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ホリエモンWITH NTT先端技術総合研究所・村瀬淳所長とNTT物性科学基礎研究所の山口浩司上席特別研究員に聞いた、通信の未来とは?

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スマホでは後追いだったが、次のウェアラブルでは攻める!

<前編はコチラ>

堀江 通信の話をお聞きしたいのですが、携帯電話の通信スピードって、どんどん速くなってますよね。

村瀬 東京オリンピックに向けて現状のLTEから、さらに進化したLTE-Advancedが導入されるなどモバイルの進化がますます進みます。ドコモではさらにその先の第5世代、5Gの研究開発を進めています。増え続けるトラフィックを収容するためには、これらの基地局やWiFiアクセスポイントの数を飛躍的に増やす必要があり、これらをつなぐ光のアクセス回線も莫大な数になります。ますます高速化するネットワークの装置やモバイル端末を支える半導体産業は非常に重要ですが、かつて世界をリードしていた日本の半導体産業は最近苦戦をしています。スマートフォンだけでなく、ネットワーク装置も小型・高性能・低消費電力化の要求が強くなり、半導体の主導権がとれなくなってきたため、通信系装置の競争力は非常に厳しい状況です。

堀江 それは、なぜなんですか?

村瀬 ひとつの要因は、台湾の「TSMC」のようなファブレス(自社工場を持たず外部に生産委託する)企業が出てきて、非常に速いスピードで投資をして、速いスピードで回収をして、また次の投資をするというスピードの速い投資サイクルが日本の企業はうまくできなかったということです。これは無線だけではなく、半導体などすべてに共通することです。スマートフォンについていえば、フューチャーフォンをいろいろ出し過ぎてしまって、ひとつに絞れなかったということだと思います。

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堀江 それはメーカーとの関係があったからということでしょうね。

村瀬 せめて、プラットフォームだけでもひとつに絞ろうと頑張っていたんですけど、どうしても2、3までが限界で……。そういう状況で最高のものを作り出すのは、とても難しかったんです。そんな中、アップルさんが「iPhone」を出してきて、サムスンさんなどの協力メーカーとともにスマートフォンという新しいカテゴリーを作られてしまった。ですから、これを後から追いかけるのは「非常につらい」という状況です。

堀江 でも、次のウェアラブルでは、かなり上のところにいるみたいですが?

村瀬 今また戦国モードに突入していますね。ですから、我々も今後は特徴のあるデバイスを提案していきたいと思っています。そのひとつが、「hitoe」(NTTと東レが共同開発した着るだけで心拍数や心電形などの生体情報の計測が可能にする繊維素材)です。今後は、従来のシリコンベースでは、たぶん到達できないような新次元のセンサや様々なコンピュータデバイスにつながるものなどで攻めて行こうと思っています。

堀江 こういうところに次世代の種がうまっているわけですね。

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今は外部とのコラボが大事。ひとつの組織で研究をやり遂げるのは難しい

堀江 今回は、こちらから無理にお願いして、NTT先端技術総合研究所を見学させていただいたわけですけど、こうした研究所の中ってなかなか見せてもらえる機会ってないですよね。

村瀬 たぶん、10年くらい前だったらかなり難しかったと思います。その頃の我々の使命は、たとえば、光通信でいえば「大容量で、経済的なものを皆さんにお届けすること」だったんです。これは、外部の方と交流する必要がそれほどありません。逆に交流することで、私たちの手の内を見せてしまうことにもなります。だから、メリットとデメリットを考えた場合、外部の人に研究所の中を見せるという優先順位は低かったんです。しかし、今は逆に研究をお見せすることで、いろいろな技術に関心を持っていただいて、「こういう技術があるんだったら、こういうことに使えませんか?」というコラボレーションのきっかけにしたいという気持ちがあるんです。

堀江 本当にそれは必要なことだと思います。僕は、いろいろな研究所を見せてもらうことも多いんですけど、見学してみると「この技術って、こういうのに使えるのに」というのが結構あって、すごくもったいないなって思ってたんですよ。

山口 私たちの研究所もコラボレーションがスゴく大事になってきているんです。今までは、たとえば「結晶成長の技術を究極まで突き詰めて、それで新しいデバイスを作る」という、ひとつの真っすぐなストーリーに乗っていたんですけど、それだけではうまくいかないことが多くなってきました。それで現在は、たとえば「量子ビットのダイヤモンド結晶の研究」を大阪大学と提携してやっていたりします。また、マイナス14乗メートルを検出するという研究は、うちの研究所で進めていたところ、オランダのデルフト工科大学から、「是非、一緒に研究をしたい」という要望があって、共同研究が始まりました。

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村瀬 今、技術が巨大化、先端化していますので、ひとつの組織で研究をやり遂げるのは非常に難しくなってきているんです。それに、研究費もどんどん上がっているので、効果的に成果を上げるには、やはりオープンイノベーションすることが非常に重要になってきていると思います。

堀江 本当にこういう分野でのスポンサードって、すごく大事になってきますよね。これまで日本を引っ張ってきた会社の業績がどんどん悪くなって、こうした研究にあまりお金を出さなくなってると思うんですが、今、研究費はどんな状況ですか?

村瀬 余裕はなくなってきているというのが、正直なところです。特にこの2、3年は非常に厳しい状態です。そのため、国のファンドなどにも応募したり、技術をライセンスして、外部資金を調達したりしています。

堀江 ライセンスされてもいいような技術がいっぱいありそうですもんね。

村瀬 特に最近は通信分野に限らず異業種との共同研究・協業に力をいれています。NTTの技術をいろいろな業種の皆さんに使ってもらおうとお話をさせてもらっています。

山口 本当に種はいっぱい転がっていると思っているんですけれども、それをビジネスまでつなげるノウハウが私どもにはなくて……。

 

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村瀬淳(NTT先端技術総合研究所所長)
早稲田大学理工学部卒業。工学博士。1981年、日本電信電話公社(現NTT)に入社。入社以来、移動通信システムの研究開発に関わる。2013年から先端技術総合研究所所長に。平成20年度文部科学大臣賞(科学技術賞)受賞。

山口浩司(NTT物性科学基礎研究所上席特別研究員)
大阪大学理学部卒業。博士(工学)1986年、日本電信電話公社(現NTT)に入社。現在、量子・ナノデバイス研究統括担当/複合ナノ構造物理研究グループリーダ。平成23年度井上学術賞、平成25年度文部科学大臣彰(科学技術賞)受賞。

Photograph=柚木大介  Text/Edit=村上隆保 Transcription=logo-01