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ホリエモンWITH NTT先端技術総合研究所・村瀬淳所長とNTT物性科学基礎研究所の山口浩司上席特別研究員に聞いた、通信の未来とは?

「2020年東京オリンピックで求められる大容量通信やウェアラブルのような新デバイスを実現するには先端研究が不可欠です」

“10年後、20年後を見据えた先端技術を開拓すること”がミッションのNTT先端技術総合研究所。研究の中心は「ネットワークの高速化」や「新しい通信デバイスの開発」だが、それだけではなく「人間に迫る知能の実現」や「人間の脳の情報処理」「従来にない新素材を見出すこと」など幅広い研究が行われている。この研究所を訪れたホリエモンが、通信の先端技術について聞いた。

 

「ナノメカで量子現象を探求している!?」NTT物性科学基礎研究所の超最先端研究の中身とは?

 山口浩司(以下、山口) 堀江さんは、MEMS(微小電気機械素子)に関して聞かれたことがあるかと思いますが、私たちはMEMSの技術をさらに進め、より微細なナノメカニカル素子を作製して研究し、「シュレディンガーの猫」として知られている巨視的量子効果と呼ばれる基礎物理現象の探求や、フォノンレーザなどの新原理デバイスの研究などを進めています。この技術は超高感度のセンサなどに応用できる可能性があります。

堀江貴文(以下、堀江) フォノンレーザって、もう実現されているんですか?

山口 空気中に超音波を放出する武器のようなフォノンレーザを想像されるかもしれませんが、そのようなものではなく、レーザ発振と同様の原理による動作を超音波に対して実現したという基礎的な研究です。ただ、この成果は、大変話題になり、昨年、『Wired.com』においてサイエンス部門のtop13に選ばれました。

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村瀬淳(以下、村瀬) MEMSは、携帯電話でセンサとして広く使われているけれども、ナノメカニカル素子も将来的には、高精度なセンサデバイスとして新しいところで使われるものと思っています。

堀江 精度が高くなるということですか? 量子コンピュータの状態を検出したりできるんですか?

村瀬 量子コンピュータそのものというより、量子の世界を測定できるセンサであるとか、量子コンピュータ実現への環境を整える意味で、実現に向けての基礎のひとつでもあります。

堀江 このような技術は、どのようにアウトプットするんですか? NTTで事業化するのですか?

村瀬 NTTだけで事業化するということにはならないと考えていて、外部と組んで外に出していくこともあります。基礎研究なので、その成果をどのニーズに使っていくかは、これからアイデアが出てくるものです。新しいニーズが出てきたときに、シーズとカチッと合うと良いと考えています。

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堀江 MEMSの加速度センサの精度が上がれば(現在使われている高価なジャイロを使わなくて済むので)ロケットのコストを安くすることができる。スマホにもMEMSセンサが入っているけど、今のものは机の上に置いているだけでもかなりドリフトしていて、これではロケットは安く飛ばせない。JAXAはリングレーザージャイロを積んでいるけど、そんな高価なものは僕たちは使えないんです。もし、MEMSセンサの感度が格段に向上すると、すばらしいですね。

村瀬 MEMSや、山口が研究しているナノメカニカル素子は半導体なので、量産モードに入ればコストは下がりますね。

山口 ターゲットは量子現象の探索などの極限技術を目指していますが、そのような高い目標を狙っていく中で出てきた、まったく新しい技術を使えるところに出していければ良いと考えています。

堀江 技術テーマの集め方はどうしているんですか?

村瀬 トレンドをにらんでテーマを探していますが、山口が所属している物性研(物性科学基礎研究所)のような基礎研究所では、研究者個人の興味でいろいろなテーマに取り組んでもらっています。

山口 ナノメカの研究も10年前にひとりで始めた研究です。ようやく最近良い結果がでるようになりました。

(ここで3人は実験室に移動する)

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山口 ここでは極低温での実験をしています。先ほど説明したナノマシンにおける量子現象の研究以外にも、量子コンピュータの研究などを行っています。ものすごく低い温度を実現するのに、希釈冷凍機を用いています。

堀江 希釈冷凍機って、どのような原理なんですか。

山口 ヘリウム4の中に同位体のヘリウム3が拡散していく過程を用いて冷やします。

堀江 ヘリウム4へのヘリウム3の拡散ですか。すごい技術ですね。

山口 気体の体積が増えると温度が下がる。断熱膨張という現象がありますね。

堀江 はい。

山口 気体がより広い領域に広がるとエネルギーが減って、温度が下がる現象です。それと同じように、液体が異なる液体の中に広がっていく場合も温度が下がるわけです。それ自体は随分昔から用いられている技術で、冷却装置は数多く市販されています。

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堀江 ヘリウム3は、どのように作るのですか。

山口 自然界には存在せず、原子核の反応を用いて作るそうです。最近はテロ防止のセキュリティシステムなどにも用いられており、需要が高まっているため、値段が高騰しています。

堀江 大変ですね。

山口 実は月には大量のヘリウム3が存在するという予測があり、中国などが宇宙開発に興味を持っている理由のひとつがそこにあるといわれています。通常のヘリウム4の値段も最近上がってきており、最近、我々は希少資源である液体ヘリウムの消費を節約するために、装置内で循環して再利用するシステムを用いています。

(実験室の見学を終えて)

堀江 国際色豊かでしたね。本当に、いろいろな研究をされてますね。

 

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村瀬淳(NTT先端技術総合研究所所長)
早稲田大学理工学部卒業。工学博士。1981年、日本電信電話公社(現NTT)に入社。入社以来、移動通信システムの研究開発に関わる。2013年から先端技術総合研究所所長に。平成20年度文部科学大臣賞(科学技術賞)受賞。

山口浩司(NTT物性科学基礎研究所上席特別研究員)
大阪大学理学部卒業。博士(工学)1986年、日本電信電話公社(現NTT)に入社。現在、量子・ナノデバイス研究統括担当/複合ナノ構造物理研究グループリーダ。平成23年度井上学術賞、平成25年度文部科学大臣彰(科学技術賞)受賞。

 

Photograph=柚木大介  Text/Edit=村上隆保 Transcription=logo-01