WITH

JAXAはやぶさ2プロジェクトマネージャー津田雄一が語る『はやぶさ2の挑戦』前編2/2

堀江 はやぶさ2の制御に使えるコンピューターとかって大体いつぐらいのものなんですか?

津田 やはりひと昔前っていう感じですね。コンピュータ自体はたくさん使ってるんですけど、CPUとしては16ビットのものも使われていれば64ビットのコンピュータをクロック周波数を落として、消費電力を落としてって感じですかね。

堀江 16ビットっていったらどれぐらいの時代?Windowsが出始めるよりも前か。

津田 そのくらいですかね。

堀江 着陸するときに使うようなプログラムサイズはどれぐらいなんですか?要はどれぐらい複雑なことを、どういう感じでやってるのかっていうのがイメージできたらいいんですけど。

津田 そういう意味では、フローチャートをプログラミングするっていう感じですね。例えば、何々のセンサーのデータを取ると。その値がこれより大きい場合は何々しなさいという感じのフローチャートを自分で組むことができるので、それを組み上げることでタッチダウンのシーケンスを作っています。

堀江 なるほど前、映画でアポロが月に着陸したときの話ありましたよね。あの時くらいからプログラムの書き換えができるうになったのかな。

津田 ああいう映画を見ると共感とか覚えるんですけど、あの頃に比べたらはるかに高度なコンピュータを使ってます。あのときは8ビットぐらいのコンピュータに。

堀江 8ビットですよね。

津田 今は本当にフルのCPUを使えるので、その意味ではレベルは違いますけど、やはり3億km先で動くんで、ちょっとした間違いも許されないと思うと、高度なプログラムをというよりは分かりやすくミスのない確実なプログラムを書くというのが優先されますね。

堀江 そういうふうな話になりますね。

津田 ええ。そうやって組まれたプログラムなんですけど、リュウグウが予想外のデコボコなので、なんとか探査機を騙すというか、今ある機能で本来の機能とは違うけど、こういう動きするんじゃない?っていうところを見つけ出してなんとかしようとしています。スラスターの噴き方とか、姿勢の作り方とか。

堀江 姿勢の作り方。

津田 はい。デコボコなところに最終的に探査機がまっすぐ降りなきゃいけないんですけど、どうやって検知するかというと、最後はLRF、レーザレンジファインダがあって、ビームを4本、四角錐のように出して、その4本の長さが同じになるように制御して降りてくるんですね。しかしリュウグウはちょっとデコボコすぎるんで、同じになるっていう状態がかえって危ないかもしれない。

堀江 なるほどなるほど。

津田 岩がいっぱいあると、ちょっとした岩に対して長さを等しくしようして傾いちゃったりとか。そういうふうにしか探査機はできていないんで、そこをどうやってそのルーチンをバイパスさせるかとかそういうところで、ソースコードレベルで探査機のプログラムを見直して、やれることを探してるっていう感じですね。

堀江 レーザレンジファインダはどれぐらいの四方に?

津田 イメージで言えば50m四方を測る。だから今回の着陸には広すぎるんですよ。

堀江 厳しいですね。50m四方はかなり上空から見て?

津田 ええ。近づけば近づくほど、もちろん小さくなったり狭くなっていくんですけど、最後全ての制御を切って、自由落下のように着陸させるのが高度10mとか20mなので、その時レーザーは20m四方計測しちゃってることになるんですね。

堀江 なるほど(笑)どうするんですか?バイパスできるんですか?

津田 技術のメンバーでいろいろ、中の細かいプログラムレベルで見て、いくつか方法を今見つけています。こういう設定を組み合わせれば、そこの機能をバイパスできるんじゃないかとか、あるいはレーザーの高度に対する感度を緩くするとか。いろんな方法があるんですけど。今それを並べて、どれにしようかと考えているところです。

堀江 うーん、なるほど。そう説明されるとわかりやすい。そこも自動制御なんだ。

津田 ええ。フルオートで頭良く作ってたんですが、リュウグウという特殊な小惑星に合わせようとすると、もう一工夫する必要がありそうだということで。やはり光の速さでも片道20分かかっちゃうんで、地上からの操縦っていうのはとても考えられないですね。だから自動でやらなきゃいけなくて。

堀江 消費電力の問題ですが、太陽電池パネルだけだと、電力供給には難があるんですか?

津田 距離によりますけど、木星より内側であれば、太陽電池でも十分いけると思います。

堀江 でもコンピュータの性能は下げてるわけでしょ?

津田 はい、コンピュータの性能は下げた理由は電力の話と、もう1つは放射線という話があって、この両方をクリアしないといけないんですよ。

堀江 ああ、そうかそうか。実際のところ今のコンピュータの耐放射線性能というのは前に比べると改善しているとは思うんですけど。

津田 はい。しかし高性能になる程弱いという宿命的な部分もあって。

堀江 それはそうでしょうね。

津田 高集積化すると、1つの放射線でやられる範囲が広いので。ただ今は放射線に半導体の仕組み的に強いようなデバイスが出てきてたりするので、将来的には打ち破れる壁だと思います。

堀江 そうすれば、スキャンにしても。

津田 地上だと画像処理とか制御とかすごい高度なことを、性能の良いコンピュータでパーッとやってしまったりしてるんで、その世界が持ち込めるといいなと思ってるんですけどね。進化はしています。

堀江 半導体とか、そういう関連技術の進化って取り込みたいですよね。

津田 取り込みたいですね。

堀江 取り込めないんですかね?できないですよね。

津田 一生懸命取り込もうとしてるんですけど、求められてる性能が民生品と違うところもある。放射線の話とか、確実性をすごく重視するので。もう1つ逆の見方をすると、探査って行ったことのないところに行くんで、どの性能があれば十分かというのは誰も知らないんですよね。当時はこれで十分であろうと思うスペックでできるから、もちろん提案されて打ち上がったんですけど、行った結果として新しい発見で、リュウグウっていうのはこんな地形のある小惑星があるんだ、っていうのが分かったんですよね。

対談日 2019年1月15日

<後編につづく>