 「重粒子線がん治療」とは? 前編1/2

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根本建二 Kenji Nemoto
山形大学医学部放射線腫瘍学分野教授/山形大学医学部附属病院長
1957年生まれ。岩手県出身。東北大学医学部大学院卒業後、東北大学医学部付属病院助手、東北大学大学院量子治療学分野講師、東北大学大学院放射線腫瘍学分野助教授を経て、平成18年4月から現職に。

膵臓がんの2年生存率5割。ずば抜けて成績がいい重粒子線治療

堀江貴文(以下、堀江) いきなりですけど、「重粒子線がん治療」の治療成績って、どれくらいなんですか?

(編集部注:重粒子線治療とは、重粒子〈炭素イオン〉線を光の約70%の速度でがんに照射する治療方法)

根本建二(以下、根本) がんのできる場所によって違いはあるんですが、今までX線を用いた放射線治療では歯が立たなかった手術が難しい場所にできた骨のがんなどは、重粒子で治療した場所では80%程度が5年間再発しておらず、転移で亡くなる患者さんもいますが、結果的に半分くらいの方が5年間生存されているという成績が得られています。あとは、重粒子線や陽子線(炭素ではなく水素の原子核を使った治療)など粒子線治療でしか治せない患者さんがいます。例えば、肺がんで手術ができなくて普通のX線を用いた放射線治療も副作用が強く出てしまう人は、抗がん剤治療か症状を取るための支持療法のみとなりますが、そういう場合でもすべてではありませんが重粒子線治療が実施可能なことがあります。

堀江 膵臓がんの場合はどうですか? 膵臓がんって予後が悪いと言われているのは、腹腔内に播種するからですよね。

根本 それもありますが、手術で患部を切除できる人が「5人にひとり」とか「10人にひとり」と言われているからです。

堀江 なんで取れないんですか?

根本 膵臓って、取ると死んでしまうような、重要な臓器に栄養を運ぶ大きな血管とくっついているんですよ。例えば、門脈という太い血管がありますが、それがなくなると栄養が肝臓に運ばれなくなって死んでしまう。膵臓はそういった血管を取り巻いたり、血管とくっついたりしているんです。

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堀江 門脈って、人工的には作れないんですか?

根本 一応、バイパスはできますが、かなり大変な手術になります。膵臓は他にも腹腔動脈や腸間膜につながる動脈と接しています。それらをがんと一緒に全部取ってしまって繋ぐ技術は、残念ながらまだありません。

堀江 そうなんですか。

根本 将来的にそういう技術ができたとしても、さっきおっしゃったようにがん細胞がお腹の中にばら撒かれるとか、肝臓への転移が非常に早かったりすると治りません。

堀江 発見した時には、すでに遅かったみたいな……。

根本 そうですね。でも、重粒子線治療は門脈があろうが、腸間膜動脈があろうが関係ありません。現在、重粒子線治療により転移がなく、お腹の中にがん細胞がばらまかれていないけれど、がんが周りに広がっていて手術ができない膵臓がんの2年生存率が5割という成績が出ています。これは、他の治療法と比べるとずば抜けていい成績です。

堀江 じゃあ、膵臓がんになったら重粒子線治療ですね。

根本 今お話しした条件を満たしている場合には、ベストな治療選択枝と考えています。

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