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AIロボットでの実験、iPS細胞での網膜移植、 福祉と一体化した医療センター。 理研・高橋政代が語る、眼科治療の今と未来 前編2/2

画像認識を使ってロボットがiPS細胞を培養する

堀江 網膜って、どういう組織なんですか?

高橋 網膜は、脳が眼球の中に入ってきている部分です。神経管からビューと出てきてお椀型になったのが網膜。試験管の中で立体の組織を作ることをオルガノイドと言いますが、理化学研究所の故・笹井芳樹先生は、2011年に世界で初めて網膜のオルガノイドを作りました。今は腎臓や気管支などのオルガノイドも作られています。

堀江 網膜は、元になる神経幹細胞みたいなものを分化させて行くんですよね。

高橋 はい。そうです。

堀江 その後は、どうなるんですか? 少しずつ手で作業をして行く?

高橋 いえ、神経幹細胞を脳にする環境にしておくと、最初はボールみたいな脳の塊になっているんですが、そこからポワッポワッと突起が出てきて、再現されていきます。

堀江 勝手にできて行くんですか。

高橋 そうですね。でも、私たちは網膜だけが必要なので、全体が網膜になるように変えています。

堀江 すごいですね。でも、脳ができたといっても受容体がないから、脳としては機能していないんですよね。

高橋 いえ。私たちは光を受け取る視細胞が必要なので、その仕組みはできています。故・笹井先生が作った脳の皮質は、その中でシグナルが行き来しているのが可視化されています。

堀江 ってことは、ボヤッとした赤ちゃんの脳みたいにはなっているってことですか?

高橋 そうですね。胎児の脳にはなっていますね。

堀江 話は飛びますが、やろうと思えば脳全体は作れますよね。

高橋 はい。ただ、血管なども入れないといけないので、脳の場合は、ある程度の大きさになったら崩れます。ですから、脳を完成させるには体内に入れ込まないと難しいと思います。

堀江 でも、体内に埋め込めば完成するってことですよね。

高橋 すると思います。しかし、倫理的には絶対に許されないことですけど。で、私が言いたいのはiPS細胞を育てる匠の技をAIロボットにやらせるということです。

堀江 それは、どうやって学習させるんですか?

高橋 先ほど言ったiPSソムリエの目を使います。あの研究者は、良い悪いを目で、画像で判断しているんです。

堀江 画像認識なんだ。

高橋 ですから、これが良い状態というデータをどんどん学習させていったら、iPSソムリエと同じくらいにはなれます。でも、それだけだったら今でもできるので、AIにロボットをつけるということは、その情報を元に今日はちょっと入れる濃度を変えてみようとか、いろいろなことができる。そのソフトを入れれば、iPS細胞を育てることは簡単にできるようになるので、ムダな実験がなくなるんです。

堀江 そうなると、iPS細胞の研究がまた前進しますね。

高橋 再現性のある実験がどこの研究所でも最初からできるようになるので、バイオロジーはすごく変わると思います。

 

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Photograph/Edit=柚木大介 Text=村上隆保